#1048 Charlie Parker Jazz Festival 2018 from August 22 to 26 in NYC. Vol. 2

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text & photo by Takehiko Tokiwa 常盤武彦

野外コンサート2日目は前日と同じく、ジャマイカの英雄でアフリカ系民族主義の指導者、アメリカの公民権運動に多大な影響を与えたマーカス・ガーヴェイを記念したハーレムの公園で、午後3時から開催された。トップ・バッターは、弱冠17歳の盲目の天才ピアニスト/オルガニストのマッシュー・ホイッテカーだ。5歳でピアノをプレイし、9歳でその才能を見出したジャズ・ファウンデーション・オブ・アメリカのサポートで、マンハッタン音楽院大のプレ・カレッジ・プログラムで学んだ。2017年にクリスチャン・マクブライド(b)、ジェイムス・カーター(sax)をゲストに迎えデビュー作をリリースした早熟の天才だ。ピアノとオルガンの二刀流のホイティカーにテッド・モーカールドは、オルガンにはギターでファンキーに、ピアノにはベースでスウィンギーにサポート。ソウルフルな1日のスタートを切った。

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現代の音楽シーンで隆盛を極めているヒップホップとブルース、ジャズの歴史を、アフリカ系の音楽文化カルチャーとして若い世代に呈示して支持を集め、多くのコンサート・イヴェント、ブルーノート・レコードと提携したレーベルでのアルバム・リリース、リスナーとアーティストとのコミュニケーションを図るブログと、2006年にボストンで設立されてから現代ニューヨーク・アフリカン・ミュージック・シーンの台風の目となっているリヴァイヴ・ミュージックは、今や音楽シーンの巨大なコミュニティを構築している。その若き総帥で、バークリー音大出身のメーガン・ステイビルが、チャーリー・パーカー・ジャズ・フェスティヴァルに参戦した。8月22日のチャールス・トリヴァー(tp)とゲイリー・バーツ(as)が50年前のジャズ・シーンを語るパネル・ディスカッションをプロデュースし、コンテンポラリー・ジャズのルーツに迫った。そしてリヴァイヴ・ミュージックを代表するアーティストの一人、キーヨン・ハロルド(tp)が登場した。奇しくもハロルドはニュースクール大で、トリヴァーの薫陶をうけ、若き日にそのビッグバンドに登用されている。2016年に公開された映画「Miles Ahead / マイルス・デイヴィス空白の5年間」のサウンド・トラックで、マイルス・デイヴィス役を演じるドン・チードルの吹き替えのトランペット演奏で、一躍注目を集めた。2017年秋にリリースしたアルバム『ミュジシャン』はその貴重な経験を昇華した野心作であり、この日のステージもそのツアーの一環である。2018年の2月に来日したメンバーに加えて、シンガーのアンドリア・ピッジコニ、ラッパー/スポークン・ワードのファラエ・モンチを加え、マーカス・ストリックランド(ts,b-cl)、ニア・フェルダー(g)ら、コンテンポラリー・ジャズの最先端にいるアーティスト達と、ニュー・アルバムの世界観を忠実に再現した。

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そしてステージは、コンテンポラリーからトラディショナルへとシフトする。キャサリーン・ラッセル(vo)は、ルイ・アームストロング(tp,vo)のミュージック・ディレクターを長年務めたルイス・ラッセルを父に、シンガーのカーリン・レイを母に生まれ、ブルース、オールド・ジャズに親しんで成長した。彼女のキャリアで異彩を放っているのは2002年から2004年にかけてデヴィッド・ボウイ(vo)のツアーに、バック・シンガー、ギタリスト、キーボーディスト、パーカッショニストで参加したことであろう。ボウイのグループを後にしてラッセルは、ソロ・キャリアをスタート、自らの原点である、ブルース、オールド・ジャズへと回帰する。1920年代のオールド・ブルース“Crazy Blues”のカヴァーがケーブルTV局HBOの人気ドラマ・シリオーズ”Boardwakd Empire”のサウンド・トラックに収録され、同アルバムは2012年のグラミー賞のサウンド・トラック部門を受賞した。この日のグループのミュージック・ディレクターは、ギタリストのマット・ムニステリ。スティーヴン・バーンスタイン(tp)率いる1920年代のデューク・エリントン(p)のジャングル・スタイルで、スライ&ファミリー・ストーンや、プリンス、ビートルズまでをカヴァーするミレニアム・テリトリー・オーケストラの中枢メンバーだ。大ヴェテランのマーク・シェーン(p)と共に、ハーレムのオーディエンスの郷愁をさそうオールド・ナンバーが、しっとりと、時に激しく歌い上げられた。

 

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2日めのトリに登場したのは、ジャマイカ出身のモンティ・アレキサンダー(p,melodica)だ。2ベース、2ドラムスにそれぞれアメリカと、ジャマイカ出身のプレイヤーを配したハイブリット・バンド、ハーレム・キングストン・エクスプレスを率いての登場だ。ジャマイカの英雄の名を冠した、マーカス・ガーヴェイ・パークにふさわしいグループだ。アメリカ勢のハッサン・JJ・シャクアー(b)、ジェイムス・ジョンソン(ds)がリズムをリードするときは、スウィングや、ブギウギ、ジャマイカ勢のジョシュア・トーマス(el-b,vo)、カール・ライト(ds)が主役に躍り出ると、レゲエ、カリビアン・リズムと、バンドのグルーヴが目まぐるしくチェンジする。フロントのウェイン・エスコフェリー(ts)、アンドレ・ムーチソン(tb)は難なくリズムのサーキットをこなし、アンディ・ブラスフォード(g)、アール・アップルトン(kb)がサウンドに華やかなカラーリングを施す。アレキサンダーの指が、センターに置かれたピアノの上で自由奔放に踊り、メロディカをハード・ブロウイングする。客席の最前列では、ハーレムの重鎮と子供がダンスに興じている。ハーレムとジャマイカの首都キングストンの間に、まさに音楽のエクスプレスが開通した瞬間だった。この熱気は、翌日のイースト・ヴィレッジのトンプキンス・スクウェアへと続く。

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常盤武彦

常盤武彦

常盤武彦 Takehiko Tokiwa 1965年横浜市出身。慶應義塾大学を経て、1988年渡米。ニューヨーク大学ティッシュ・スクール・オブ・ジ・アート(芸術学部)フォトグラフィ専攻に留学。同校卒業後、ニューヨークを拠点に、音楽を中心とした、撮影、執筆活動を展開し、現在に至る。著書に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21、2006)、『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』(産業編集センター、2010)がある。

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