#2224 『tea / songbird』
『tea /ソングバード』

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text by Keiichi Konishi 小西啓一

Jump World KATS-1021  ¥2,727+税

1. Songbirds
2.Helium Balloon
3.Wonderwall
4.They Can’t Take That Away From Me
5.Old Age Blues
6.Everything
7.Over the Rainbow
8.接吻
9.Wuthering Heights
10.Till There Was You
11.Tokyo Animal
12.Everything Is Okay

佐藤浩一(p) 林正樹(p) 若井優也 (p) 小沼ようすけ (g) 伊藤ハルトシ (g)  須川崇志(b) 小牧良平 (b) 小田桐和寛 (ds) 大津惇(ds) 岡部洋一(perc.) David Negrete (as) 和田充弘(tb) 市原ひかり (flh/scat)  庵原良司(ts) Simon Cosgrove(vo)

Recorded & mixed by Neeraj Khajanchi at NK Sound, Tokyo, June 5, 12 & 30, July 2
Mastered by NK at AQQA Mastering, July 29, 2022
Arranged & co-produced by 時枝 弘
Produced & directed by 三田晴夫


このteaの新作だが、彼女自身のオリジナルでタイトル・チューンでもある冒頭の〈ソングバーズ〉、ここでの伸びやかな響きを有した清澄な歌声。歌姫(ソングバード)の名に相応しい、存在感溢れる堂々とした成熟の唄いっぷり。これを耳にした瞬間いたく感心し、“そうかこんなに説得力に富んだシンガーだったんだ…” と、改めて感じ入った次第。

インド出身でバークリー音楽大学に学び、2016年以降は日本を拠点に活躍している彼女。これまでに2枚のアルバムを発表、NHKの大河ドラマの挿入歌にも関わる等々、短期間に歌い手としての地歩を固め、着実にその実力を進展させ続けて来た。そのひとつの集大成としてこのアルバムがある。

ここではシンガーとしてだけでなく、タイトル・チューンなど5曲のオリジナルも提供しており、コンテンポラリーからブルースに至るまで、様々な情景や情感を描き出し、ソング・ライティングの才も披露。ボーカリストとしてその本領発揮した一編であると同時に、トータルな音楽家としての能力をも強く印象付けてくれる。またこのアルバムは、徹底してアコースティック・ジャズに拘って、同録による一発録りの作品であり、佐藤浩一や林正樹といった熟達ピアニストをメインに、小沼ようすけ(g)・須川崇志(b)等々、歌伴にも定評ある豪華な腕達者達も集い、彼女のボーカルを巧みに盛り上げている。さらにバークリー時代からの長い付き合いで、彼女の良点を熟知している俊才~時枝弘がその曲作りを手助けし、また彼はオアシスやビートルズ、オリジナル・ラブ等のロックやポップス・ナンバー、ガーシュウィン等のスタンダード・ソング。これらに独自の視点を加えた斬新な味付け(アレンジ)を施し、アルバム全体に軽やかな活力を注入している。

全12曲どれもが実力派ならではの仕上がり具合で、このところいささか停滞気味のJボーカル・シーンにあって、久々に手応えある一編と言えるが、中でもぼくが惹かれたのは3曲。聴く者をぐいっとその世界へ引き込む、したたかにしてしなやかな蠱惑性を帯びたタイトル曲。その解釈力と洞察力が光る、人気ロック・バンド、オアシスのヒット曲〈ワンダー・ウォール〉。ハートウオーミングな ”深イイ“ 世界を描き出すその表現力で魅せる銘品〈虹の彼方に〉(ボーカリストでもある市原ひかりのトランペット・ソロも心地良い)。

teaというスケール感溢れた “ソングバード” 、これからの活躍振りにはますます目が離せなくなる。


小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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