#2101 『橋本一子/ヴュー』
『Ichiko Hashimoto / View』

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text by Keiichi Konishi 小西啓一

najanaja label NAJA-010. ¥3,000+税(7月21日発売予定)

橋本一子 Ichiko Hashimoto  piano (except 8)  vocal 2.4.6.8.10  chorus 6.8  truckmaking 8
類家心平 Sinpei Ruike  trumpet 2
菊地成孔 Naruyoshi Kikuchi  alt.sax 10
藤本敦夫 Atsuo Fujimoto  drums 2.6.10  ele.bass 2.6  chorus 6
橋本眞由己 Mayumi Hashimoto  chorus 6

1.  blue(Ichiko Hashimoto)
2.  view(Ichiko Hashimoto)
3.  all the things you are(Oscar Hammerstein   Jerome carn)
4.  blackbird(John Lennon and  Paul McCartney)
5.  giant steps(Jhon Coltrane)
6.  beijo partido(Toninho Horta)
7.  my foolish heart(Ned Washington  Victor Young)
8.  good girl(Ichiko Hashimoto)
9.  danny boy(Irish fork song)
10.  planet(Ichiko Hashimoto)
11.  before and after the introduction(Ichiko Hashimoto)

Recorded, Mixed & Mastered by Yoshiaki Kondo(近藤祥昭)2021/01/13~/03/09
Recorded & Mixed by Ichiko Hashimoto & Ma-To (藤井将登) M8 2021/01/15~02/13
Recorded  Mixed & Mastered at GOK SOUND   (except M8)
Recorded & Mixed at “najanaja” M8


“妖精”とでも呼べそうな、なんとも不可思議で独特な存在感と説得力を有する、個性派アーティスト。ピアニストにしてヴォーカリスト&コンポーザー、さらには小説や俳優などもこなすという、多彩な顔を誇る才媛、橋本一子。その彼女がこのほど、なんと12年振りとなる新作『ヴュー』を世に問うた。そのタイトル通り風通しと見通しの良い、いかにも彼女ならではの良点満載の珠玉作である。

4年ほど前の中村善郎とのボッサ共唱作『デュオ』も、シンガーとしての魅力が発揮された印象深いものだったが、この新作はさらにトータル・アーティストとしての、その魅力が全開された逸品。オープニングの自作ソロ<ブルー>で、蠱惑性と透明感に富んだその静謐な世界に、ゆったりダイレクトに惹き込まれ、さらに千変万化な様相を呈する、その音世界の心地良さに包み込まれたまま、ラストの<ビフォー&アフター・ザ・イントロダクション>まで、一気に導かれて行くといった次第。この悦楽感・多幸感・充実感、かなりなものである。

自身がプロデュースを手掛け、彼女の人となりや音楽性を熟知している、良きパートナーの藤本敦夫(b&ds)がディレクションを務める、理想の布陣によるこの久々の新作。様々な表情で魅せるオリジナル(書き下ろし)5曲と、スタンダードの<オール・ザ・シングス・ユー・アー>やビートルズ・ナンバー<ブラックバード>、トラッドの<ダニー・ボーイ> など、6曲のカバー曲で構成され、これら12曲の選曲・配曲バランスもまた秀逸、実に美しく決まっている。

繊細にして大胆、浮遊感溢れるピアノ技、囁くように呟かれる妖艶なボーカル&ボイシング、それらが共鳴・増幅し合い、耽美にして優雅、儚げでいて確固とした、深遠で幽玄な音群が現出される。曲によってはゲストの菊地成孔(sax)、類家心平(tp)、コーラスの橋本眞由己が、密やかにして鋭利に絡み合い、独特な彩りと深みをその音群に付加する。ジャズでもありニュー・エイジ(&アンビエンス)でもあるのだが、それはまさに唯一無二な“一子ミュージック”、心の襞に染み入る秀逸な“越境音楽”なのである。

全編印象深いナンバーが並ぶが、ぼくのお勧めはコルトレーンの定番銘品M5。このアグレッシブな難曲を換骨奪胎、気品に溢れ格調高くも力強い“ボーダレス・ミュージック”へと変貌・昇華させる、その巧まざる手管。率直に脱帽ものです。

 

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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