#2056 『菊地雅章ピアノ・ソロ/花道』
『Masabumi Poo Kikuchi Piano Solo / Hanamichi』

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text by Masanori Tada 多田雅範

KKJ 9010 国内盤CD(ライセンス=国内プレス)3月発売予定
KKJ 10003 国内盤LP  (直輸入盤帯解説付き)    3月発売予定

菊地雅章 (piano-solo)

1. Ramona ラモナ
(L. Wolfe Gilbert and Mabel Wayne) (06:40) (Side1)
2. Summertime サマー ・ タイム
(George Gershwin and Ira Gershwin) (11:23) (Side1)
3. My Favorite Things I マイ ・ フェイヴァリット ・ シングス 1
(Oscar Hammerstein and Richard Rodgers) (05:08) (Side1)
4. My Favorite Things II マイ ・ フェイヴァリット ・ シングス 2
(Oscar Hammerstein and Richard Rodgers) (06:30) (Side2)
5. Improvisation インプロヴィゼーション
(Masabumi Kikuchi) (05:36) (Side2)
6. Little Abi リトル ・ アビ
(Masabumi Kikuchi) (05:52) (Side2)

Recorded December 2013 at Klavierhaus, New York
Engineer: Rick Kwan
Mastering: Alex Bonney
All photos: Tae Cimarosti
Produced by Sun Chung
A&R: Shigeko Sekiguchi(King International)

A Red Hook Production


稀有な歴史的名盤、現在進行形、だと言っておく、アフターECMを視る、蒔かれた才能たちの未来を照らす、ジャズ史に王道を察知しやすようにスタンダードでキクチは身を削った、いや最期の瞬間までジャズメンとして生きたというべきか、よもやこんな録音が遺されていてこの2021年に届けられるとは、

驚くことに、薄明の天上を進むようなバラッドなのだ、“メロディには興味がない”だの“フレーズなんて必要ない、音楽を聴きながら進んでいく、面白い音がでてきたところから”だの“すごくフレッシュな演奏だな、自分でも信じられないくらいだ”だの、この全編1ミリも途絶えることない胸を締め付けるバラッドの瞬間たち、メロディとフレーズそのものじゃないか、天国のプーさんよ、すげえよ、これ、

プーさんがニューヨークのスタジオでこれだ!とECMアイヒャーに送り付けたピアノソロ『At Home』未発表が、ノイズのモンダイでECMリリースが叶わなかったとき、Winter & Winter ステファン・ウインターこそがポール・モチアン~菊地雅章のグループをドキュメントできた史実に照らして、ECMと契約していなければとさえ思い天を仰いだものだが、

ECM『サンライズ』菊地雅章~トーマス・モーガン~ポール・モチアン、これを70年代ジャズの最前線をドキュメントし続けた杉田誠一編集長は“21世紀のジャズの扉が開かれた”と閃光のように批評した、これはECMのドラマだしな、東京文化会館でのピアノソロはライブ会場で聴いていて今ひとつ掴めなかった体験がECM『Black Orpheus』大傑作となってしまうECMプロデュースのデモーニッシュな謎といい、

そしてこの『ラスト・ソロ~花道』は、ECMアイヒャーのもとで次のECMプロデューサーと目されていたサン・チョンがECMを退社、(何があったんだ!)、サン・チョンが制作した『Lua Ya / Yeahwon Shin』は近年にない突出したECMの傑作でありECMの新生を確信させた代物だった、そのサン・チョンが、アイヒャーともウインターとも明確に異なる新しい世代らしい美しいピアノの録音でもって提出してきたところは重要な聴きどころでもある、

すごいだろ、この歴史の交差、

明らかに菊地雅章のスタジオでの研鑽によって才覚を開いたミュージシャンたち、いやそういう言い方は変えよう、菊地雅章に接触しただけで化け物のように変容した、タイション・ソーリー、トーマス・モーガン、トッド・ニューフェルド、RJミラー、ハスミレマ、(これらの才能たちをちゃんと追いかけて聴いているのかね、ジャズファンのみんな、おしゃれ着屋さんや古着屋さんの店先で日銭稼ぎしているミュージシャンばかりじゃないか)、菊地雅章はジャズ史をリレーしてきたし、後続もまた未踏へとバトンをつないでいるじゃないか、

すごいだろ、この歴史の交差、こんな作品に出会えることなんて人生に何度もないよな、

しかしよー、この究極の美の癒し感覚は何なんだ、唸ってねーし、この未来が開いていゆく感覚、我々リスナーが一番遅いんじゃねーか?、20数年前におれはプーさんとのメールでついメルドー、ジャレット、キクチと並べて世界3大ピアニストだと書いてしまったらプーさん激怒してな、ばかだったなーおれ、ピアノ弾けなくなったジャレットもこれ聴くかな、聴くだろうなあ、ピアノ弾きたくなるだろうね、奇跡を起こすかもしれないね、メルドーは、聴かないな、

花道っていうタイトルにはずっこけるよな、遺影に供える供花、というふうにジャケを見たいかなとも思うが、芸術は残るものなのだな、今日を生きるのがジャズの特権だと菊地雅章はおれを見つめて言った瞬間は続いている、サン・チョンさんよ、ありがとう、ついでにお願いなんだがTPTトリオの音源も世に出してもらいたい、キングレコードの関口さんよ、ありがとう、そういえば関口さんと初めてくちをきいたのはレコードショップに貼られていた菊地雅章のポスターを貼り終わったらくれと言った客のおれだったな、今思い出した、

多田雅範

多田雅範

Masanori Tada / 多田雅範 Niseko-Rossy Pi-Pikoe 1961年、北海道の炭鉱の町に生まれる。東京学芸大学数学科卒。元ECMファンクラブ会長。音楽誌『Out There』の編集に携わる。音楽サイトmusicircusを堀内宏公と主宰。音楽日記Niseko-Rossy Pi-Pikoe Review。

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