#2198 『Antonio Adolfo アントニオ・アドルフォ / Octet & Originals』
『新田佳子/ぺタラ・ジ・ホーザ(薔薇の花びら)』』

閲覧回数 2,980 回

text by Keiichi Konishi 小西啓一

“JazzTokyo”の編集部から2枚のブラジル関連の新作アルバムが届いた。1枚はブラジル音楽のレジェンドにして “歩くブラジル音楽”とでも言えそうな、ブラジル音楽の全てに通暁しているピアニスト&作・編曲家のアントニオ・アドルフォの『オクテット&オリジナルズ』。そしてもう1枚は、神戸をメインに関西圏を活動拠点にしているシンガー、新田佳子のアントニオ・カルロス・ジョビンのボサノバ集『ぺタラ・ジ・ホーザ(薔薇の花びら)』。

『Antonio Adolfo / Octet & Originals』
Aam Music

Antonio Adolfo: piano; Jesse Sadoc: trumpet; Danilo Sinna: saxophone, alto; Marcelo Martins: woodwinds; Rafael Rocha: trombone; Jorge Helder: bass, acoustic; Rafael Barata: drums; Ricardo Silveira: guitar.

1. Heart of Brazil
2. Boogie Baiao
3. Emaú
4. Cascavel
5. Pretty World
6. Teletema
7. Feito Em Casa
8. Minor Chord
9. Zabumbaia
10. Toada Moderna
all composed by Antonio Adolfo

試聴サイト;
https://antonioadolfo.hearnow.com/

アドルフォの方は本誌でもしばしば取り上げている人だけに、読者の方達にはお馴染の存在と思われるが、日本盤が余り出ていない関係などもあり、その功績や力量の割には一般のファンの知名度が低いのは、誠に残念なところ。前述したようにブラジリアン・ジャズからボサノバ、サンバ、ショーロ等々、ミナスなど地方の独特な音楽も含め、ブラジル音楽全般に通じている彼は、数多くのMPB(ブラジル音楽)の秀作アルバムを発表、他方エリス・レジーナなど多くのシンガーのバックを務めたりもしているが(娘のカルロ・サボーヤは現在のボッサ・シンガーの第一人者)、最近の彼はもっぱらジョビンやミルトン・ナシメント、エルネスト・ナザレス、さらにはウエイン・ショーターなどの作品集を、彼なりの洒脱な方法で処理するアルバム制作に注力している感があった。それらは各方面でかなり高い評価を受けたものだったが、今度は自作にスポットを当てそれらを再構築した作品を…と考え出来上がったのがこの新作。それだけにタイトルもそのものずばり(自身の)“8重奏団とオリジナル集”である。オクテットの方は、俊才カルセロ・マルティンス(ts&fl) を始めとする、最近彼と行動を共にしているブラジリアン・ジャズの代表的手練れ達による4管編成に、ギターも加えたリズム隊をプラスしたもので、ギターにはわが国でもお馴染みの名手リカルド・シルベイラも参加、ブラジリアン・ジャズの今が分かるかなり豪華な布陣。彼は以前映画やTVドラマの自作テーマ曲をセルフ・カバーした、アルバム『テーマ』を発表し好評を博したが、これは自作カバーの2枚目のようである。いかにも彼ならではの洒脱でエレガントなアレンジとピアノ・プレイ(これが気持ち良い)が光り、ブラジリアン・ジャズ+ポール・スミス(西海岸の洒脱派ピアニスト&アレンジャー)等といった表現も出来そうな、小洒落た趣きの好アルバム。全10曲がアドルフォの真骨頂とも言える、ボッサやマラカトゥ等々のブラジリアン・ミュージックのオン・パレードなのだが、それら全体に通底するアドルフォの都会的なゆったりとした楽園音楽センス、そこに何よりも魅せられてしまう。


『新田佳子/Petalas de Rosa ペタラ・ジ・ホーザ(薔薇の花びら)』
Steps-re  SAKU801 ¥2500(税込)

Vocal : 新田佳子 Guitar : 畑ひろし Piano : 長井美恵子 Flute : 森本優子 Trombone : 五島健史 Bass : 西川サトシ Drums & Perc. : 光田じん

01. イントロダクション
02. ウェーブ
03. 三月の雨
04. 想いあふれて
05. ファヴェーラ
06. ルイーザ
07. ワン・ノート・サンバ
08. 薔薇に降る雨
09. デサフィナード
10. 白い道
11. ジェット機のサンバ
all composed by Antonio Carlos Jobim


一方の新田によるジョビンのボッサ集は、4半世紀ほど前にジョビン・ナンバーの躍動感、温かさ、柔美さ等に惹かれ、それ以来ずっと持ち続けているジョビンへの憧憬と愛着を、優し気にかつ愉し気に表した仲々の佳品。バックも名手の畑ひろし (g) を始めとした関西の心良き仲間達で、取り上げるナンバーも 〈デサフィナード〉〈波〉〈ワン・ノート・サンバ〉などのお馴染みのものが中心で、安心して聴ける。彼女の無理の無い歌い口が、ボッサならではの軽やかでインティメイトな雰囲気を盛り上げて何とも心地良い。ただ〈ルイーザ〉や〈白い道〉の様な、しっとりとしたジョビン・バラードの方に、彼女のより深いジョビン愛がうかがえるようにも思えた。

小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

コメントを残す

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。