#2320 『高柳昌行New Direction For The Arts / プロジェクション〜インスピレーション&パワー 14 完全版』
『New Direction for the Arts / Projection~The Complete Inspiration and Power Live』
text by Akira Oshima 大島 彰
ジンヤディスク B-37 ¥2,750(税込)5/25発売予定
New Direction for the Arts
高柳昌行 Masayuki Takayanagi (g)
井野信義 Nobuyoshi Ino (cello)
山崎比呂志 Hiroshi Yamazaki (perc)
ジョー水木 Joe Mizuki (perc)
1. Projection 58:10
1973年7月9日、アート・シアター新宿文化劇場にて録音
プロデューサー:斉藤安則(ジンヤディスク)& 大友良英
録音:荒井邦夫
カセット録音からのサウンド復元:大友良英
マスタリング:中村茂樹
1973年新宿「アート・シアター新宿文化劇場」での、副島輝人さんらにより開催されたイベント『インスピレーション & パワー14』11日目のNEW DIRECTION FOR THE ARTSの演奏を初めて完全収録。
トリオレコードから出たイベントタイトルの2枚組コンピレーション・アルバムには終わりの部分のみが収録されていて、物足りない感は歪めなかったのだが、今回のアルバムでは想定外の静かな始まりで《コッキンカーン》、徐々に熱量が上がりマス・プロジェクション (集団投射) へと突入、《お月さままで飛んでいく音》を聴くことが出来ます。
快挙です。《昨年秋、いくつかの断片になって発見されたカセット音源をまるで発掘されたバラバラの壺を繋ぎ合わせるように丁寧に修復しました。恐らく欠落部分は十数秒ほど、ほぼ完全に修復できたと確信してます。間違いなく高柳昌行の最高作の一つです。》と大友良英さん誇らしげです、お疲れさまでした、ありがとうございました、とてもいい仕事されて、高柳さんへの恩返しなのかなと。
高柳さんのこと、思い出してます。私は生前に、高柳さんと話したことがあります。阿部薫との過去の音源を発売したいのですがと。………見事に断られました。間章さんとの確執などいろいろあったのだと思いますが、「僕はね、まだ演ってるんだよ、今の演奏を聴きに来てよ。」そう言われて反論出来ませんでした、インプロを演奏する奏者は皆さん同じような姿勢なのかと思います、「時代に遅れをとるのは恥である」そう言って晩年まで最前線に立ち続けられました、厳しい方でした。
ジャズ通の俳優であり、ギタリストでもあった殿山泰治さんは、《いつもお客が少なくて高柳君はごはん食べられてるんだろうか?》と心配されてました、同じような質問をしたところ、「聴衆の前で演奏するなど傲慢であり、恥ずかしい行為なのだ」と。また「たった一人でもいい、聴衆の心に深く侵入することが出来れば」と話されてました。
高柳昌行さんから皆さんへ、「ジャズは生き物であり、即興であるが故に最も生々しい筈である。イメージを存分に聞いて聴取されることに期待している。」
山猫軒(埼玉県越生)に並べられた高柳昌行 (撮影=南 達雄)
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大島 彰 (ランダムスケッチ)
1955年京都市出身、横浜市在住。「科学朝日」「歴史と人物」「季刊邪馬台国」「季刊ジャズ批評」などに執筆。編集者としては『岡村孝子全歌詩』『阿部薫覚書』『阿部薫2020』など、雑誌やCDライナーも多数。最近は沼尾翔子さんの歌を聴いている、大友良英さんや磯端伸一さんも彼女のファンである、何故か二人とも高柳昌行の門下生であった。