#2227 『ハーモン・メハリ/アスマラ』
『Hermon Mehari / ASMARA』

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Text by Keiichi Konishi  小西 啓一

KOMOS KOSOI 18 CD

Recorded and mixing by Felix Remay in March 2022 at Studio Pigalle, Paris
Mastering by Frank Merrit at The Carvery, London
Release date : 18 November 2022(CDはEU圏内のみで発売)

Music composed and arranged by Hermon Mehari except Milobe Lawa Furda,
Music composed by Hermon Mehari and Faythinga
Lyrics on Tenafaqit and Milobe-Lawa Fulda by Faytinga
All songs published by Silene Editions

Hermon Mehari (tp)
Peter Schlamb (p, vb)
Luca Fattorini (b)
Gauiter Garrigue (ds)
Faytinga(vocals on 3 and 7)

1. Who Dared It
2. Call Me Habesha
3. Tenafaqit
4. I Remember Eritrea
5. Soul Chant
6. Anthem For Independence
7. Melsi
8. Milobe- Lawa Furda

Produced by Hermon Mehari
Bandcamp 購入サイト :
https://komosrecords.bandcamp.com/album/asmara


ハーモン・メハリというトランぺッター、一般のジャズ・ファンにはその存在はあまり知られていないと思うが、こと本誌 ”JAZZ TOKYO” の読者にはかなりお馴染みの名前のはず。というのもこのカンザス・シティ出身の気鋭トランペッターは、アルバムのほぼ全てがこれまでにこのJAZZ TOKYOで紹介され、インタビューなども掲載されて来たからに他ならない。(熱心なサポーターでもある『ジャズ・ア・ラ・モード』でお馴染みの竹村洋子女史の貢献度も高い)。主要ジャズ・シティの一つであるカンザス・シティ出身ながら、若くしてその地を飛び出し、フランスのパリに活動の拠点を定めもう6年余り。ヨーロッパ各地を始め自身のルーツでもある北アフリカのエリトリア、さらには最近お気に入りのメキシコ等々、様々な地域に活動の範囲を広げているメハリ。アルバムも順調なペースで発表、欧州の地にしっかりと根を下ろし活動しており、その行動領域だけでなく守備範囲の広さも、彼の音楽を特徴付けているが、その最新アルバムがまた届いた。

ワン・ホーン・カルテットで奏される新作『アスマラ』は、今年(2022年)の3月にパリのスタジオで録音されたもので、自身のルーツである “エリトリア”(北アフリカの紅海に面した国)の地を強く意識した作品。アフリカ各地やカリブ地域などからダイレクトにミュージシャンやシンガーが渡仏し、ある種のメルティング・スポットとしても十二分に活性化されているらしいパリのシーン(サウス・ロンドンと共にいま最も注目の場)。そこに拠点を定め、世界各地を演奏旅行で飛び廻っていることなどもあって、自ずと自身のルーツやアイデンティティを強く意識した(意識せざるを得なかった)結果の作品とも言えそうだ。彼には咋2021年、このエストリアをテーマにした『ア・チェンジ・フォー・ザ・ドリームライク』という、総勢11名ものミュージシャン達が集う7曲入りの作品があり、これはジャケットなども含めかなりメハリ流の楽園音楽といった趣きも強いものだった。だがこの新作では、同地出身の女性シンガー  、 フェイティンを2曲でフィーチャー、上記作品以上にエリトリア色を強めた感もあり、全体のサウンドもより緊迫感に溢れたもの(悠々としたスケール感は変わらずだが…)に仕上がっている。ここでフィーチャーされるフェイティンは、エリトリアの独立戦争(1993年独立)にも女性戦士として参加したという経歴の女性シンガー。その良く通る伸びやかな歌声でこの地を印象的に歌い上げるが、そこにはこの国の抱える様々な課題(長年の独裁国家らしい)なども、透かし見えるようでもある。さらにこの2曲と並んで印象深いのが、カンサス・シティ時代からの友人、ピアノ(&ヴァイブ)のピーター・シュランブとのデュオで綴られる<アイ・リメンバー・エリトリア>、それに続くカルテットの面々がダイナミックに状況を抉り出すかのように迫る<ソウル・チャント><アンセム・フォー・ザ・インディペンデンス>の3曲。そのタイトルからも類推できるように、エリトリアという国と真摯に向き合った彼とその仲間達のプレイは、かなりな高揚感と独特な寛ぎを有したもので、中でも鋭く轟き渡るメハリの懐の深い説得力あるプレイは、全編印象深いもの。
エストリアというメハリの父祖の国の風土や社会・文化状況等をもう少し知れば、ここでの音楽もさらに違う輝きを帯びるのかも知れない。だがそうで無いとしても、各地を自在に往来しボーダーレスな活動を繰り広げ、セロニアス・モンク賞などのジャズ・プライズも獲得した経験を持つこの気鋭の剛腕振りは、それだけでも充分傾聴に値する。全8曲どれも仲々に隙の無い力感溢れた作品と聴いた。


小西啓一

小西啓一 Keiichi Konishi ジャズ・ライター/ラジオ・プロデューサー。本職はラジオのプロデューサーで、ジャズ番組からドラマ、ドキュメンタリー、スポーツ、経済など幅広く担当、傍らスイング・ジャーナル、ジャズ・ジャパン、ジャズ・ライフ誌などのレビューを長年担当するジャズ・ライターでもある。好きなのはラテン・ジャズ、好きなミュージシャンはアマディート・バルデス、ヘンリー・スレッギル、川嶋哲郎、ベッカ・スティーブンス等々。

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