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CD/DVD DisksNo. 298

#2235『Impro × Groove』

Text by Akira Saito 齊藤聡

ROW project records

Reiko Nonoyama 野々山玲子 (drums)
Homei Yanagawa 柳川芳命 (alto sax)
Misaki Ishiwata 石渡岬 (trumpet)
Yasuhiro Usui 臼井康浩 (guitar)
Kazuhiko Matsuda マツダカズヒコ (guitar)
Katsuaki Komiya 小宮勝昭 (drums)

1. duo 臼井康浩 小宮勝昭
2. trio 柳川芳命 石渡岬 マツダカズヒコ
3. trio 石渡岬 小宮勝昭 野々山玲子
4. quartet 柳川芳命 臼井康浩 マツダカズヒコ 野々山玲子
5. double trio / L channel 柳川芳命 臼井康浩 小宮勝昭 / R channel 石渡岬 マツダカズヒコ 野々山玲子

recorded at valentinedrive, Imaike, Nagoya, Japan on July 2, 2022
recorded by Usui Yashuhiro
mixed and mastered by Usui Yasuhiro
design by Reiko Nonoyama
produced by Reiko Nonoyama

「Impro × Groove」は、「インプロヴィゼーションから生まれるグルーヴとカタルシスをライヴで追求するというコンセプト」によって2017年に始まったゆるやかな集合体である。録音は、ライヴをずっと行ってきた名古屋・今池のvalentinedriveでなされた。もとよりグルーヴとは積み重ねにより強力になってゆくもの、グルーヴによって得られるカタルシスもまたそうにちがいない。本盤を聴いて強く受ける印象はまさにそのようなものであり、馴れ合いに堕することのないぴりぴりとした空気が張りつめている。たしかにこのサウンドはライヴそのものだ。

同じ楽器での個性のちがいも聴きどころだ。ギターでいえばマツダカズヒコの音は鮮やかでときにぎらぎらとして目が眩む光線であり、臼井康浩は楽器というものが内部に孕むヒエラルキーを意図的に無化し、全方位的なものとしている。またドラムスでいえば小宮勝昭はシンバルの音が不規則に発散し立体的なマーブル模様を描き出しており、このプロジェクトを取りまとめる野々山玲子は動的に構造体を積み上げる縦への動きをみせる。

管楽器はふたり。これまで、石渡岬のトランペットが描き出す時空間には素敵な空隙があるという印象を持ってきたのだが、ここでは、その間合いが光のハレーションを幻視させる音を生み出している。そしてアルトサックスの柳川芳命はさすがの経験値、苛烈なブロウも集合体に溶け込ませ、あるいは集合体の進むヴェクトルをいつの間にか定めている。

ところで、共通するメンバーによる現在進行形の集合体として「ROW project」がある。コロナ禍が世界を襲いはじめたころの2020年、共演者と直接顔を合わさずに自宅のPCを使ってリレー式に多重録音する試みである。同時であれオーバーダブであれ、世界各地で同時多発的に手探りされたかたちであり、表現者は衝動の出口を求めるのだという当然のことがみえる結果となった。サウンドは、やはりというべきか、各々のプレイヤーの役割が浮き彫りとなるもので、「Impro × Groove」とのちがいは登場人物ひとりひとりに向かい合う映画のカメラワークのアナロジーでも想像できるだろう。「ROW project」はコロナ禍の沈静化とともにライヴも行うようになったが、活動の起点は集合体のアイデンティティとなるものだ。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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