#2160 『魚返明未 & 井上 銘/サイクリングロード』
『Ami Ogaeri & May Inoue / Cycling Road』

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄

『魚返明未 & 井上 銘/サイクリングロード』
『Ami Ogaeri & May Inoue / Cycling Road』

魚返明未 Ami Ogaeri: piano
井上 銘 May Inoue: guitar

きこえない波 (魚返明未)
サイクリングロード (魚返明未)
もず (魚返明未)
かなしい青空 (魚返明未)
丘の彼方 (魚返明未)
隔たり (井上 銘)
Herbie Westerman (魚返明未)
縮む (魚返明未)
静かな影 (魚返明未)

Recording & Mixing : 森田秀一@rebornwood.inc
Mastering : Gene Paul @G&J Audio
Reborn Wood RBW-0023 2022年2月16日リリース

1991年生まれ同い歳のピアニスト魚返明未(おがえりあみ)とギタリスト井上 銘の初デュオアルバム。魚返は東京芸術大学作曲科卒業でジャスピアニストとして自身のソロや高橋 陸(b)、中村海斗(ds)とのトリオの他、数々のグループで重用されながら、CM音楽、映画音楽にも作曲提供を行ってきた。提供した映画には「truth〜姦しき弔いの果て〜」、「ザ・ファブル」、「サマーフィルムにのって」などがある。井上は高校時代からプロとして活動を開始、バークリー音楽大学に留学。自身のプロジェクトとしては、「Stereo Champ」、「Acoustic Quartet」に加え「CRCK/LCKS」にも参加。カルテットによるアルバム『Our Platform』には魚返も参加している。井上は最近ではトップランナーの一人として日本ジャズシーンを牽引し、幅広いミュージシャンのプロジェクトに参加している。20歳のウクレレ奏者RIOのアルバム『RIO』を井上がプロデュースしているのも注目で、4月2日には井上も参加してコットン・クラブでRioのリーダーライヴが行われる。

二人の出会いは高校時代のセッションに遡るが、距離が近づくのは井上のグループのキーボード泉川貴広が渡米のため脱退し魚返が加わってから。また、デュオを始めたのは、2020年まで高田馬場にあった ”世界一狭いジャズクラブ”しかも美味しい食事が次々出てくる「ホットハウス」のママ”アキさん”に勧められだったという。個人的には「ホットハウス」へ井上のライヴに通っていて、アキさんが亡くなる直前には「魚返君、素晴らしいから聴きに来てよ」と電話をもらった。結局、井上&魚返デュオを「ホットハウス」で観る機会は永遠に失われたが、筆者のこのデュオへのイメージは「ホットハウス」のアットホームなとても近い距離感とともに心にある。井上には<A Memory of the Sepia>というアキさんに捧げた曲があり、ブルーノート東京でのライヴでも魚返を含むカルテットで感動的に演奏されていたことを記しておきたい。

このアルバムは魚返が井上とのデュオのために書き下ろした5曲と、2020年初春から未だに続くコロナ渦で書かれた3曲<かなしい青空>、<隔たり>、<静かな影>、また 録音直前に井上が書いた<隔たり>の全9曲で構成されている。タイトルが主に日本語であることも聴く者の心に届く気がする。シンプルなギターの音と、美しいピアノの鳴り、二人の確かな音楽性からストレートに創られていて、美しさと透明感がある響きに包まれ、青空をイメージするような乾いた空気を感じながらも、微かに”夏の草の匂い”や”汗の匂い”、”人くささ”ような感覚が、聴く者を懐かしく爽やかな時空へと誘う。初期のパット・メセニー・グループに通じる感覚かも知れない(音が似ているという意味ではない)。魚返は映画音楽でも活躍しているだけに、さまざまな情景や空気感を書き分けていて、お互いに控えめに寄り添いときに大胆に疾走する感覚も心地よい。アルバムジャケットも秀逸だ。

2022年4月15日には天王洲の「Kiwa」でアルバムリリースライヴを行う。筆者は新宿三丁目「Polkadots」でのデュオライヴに満席で入れなかったので、悲願の初ライヴとなる。また今後もデュオでのライヴを続けていくと思うので、素晴らしいデュオをライヴで聴くことをぜひお勧めしたい。

『魚返明未 & 井上 銘 / サイクリングロード』 アルバムリリースライブ
Ami Ogaeri × May Inoue Live at KIWA TENNOZ

2022年4月15日(金) 19:00 KIWA TENNOZ(東京都品川区東品川2-1-3)
チケット料金:¥6,000(税込)※予約・当日共)
チケット予約 & お問合せ
KIWA TENNOZ 03-6433-1485(平日13時~21時)

魚返明未+井上 銘 「サイクリングロード Cycling Road」
-Days of Delight Atelier Concert- vol.7

魚返明未+井上 銘 「もず / Shrike」
―Days of Delight Atelier Concert― vol.11

井上 銘カルテット 2020年3月15日 HERMIT DOLPHIN
“The Lost Queen” from “OUR PLATFORM”

魚返明未トリオ – はしごを抱きしめる
魚返明未(p) 楠井五月(b) 石若 駿(ds)

魚返明未 Solo Piano Live 上尾プラス・イレヴン

井上 銘 A Memory of the Sepia

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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