#2182 『のなか悟空/騒乱武士 LIVE @ CON TON TON VIVO with 蜂谷真紀』

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text by 金野 Onnyk 吉晃 Yoshiaki Onnyk Kinno

地底レコード B100F 2500円+税

『革命=騒乱=アナルコサンジカリズム』または『草莽の妄想』

クラッシー倉島孝之:指揮、Percussion
蜂谷真紀:vo、p
西村直樹:b
西田紀子:fl
天神直樹:tp、法螺貝
鈴木放屁:ts
小林ヤスタカ:as
松本ちはや:percussion
香村かをり:Korean percussion
のなか悟空:ds

01. おなら臭い
02. パリダカール
03. ソイヤソイヤ
04. なぜなぜ
05. What 発奮!
06. ケーナの如く
07. 天使の翼
08. 立たん

録音:Con Ton Ton Vivo 東京・四谷三丁目、2022年1月7日
エンジニア:真野倫太郎
MIX&マスタリング:近藤祥昭@吉祥寺 GOKサウンド
ライナーノート:高野秀行
デザイン:西野直樹
プロデューサー:のなか悟空


一曲目を、もし何も情報無く聴かせられたら、70年代後半のロフト系ジャズかと思っただろう(か?)。熱い、とにかく熱い。濃くて、ファンキー、つまり臭い!
のなか悟空には、行基や重源のように諸国勧進して、大伽藍を建立するような人徳がある。また時宗の一遍上人のように、諸国で雑民を呼び寄せ、踊らせる。その踊りは尽きせぬ波のように押し寄せる。
その踊りの渦の中から、各奏者の声は聞き分けられる。日本という弧状列島にはあらゆる文化が流れ着く。サルサも、ノンアクも、クラシックも、ムード歌謡が入っても違和感は無い(わきゃないが)。ここにはCON TONたるスープ「フリージャズ」がある。フリーであり、ジャズであること。それが騒乱武士の矜持だ。
ライナー執筆は、ノンフィクション作家高野秀行氏。この文章も傑作。地球の裏側で、犬と子供(だけ)を相手に野中のドラムが共鳴する有様を伝える。氏曰く「悟空はひとり梁山泊である」と。なるほどそれは納得できる。ではこのアルバムを『令和水滸伝』とでも呼ぼうか。それともコウキントウ、ゴトベイドウ、ギワダン? いやいやジャズなら天狗党というのもあったな。もしかしてセキホウタイもあったかな。知らず。
左右など関係ない草莽の志士達。民衆に歓呼の声で迎えられ、世を席巻しても報われる事無く、果ては新体制に粛清される。人間国宝?望むべくも無し。平将門、西郷隆盛の例を見よ。しからばジャズトーキョーがソナタにジャズ頭領、天下大将軍の位を授けよう(それでいいですか?)。
確かに音は悪い、が意外に耳に馴染むのだ。その理由の一つはパーカッションが5人も居るのにシンバル、ケンガリ等の金属を主とした打撃音が多く無いからだろうか。ところが最後の大曲「立たん」の中で、遂に悟空の強烈無比なるソロが爆発すると、雷鳴のシンバルが轟く。嗚呼やはりここまで抑えに抑えていたのではないか。なにしろその前の「天使の翼」では、ちょっとかったるいほどの前戯が10分も続くのだから、ここは「立たん」とは言っておられないだろう。このラストトラック21分を聴く為にこのアルバムがあるのではないか?
「天使」では蜂谷真紀のピアノが前面に出るけれど、実は他の曲の中でのピアノの入るタイミングと和音は心憎いものがある(ライナーにはピアノがクレジットされていない)。コンボも歌手が入ると実に幅が広がる!また、西田紀子のフルートがいつも力強く歌っている。この騒乱の中でこれほど響くフルートよ!
何よりも肝腎なのは、サウンドにグルーヴ満ちあふれ、人の匂いがする。ああ、臭い!が、こうばしい!クサヤもホンフェオもシュールストレミングも癖になる!騒乱武士は見事に発酵し、薫っている。
中身の無いレビューでも申し訳ないが、こう見えても(見えないか)私は若き日の、のなか悟空と共演もしているのだ。そんときゃ庄田次郎も吉田哲治も大木公一も其処にいたのだよ。1979年暮れの荻窪<グッドマン>のセッション(=野合、申し合い)だった。後に私は、悟空がダニーデイヴィス、高木元輝という鬼籍に入った記憶されるべきサックス奏者たちと共演したツアーも観戦しているんです。
はてさて、悟空はまだまだ飛び続ける!お釈迦様の指の間をすり抜けて。

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金野 "onnyk" 吉晃

Yoshiaki "onnyk" Kinno 1957年、盛岡生まれ、現在も同地に居住。即興演奏家、自主レーベルAllelopathy 主宰。盛岡でのライブ録音をCD化して発表。 1976年頃から、演奏を開始。第五列の名称で国内外に散在するアマチュア演奏家たちと郵便を通じてネットワークを形成する。 1982年、エヴァン・パーカーとの共演を皮切りに国内外の多数の演奏家と、盛岡でライブ企画を続ける。Allelopathyの他、Bishop records(東京)、Public Eyesore (USA) 等、英国、欧州の自主レーベルからもアルバム(vinyl, CD, CDR, cassetteで)をリリース。 共演者に、エヴァン・パーカー、バリー・ガイ、竹田賢一、ジョン・ゾーン、フレッド・フリス、豊住芳三郎他。

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