#2052 『HTK Trio / Our Prayer』

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Text by Akira Saito 齊藤聡

IMCF-0006

Tsuneo Takei 武井庸郎 (ds)
Takayuki Hatae 波多江崇行 (g)
Coach K. コーチK(b)

1. Intro – Our Prayer (Albert Ayler)
2. Sunrise, Sunset
3. Ambient
4. Scream
5. Afro Noise
6. Fragment
7. Lonely Woman (Ornette Coleman)
8. Into the Light – Ending

録音: 2020年6月28日、箱崎水族館喫茶室(福岡県)
ミキシング: 塚原義弘(Studio Riccio)

HTK Trioは福岡を中心に活動を行う武井庸郎、波多江崇行、コーチK(河内和彦)によるトリオである。

波多江のギターは機会や展開によって異なるスタイルを取るものの、これまで聴いてきた限りでは、その振幅の大きさに強く印象付けられてきた。本盤でも、微かな音のフラグメンツから(光でいえば)ハレーションを厭わず増幅した音までを丁寧に積み重ね、その都度、豊かなグラデーションが動的に現出されている。それは音の運動にはとどまらず、なにものかの感情を伴っている。たとえば<Our Prayer>における静かな入りかたは抑制的であるだけに、聴く者の感情を昂らせる。

アルバート・アイラーは『In Greenwich Village』(Impulse!)において、1966年、ビーヴァー・ハリス(ドラムス)とともにこの曲を吹き込んだ。武井のドラミング、とくに持続しその変化による彩りが印象的なシンバルワークは、ハリスではなく、アイラーがやはり共演していたサニー・マレイのそれを思わせる。もちろんプレイは特定のだれかのエピゴーネンなどではない。ハイハットやバスドラムが絶えずその強弱も色も変えて次々に作り出す大きな波には、驚かされつつも心地よく呑み込まれそうになってしまう。

コーチKのエレキベースは武井と波多江が放つ大きな振幅を前にして、音を上へ上へ、前へ前へと推進している。<Sunrise, Sunset>や<Scream>におけるベースなどは両足を踏みしめてサウンドを落ちないように力を与え続けているようだ。

福岡もコロナ禍の影響を大きく受け、かれらもまた活動を縮小せざるを得なかった。本盤は、それを奇貨として、閉塞感からエネルギーを生みだそうとした録音であるという。たしかにそのエネルギーは演奏中に漲っている。

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 環境・エネルギー問題と海外事業のコンサルタント。著書に『新しい排出権』、『温室効果ガス削減と排出量取引』(共著)、『阿部薫2020』(共著)、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(共著、細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』(共著)など。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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