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CD/DVD DisksNo. 309

#2296 『金原千恵子・笠原あやの・三好”3吉”功郎/Love Song』

text by Tomoyuki Kubo 久保智之

Tri-lucks Records
TLR-003

金原千恵子(violin)
笠原あやの (cello)
三好“3吉”功郎(guitar)

  1. Waltz for Debby (Bill Evans)
  2. New Blues (Isao Miyoshi)
  3. First Touch(Isao Miyoshi)
  4. Golden Fields (Kazuma Fujimoto)
  5. Farewell Song (Isao Miyoshi)
  6. Walking in the Spring Rain (Isao Miyoshi)
  7. First of All (Ayano Kasahara)
  8. Like a Toots (Isao Miyoshi)
  9. Love Song (Isao Miyoshi)
  10. Hyoccory
  11. My Ave-Maria (Isao Miyoshi)

Recorded at Studio TLive
2023. June 12, 13 and 26

Mixing and Mastering: 2023. July 12 and 17
Recording, Mixing & Mastering Engineer: Katsuhiro Tajima
Illustration: Isao Miyoshi
Design: Akira Morinaga


日本のトップアーティストのファーストコール・ミュージシャンとして活躍中の、金原千恵子 (violin)と笠原あやの (cello)、そしてジャズ界にとどまらず矢沢永吉や森山良子等のメインサポートとしても活躍してきた、三好“3吉”功郎 (guitar)という、日本を代表する3名のミュージシャンによる、洗練された極上のアコースティック・サウンド!

ヴァイオリン、チェロ、アコースティック・ギターの3本によるとても楽しい演奏が繰り広げられる。また楽しいだけでなく3つの楽器だけとは思えない、深く濃密なハーモニーが作り出されている。それぞれが様々なスタイルでメロディやハーモニーを歌い上げ、三位一体となって自由自在にお互いの場所を補いあうようにしながら曲が進行していく。3名のダイナミックな動きがとても魅力的なアルバムだ。

金原のヴァイオリンは、常に明るく優雅なサウンド。楽しげに華やかに、のびのびと歌い上げるメロディがとても素敵だ。アルバム全体から感じる煌びやかな印象は、金原のヴァイオリンによるところも大きいのかもしれない。笠原のチェロは、しっとりとしたとても深いサウンド。ベースの存在しないこのアルバムの編成での音域としては、ハーモニーのルート音を弾くことになる事が多そう、と思いきや決してそれだけにはならず、時には主旋律を、また時にはハーモニーの要となる中域のとても美しいメロディを奏でる。アルバム全体から感じる濃密で上品な雰囲気は、笠原のチェロによるものかもしれない。ヴァイオリンとチェロの2本のメロディの動きはとても美しく、この弦のアレンジには実に心を奪われる。

そしてその弦の優雅なハーモニーを支える、三好“3吉”功郎のギターのリズムと音色のなんとカッコいいことか! スティール弦、ナイロン弦、それぞれのギターで、カラフルに曲の色合いを作り出している。滑らかなギターソロ、お家芸とも言える口笛とのユニゾン・ソロもとても心地良く、またバッキングでも、ソフトなナイロン弦での演奏から、スティール弦を強く弾いてフレットに当てるようなパーカッシブな内容まで、様々な奏法でゾクゾクするようなサウンドを展開している。各曲のサウンドの特徴はギターが決めているとも考えられ、アルバム全体のスタイリッシュな印象は、三好“3吉”功郎のギターが生み出しているように感じた。

ピチカートによる優雅な空気感が印象的な〈Waltz for Debby〉、ハンドクラップで始まりバックビートが心地好い〈New Blues〉、チェロとヴァイオリンの2声の動きが美しい〈First Touch〉、ギターの開放弦とメロディの4度のハーモニーが印象的な〈Golden Fields〉、3人がそれぞれ独立したメロディをとりながらとても美しいハーモニーをつくりだしていく〈Farewell Song〉、軽やかにスキップするようなリズムに、口笛とギターのユニゾンが楽しい〈Walking in the Spring Rain〉、力強いギターのカッティングと弦のロングトーンサウンドにゾクゾクしてしまう〈First of All〉、チェロとヴァイオリンの3拍子パートからギターでの4拍子パートへの展開にハッとさせられる〈Like a Toots〉、ナイロン弦のギターの上で2声の弦がしっとりと伸びやかに美しくハーモニーを奏でる〈Love Song〉、ドライブ感のあるギターカッティングをバックに3人で楽しく弾けまくる〈Hyoccory〉、そしてチェロとヴァイオリンが優しく絡み合いながらゆったりと歌い上げる〈My Ave-Maria〉… 3人が、お互いを信頼しあいながら、伸び伸びと演奏している様子が感じられて、とても楽しい。

聴き終えた時にとても幸せな気持ちに包まれて、自然に笑顔になってしまうような、そんな素敵なアルバムだ。

<Billboard cafe & diningでの〈Hyoccory〉のライブ映像>

久保智之

久保智之(Tomoyuki Kubo) 東京生まれ 早大卒 patweek (Pat Metheny Fanpage) 主宰  記事執筆実績等:ジャズライフ, ジャズ・ギター・マガジン, ヤング・ギター, ADLIB, ブルーノート・ジャパン(イベント), 慶應義塾大学アート・センター , ライナーノーツ(Pat Metheny)等

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