#1345 『ウォルフガング・ムースピール/ライジング・グレース』
text : Masanori Tada 多田雅範
ECM/ユニバーサル UCCE-1166 ¥2700(税込)
ウォルフガング・ムースピール(g)
アンブローズ・アキンムシーレ(tp)
ブラッド・メルドー(p)
ラリー・グレナディア(b)
ブライアン・ブレイド(ds)
01 ライジング・グレース
02 インテンシヴ・ケア
03 トライアド・ソング
04 ファーザー・アンド・サン
05 ウォルフガングズ・ワルツ
06 スーパロニー
07 ブーガルー
08 デン・ホイーラー、デン・ケニー
09 エンディング・ミュージック
10 オーク
All music by Wolfgang Muthspiel except M5 by Brad Mehldau
録音:2016年1月30日~2月1日@ラ・ビュイッソン、ペルヌ・レ・フォンテーヌ、フランス
エンジニア:Gerald de Haro & Nicolas Baillard
プロデューサー:マンフレート・アイヒャー
おおお。ECMの新デザイン・シリーズだ、新しい時代に入った気がする、2枚組のアナログでも発売されている。
そして、黄金の70年代ECMサウンドが!これはもうヴィンテージものだ、どしっと構えたオーディオセットで鳴らせてみたい家宝ものである。
今年の8月にECM盤『Driftwood』のトリオで来日したウォルフガング・ムースピール(1965~)、このトリオにJazz The New Chapterトランペット、アキムシーレ(ライヴではアキムジレーと聞こえるが)、そして、メルドー。
他のレーベルでドル箱リーダー作勝負作をリリースするメンツをサイドメンに配置する。これが現在のECMレーベル、アイヒャー統帥の実力なのだ。レーベル創立以来、幾度もニューヨーク進出の痕跡があるが、こういうリリースを、そして。
ラルフ・タウナー、ケニー・ホイーラー、キース・ジャレット、デイブ・ホランド、ジャック・ディジョネット、というECMオールスターが揃ったレコーディングは存在しない。だがECM ファンは夢見たことができた。そういった夢のサウンドを、さりげなく実現してしまうところが憎いというか、アイヒャーの業だな、これは。
ひとりだけ30代のアキムシーレ、上手さにのけぞる、トラック2、この音色をコントロールする力量、ジョー・マネリのECM盤を聴いてくださいと言いたくなるくらいだ(よいこのジャズファンは真に受けないでください)、タウナーが憑依したかのムースピールの導入部からの10分越えトラック、アルバム代表曲だ。
続くトラック3<Triad Song>、Hashizume Ryosuke Group をお前たちは知っているのかと言いたくなる美メロと浮遊疾走感覚、ううっ、サイドに回ったときのメルドーの才気、カンペキだ!、Hashizume Ryosuke Group であればタイコの Hashimoto Manabu の天才的なブレイクの小刻みでさらにサウンドを沸騰させることだろうとウキウキしてしまうが、田舎に移住してしまってライブスケジュールが跳ぶんだと?じゃあ田舎で演れ、出かけるから。
この5にんはパーマネントグループではないし、煮詰めていないセッションの様相でもあったことだろう、ホイーラーに捧げたという話題曲も配置されているが、メルドー作曲のトラック5以降は彼らの力量だけで描ききったようだ。この薄味な構えが評価を分けることになるかもしれない。