#2096 『SUMRRA / 7 VISIONS』
『シュムラ / 7 ヴィジョンズ』

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text by Hiroaki Ichinose  市之瀬 浩盟

小旅行が好きだ。

世界遺産や名所旧跡、景勝地など評価の定まった場所ももちろんいいが、断然小都市やふらっと立ち寄った場所を当てもなくがむしゃらに歩き回るのがいい。それも繁華街ではなく、一本二本裏に入った通り…。道が細くなり、店々の間に民家が混ざったり。「あの先の角を曲がってみよう。道が急に細くなり、間口の狭いこじんまりとした自家焙煎の喫茶店や100円均一の本を並べた粗末な本棚やワゴンを店の前に置いた古本屋があるかも…」曲がってみる…。あった!それまで無かった緑の木立に包まれた思った通りの景色いや、それ以上の街路が目の前に広がる!またその道の途中に角があり、更に狭くなった先にもぽつんと何やらお店があるみたい。小走りに駆け寄る。小さな定食屋!丁度昼飯を食べそびれていたので入る。いひひ、美味かった!いい古本が沢山買えた。香り高い美味しい珈琲もいただけた。今日はいい日だ。ぼつぼつ戻らなきゃ。今度はあの道を行けばいいかな?ありゃ、袋小路…あっちか、おっ⁈何やら小さい明かりが見える。ショットバーである。これは一杯引っ掛けるか!口開けの客になった。誰もいないカウンターで初めてみるラベルのウイスキーを!
いひひ、いい気持ち、おっ、あの先にも白暖簾。あるある…この街はいい街だ。
いひひ、いい気持ち、また今度絶対散策に行くのである!いつも新しいいい出会いがありそうな…

だから断然見知らぬ街を当て所なく…。

* * *

CLERMONT MUSIC / CLEO47

Xacobe Martínez Antelo (b) ザコベ・マルチネス・アンテロ
Manuel Gutierrez (p) マヌエル・グティエレ
Lar Legido (ds) ラル・レギド

1. RA
2. Periferia Universal
3. Asuan Alexandria 7 Graos
4. As Forzas Gravitatorias
5. Sapiens Sapiens
6. 13.700 Millons De Anos Despois
7. O Espazo Interior

recorded December 2-3, 2020 by Xurxo Pinheio at Estudos Mans
mixed by Xurxo Pinheio at Laboratorio Soyuz. January 2021
mastered by Juan Lameiro
art: Miguel Duarte
produced by Christopher Nolan

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全く未知の作品に出会い、手にし、初めて聴くその前にこの身に訪れる不安感と期待感、そして高揚感…。そしてそれが期待を遥かに上回った時の感動。共演者から次々と枝葉が伸び、新しい街路が広がり、さらにその先に細い交差点が見える…、そこへまた小走りに向かって行く。その角の先に広がるであろう街路を幻視しながら…。
ジャズに限らず「冒険心の無い音楽ファン」にはたとえ地図付きの詳細なガイドブックが充てがわれたとしても立ち寄らない場所なのかもしれない。そう、我々にはそんなガイド本など必要ない、自分の五感が孤高のガイド本なのである。

あてどなく彷徨った街でふと、いやこれが神の啓示なのか…そんな驚きとともに出会えた’03年のデビュー作 『sumrra』 (madamerie / mmcd 006)…。これにはとことんやられた。それまで追い続けてきた欧州ピアノジャズトリオと全く別の味わいであった。
明らかにチャーリー・ヘイデンを敬愛していることがわかるリーダーのザコベの骨太で重厚なベースを軸にマヌエルの情熱と哀愁が絶妙に交差するピアノとこれまた他の誰とも違うタイムセンスでドラムキットの他にも小道具を使い応戦するラア…。
テテ・モントリュー、パコ・デ・ルシア、はたまた数多くのミュージシャンが演奏してきたチック・コリアの永遠の名曲 <スペイン>…。スペインという国から連想する”情熱”、それともまた違う血湧き肉躍る三位一体の演奏にただただ吸い込まれていった。

その後も不動の3人で2,3,…6,7とグループ名に通し番号をふったタイトルで作品を届けてくれた。「余計なアルバムタイトルなど気にせずこの俺たちの音を聴け!」とばかりに…

本作も冒頭の一音で6度目の再訪となるあの街の佇まいながら全く新しい出会い、感動を届けてくれた。

聴く者を決して裏切らず更にその高みから期待以上の音が次々と舞い降りてくる…。そんな極上の出会いがまた一つ。

http://www.sumrra.com/

https://www.clermontmusic.com/sumrra-7-visions

以下、ベースのザコベ氏のYouTubeチャンネルより添付します。

 

 

市之瀬浩盟

長野県松本市生まれ、育ち。市之瀬ミシン商会三代目。松本市老舗ジャズ喫茶「エオンタ」OB。大人のヨーロッパ・ジャズを好む。ECMと福助にこだわるコレクションを続けている。1999年、ポール・ブレイによる松本市でのソロ・コンサートの際、ブレイを愛車BMWで会場からホテルまで送り届けた思い出がある。

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