#2205 『 近藤等則・梅津和時・土取利行 / ライヴコンサート1974』
Text by Kayo Fushiya 伏谷佳代
立光学舎(RG-20)
2022年9月11日発売
発売元:メタカンパニー
パーソネル:
近藤等則(tp)
梅津和時(a.sax)
土取利行(ds)
収録:
1. Improvisation 1 (テーマ作曲:土取利行「テイラーさんの左手」)12:49
2. Improvisation 2 (テーマ作曲:土取利行「零雨の水紋」)28:04
3. Improvisation 3 (テーマ作曲:近藤等則「ギック・シャック」)24:18
録音:青山VAN99ホール、1974年
マスタリング:須藤力(モルグ舎)
プロデュース:立光学舎
近藤等則が急逝してから早3年がたつ。名実ともに日本を代表するジャズ・ミュージシャンとなった3人による若き日の記録。本作の前年、1973年のピットイン・ティールームでの近藤・土取のライヴ盤のレヴューでも述べたことだが、人の個性など初期にほぼ確立されているものだと再認識。私小説ふうのドメスティックな潮流とは、この頃からすでに相容れない。梅津はこの直後にニューヨークへ、土取は翌年、近藤も3年後に同地へと旅立つ。全員が20代前半という肉体的なエネルギーの総量はもちろんだが、各々の音楽に対する「ブレのなさ」は、即興とはいえ胸のすくようなパノラマと壮麗な構築性を「結果として」もたらしている。超速度の音色とメタリックな冷却感の持続は、すでにまぎれもない近藤等則の音であるし、高い音楽性で様々なイディオムを採り込みながら炸裂する梅津和時のフリーキー・トーン、切れ味と柔軟性を兼ね備え、濃淡の振れ幅の大きさで空間に壮大な点描画を描く土取利行のドラムスーそのどれもが過度の精神性を身体に被せない。武術的ともいえるフェイント・アクション、夥しい音数の3つのインプロヴィゼーションの先にほの見えるのは、身体は表現の触媒にすぎぬという割りきりと潔さだ。故にいや増す崇高さ、である。土取のドラミングはとりわけ弱音が美しく、時に音域がシンクロし合うトランペットとサックスに同時進行の異なる時間軸を添える。残響を効果的に沁み込ませた余白を盛り込み、アグレッシヴかつ内省的に展開する音のクラッシューそれらがいつしか哀愁を帯びたオープン・エンディングへと向かうさまは、編成こそ異なれど、近藤が後に参加するペーター・ブロッツマンの ”Die like a Dog” を髣髴とさせたりもする。3曲いずれも演奏後に漂う骨太なペーソスが野武士の貫禄。(*文中敬称略)
☟近藤等則没後3年のライヴが来る10月17日、新宿ピットインで行われる。土取利行と梅津和時に、坂田明が加わった編成。
https://jazztokyo.org/news/post-79481/
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