#2125 『Marc Johnson / Overpass』
『マーク・ジョンソン/オーヴァーパス』

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄

『Marc Johnson / Overpass』
『マーク・ジョンソン/オーヴァーパス』

ECM2671 2021年8月27日リリース

Marc Johnson: double bass

1. Freedom Jazz Dance (Eddie Harries)
2. Nardis (Miles Davis)
3. Samurai Fly (Marc Johnson)
4. Love Theme from Spartacus (Alex North)
5. Life of Pai (Marc Johnson)
6. And Strike Each Tuneful String (Marc Johnson)
7. Yin and Yang (Marc Johnson)
8. Whorled Whirled World (Marc Johnson)

Produced by Marc Johnson and Eliane Elias
Recorded at Nacena Studios, São Paulo, Brazil
on January 23, 2018 and February 6, 2018

マーク・ジョンソンは1953年、ネブラスカ州オマハ出身。交響楽団での経験も経て、1978年にビル・エヴァンスに可能性を認められてトリオに参加。エディ・ゴメスの後を引き継ぎ、最後のベーシストとなった。ドラマーはジョー・ラバーバラ。1980年にビルが亡くなった直後は、ピアノトリオからは距離を置き、ピーター・アースキンとのジョー・アバークロンビー・トリオ、スタン・ゲッツ・グループに表現の場を見出す。初リーダー・アルバムは、1986年にピーター・アースキン、ビル・フリゼール、ジョン・スコフィールドと録音した『Bass Desires』(ECM1299)で、最近作は2012年の『Marc Johnson & Eliane Elias / Swept Away』(ECM2168)。サイドとしてはあまりにも多くの録音がある。特にパートナーのイリアーヌ・イリアス、エンリコ・ピエラヌンツィ、ジョン・アバークロンビー、ピーター・アースキンなどとの共演が多く、マイク・マイニエリ率いる後期ステップス・アヘッドに参加していることも記しておこう。イリアーヌ・イリアスとの結婚後は、イリアーヌとの共同制作にプライオリティを置いている。

ビル・エヴァンス・トリオのライヴでは、<Nardis>(Miles Davis)を毎晩ベースソロで演奏する時間を設けていて、ベースのリード・ヴォイスとしての可能性について実験の開始点になったという。また、1978年のベースソロアルバム『Dave Holland / Emerald Tears』(ECM1109)に影響を受けていて、50年越しの初ベースソロアルバムとなり、イリアーヌ・イリアスを共同プロデューサーにサンパウロで録音された。

<Nardis>(Miles Davis)は、20代にたくさんのソロ演奏を積み重ねただけに、思慮に富んだ何層かのサウンドの豊かなアイデアを、巧みにダイナミックに表現していて珠玉の一曲だ。演奏は長すぎることなく、凝縮されている。そして、アルバム全体に言えることだが、ベースのボディの振動感、弦をはじく感触までがリアルに伝わってくる。

<Samurai Fly>は、『Marc Johnson / Bass Desires』(ECM1299)と『John Abercrombie / Marc Johnson / Peter Erskine』(ECM1390)に収録された<Samurai Hee-Haw>のアコースティックな再構築版。アルコ(弓)による2本と、ピチカートによる1本を中心とした多重録音。オリジナルが、ビル・フリゼール&ジョン・スコフィールド、またはジョン・アバークロンビーという当時としてはトップ”変態”ギタリストたち(ようやく時代が追いついた)が作り出す怪しく明るい世界観の曲だったが、このヴァージョンでは、ユーモラスな曲想の中にも、アルコによる繊細な”うた”、アコースティックな空間と時間の広がりと幽幻を感じさせる。

その他、ビル・エヴァンス・トリオでよく演奏された<Love Theme from Spartacus>(Alex North)と、<Freedom Jazz Dance>(Eddie Harris)、<Nardis>、アルバム前半にスタンダード3曲を、後半に向けてマークのオリジナル計5曲に繋いでいき、マークの精神世界の奥まで旅を共にして行く。マーク・ジョンソン個人史としてのみならず、ビル・エヴァンス・トリオ終了から2020年代にかけて築かれた、現代ジャズベースの到達点の一つとしてもぜひ聴いていただきたい。

Nardis

Sweet Georgie Fame / The Home Sessions
Eliane Elias (piano)、Marc Johnson (bass) 2021年5月の Eliane Elias Music Facebookより

Bass Desires / Samurai Hee-Haw
Marc Johnson (bass), Peter Erskine (drums)
Bill Frisell, John Scofield (guitar)

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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