#2212 『中牟礼貞則&三好功郎 Guitar Duo / 三好“3吉”功郎 meets 中牟礼貞則
〜Live at World Jazz Museum 21』

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Text by Yasushi Kuboki 久保木靖

Nadja 21/King International  KKJ-9022 ¥3,300(税込)

中牟礼貞則 (guitar=R ch.)
三好“3吉”功郎 (guitar, whistle:M4=L ch.)

1. Come Rain Or Come Shine (Harold Arlen/Johnny Mercer)
2. Running Out Of Gas (Jim Hall)
3. Close Enough For Love (Johnny Mandel/Paul Williams)
4. l Remember You (Victor Schertzinger /Johnny Mercer)
5. One Note Samba (Antonio Carlos Jobim)
6. Time Remembered (Bill Evans)
7. Someone To Light Up My Life (Antonio Carlos Jobim)
8. Beautiful Love (Wayne King, Victor Young and Egbert Van Alstyne/Haven Gillespie)
9. Isotope (Joe Henderson)

Recorded live by Masayuki Tajiri 田尻昌幸 (Griffin) on Alesis ADAT-HD24 at World Jazz Museum 21, Yoshioka, Gumma, June 26, 2022
Concert co-produced by Mitsuhiro Sugawara 菅原光博 & Kenny Inaoka 稲岡邦彌 for World Jazz Museum 21
Mixed by Yuichi Takahashi 高橋友一 at King Sekiguchidai Studio, Tokyo, October 03,2022
Mastered by Hiroyuki Tsuji 辻 裕行 at King Sekiguchidai Studio, Tokyo, October 17, 2022
Photo: Norio Hiraguchi 平口紀生 (papa Hiraguti pictures)
Design: Fukumi Endo 遠藤ふく美 (approach)
A&R: Satoshi Hirano 平野 聡 (King International Inc.)
Musical supervisor: Isao “sankichi” Miyoshi 三好 “3吉” 功郎
Album produced by Kenny Inaoka 稲岡邦彌 for Nadja 21


一筆一筆おぼろげながらも形を成していく抽象画、その様子を1分近く見つめたのちに良き理解者が参入。完成像はおそらく当人たちにも分かっていないが、間違いなく2人は同じ方向を向いている……そんな芸術品の共同制作を目の前で観ているような「Come Rain Or Come Shine」で始まるこのアルバム。御年89となる日本ジャズ界のレジェンドである中牟礼貞則と、“サンキチ”の愛称で親しまれ矢沢永吉や稲垣吾郎バンドでも活躍する三好功郎の、初めての師弟デュオが実現した。

本作は、群馬県吉岡町にあるWorld Jazz Museum 21にて、2022年6月26日に実現したギター・デュオ・ライヴだ。演奏されたのは互いが持ち寄った、やや変化球気味のスタンダード曲。中牟礼のライヴでは毎度のことだが、事前の打ち合わせは一切なく、ステージ上で初めて手の内を見せ合うという、緊迫した演奏が連なる。が、それこそが彼らが意図したものであり、ジャズ本来の醍醐味とも言えよう。

ジム・ホール作「Running Out Of Gas」とジョー・ヘンダーソン作「Isotope」という2曲のブルースには、それぞれのプレイ・スタイルと初共演とは思えない抜群のコンビネーションが表れている。雄弁にフレーズを繰り出す三好に対し、選び抜かれた音をここぞというタイミングで置きにいく中牟礼。また、シンプルな4つ刻みだけでなく、リズミックに間を活かしたり、ベース・ラインをランニングしたり、1拍ずつコードがチェンジしていく“ハーモナイズド・ベース・ライン”を仕掛けたりと、ソリストを刺激してやまない多彩なバッキングには、共演者でなくリスナーとしても口があんぐりである。

トゥーツ・シールマンスをフェイヴァリット・ギタリストに挙げている三好の口笛スキャットとギターのユニゾンが冴え渡る「I Remember You」終盤でちらりと見られる、三好が弾く旋律に単音で絡んでいくスタイルは中牟礼の真骨頂で、このプレイの意味するところは拙書『中牟礼貞則〜孤高のジャズ・インプロヴァイザーの長き旅路』(リットーミュージック)で本人が語っているので、ぜひ参照していただきたい。その意図を理解した「Someone To Light Up Your Life」終盤での三好のプレイを聴くにつけ、思わず涙腺が……。そのほか、三好の超絶技巧が炸裂する「One Note Samba」と中牟礼の泰然自若な「Time Remembered」という、まさに対照的な独奏も釣り込まれること必至だ。同じギブソンES-175というギターを手にする2人だが、音色がまるで異なっているというのも面白い。

なんでも、三好が23歳の時、出身地の大分から上京する際に胸に抱いていたのが、地元の業界通に書いてもらった中牟礼宛の紹介状だったという。中牟礼も鹿児島出身だから、同じ九州出身だ。共演を果たした三好の喜びは察するに余りある。そんな2人の関係性にも思いを馳せて耳を傾けると、本作の旨味はより増すに違いない。


久保木靖 Yasushi Kuboki
音楽ライター・編集者。専門はジャズ、ブルース/R&B、カントリー。著書・共著に『レジェンド・オブ・チャーリー・クリスチャン』『中牟礼貞則 孤高のジャズ・インプロヴァイザーの長き旅路』『ジャズのすゝめ』(リットーミュージック)、『不世出の天才ジプシー・スウィング・ギタリスト ジャンゴ・ラインハルト』『ディスク・ガイド JAZZ Guitar』(シンコーミュージック)がある。趣味は海外釣行、読書はミステリー一本槍、コーヒーはエスプレッソ党、そしてネコ派。

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