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Jazz and Far Beyond

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Concerts/Live ShowsNo. 338

#1410 MODE: goat/Moin @LIQUIDROOM

Text by 剛田武 Takeshi Goda

Photography by Yuichiro Noda, Courtesy of MODE.

2026年6月6日(土) 恵比寿リキッドルーム

goat :
Koshiro Hino : g, perc / Atsumi Tagami : b, perc / Akihiko Ando : as / Rai Tateishi : perc, fl, shinobue / Akio Jeimus : ds

Moin:
Valentina Magaletti : ds, perc / Joe Andrews : g,b / Tom Halstead : g,b / Al Wootton : electronics


エクスペリメンタル・ミュージックの交感の場としてのMODE

これまでJazzTokyoで何度か紹介しているイベントシリーズ『MODE』は、2024年9月に「MODE AT LIQUIDROOM」と題して恵比寿リキッドルームにて、イギリス・グラスゴー出身のトリオStill House Plantsと大阪を拠点とするgoatの二組によるライヴ・イベントを開催した。それまでもMODEは草月ホールや渋谷WWWや淀橋教会といった会場でイベントを企画していたが、リキッドルームはJ-POP/ロックの人気アーティストやバンドが多く出演するイメージが強く、1000人というキャパも含め実験音楽のイベントを開催することは冒険とも思われた。しかし蓋を開けてみれば会場は若いオーディエンスで満員、大きな支持を集めるgoatはもちろん、初来日のStill House Plantsも大歓声で迎えられる盛況ぶりだった。

2回目となる今回のリキッドルームでのMODEの出演は、前回に続きgoatと、こちらもバンドとしては初来日となるMoin。開演前から若い世代の観客の熱気であたたまる会場には外国人の姿も多い。

●goat

2013年に大阪拠点の音楽家・YPYこと日野浩志郎を中心に結成されたリズムアンサンブルgoatのパフォーマンスを体験するのは前回のMODE AT LIQUIDROOMに続き2度目。エレクトロニカ/トランス/テクノといったクラブ・ミュージック、アヴァンギャルド/インプロヴィゼーション/ノイズといった実験音楽、プログレ/クラウトロック/インダストリアル/ポストパンク等のロック、そしてエスニック/ワールド・ミュージック。それらすべてのハイブリッドでありつつ、いずれのジャンルにも収まらない異物的な存在感を持ったユニークなグループである。弦楽器(ギターとベース)と管楽器(サックス、アイリッシュフルート、篠笛類)が音階やメロディを奏でることは殆どなく、パーカッションと同質の、いやそれ以上に無機的な機械=マシーンに近いパルス発振器として機能する。

シンセサイザーやコンピューターの打ち込み(シーケンサー)で作られるテクノ・ミュージックを、生身の人間がアコースティック楽器やバンド編成で演奏するスタイルは「人力テクノ」と呼ばれているが、goatは、いわゆるテクノ・ミュージックにとどまらず、エレクトロ・アコースティック~ミニマル・ミュージック~グリッチ・サウンド~アンビエント・ノイズといったアート系電子音楽を、コンピューターや電子機器に頼らずアナログな楽器を使って奏でる進化系ユニットといえるだろう。クラフトワークに『The Man-Machine=マン・マシーン』というアルバムがあるが、goatのパフォーマンスを観ながら筆者の脳裏に浮かんだのは日本語タイトルの『人間解体』という言葉だった。

このようなアート寄りの実験音楽のアプローチは、英米ではアカデミックな聴衆の前で、伝統的な着席のコンサートホールで披露される場合が多い。しかしロックの聖地である恵比寿リキッドルームを埋めた2~30代中心の若者が、人力ミニマルビートに体を揺らし、時に腕を振り上げて歓声を上げる姿は、ハイブリッド・カルチャーの伝統が根付いた日本ならではの光景といえるだろう。これほど難解な音楽を聴かせるアーティストとお祭りさながらに盛り上がるオーディエンスの交感は世界的にも類を見ないに違いない。その熱狂に応えるかのように、ラストナンバーでは、サックスがエモーショナルな叫びを上げ、轟音ギターが激しいロックフレーズを奏でる。goatのメンバーの心の内に刻まれた原初的なロック衝動が押し寄せてきて心が熱くなった。

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●Moin

クールなアート性を纏ったgoatとは対照的に、最初からロック衝動全開のステージを展開したのがMoin。2024年6月のソロ来日時にリズムから解放された実験的なパフォーマンスを見せたヴァレンティーナ・マガレッティは、Moinではドラマーとしてロックビートをたたき出すことに専念する。その姿はヴェルヴェット・アンダーグラウンドの女性ドラマー、モーリン・タッカーを想起させる。二人のギタリスト(ベースとの持ち替えもあり)のジョー・アンドリュースとトム・ハルステッドは、あたかもソニック・ユースの二人のギタリスト(サーストン・ムーアとリー・ラナルド)さながらに、ハードエッジなギター・ノイズをまき散らす。ゲスト参加のアル・ウートンは、DJのようにサンプラーとエレクトロニクスを駆使して音の時空を歪める。ロンドンを拠点とするユニットだが、その佇まいは筆者がイメージしたバンドに象徴されるようにニューヨーク(というかNo New York)的な雰囲気に溢れている。

演奏曲の多くは何人かのコラボレーターによる詩の朗読やナレーションがフィーチャーされていて、文章の意味が分からなくても聞き取れる言葉の断片や声の表情から、Moinが音楽にとどまらないメッセージ性のある表現で聴き手のイマジネーションを刺激していることがわかる。直接の関係はないかもしれないが、2025年4~6月にMODEにより開催された「サウンドウォーク・コレクティヴ & パティ・スミス/コレスポンデンス」も音楽と詩(と映像)のコラボレーションだったことを考えると、現代の実験音楽の潮流として「言葉」の役割が大きくなっているのかもしれない。

Moinのラフでワイルドなロック・スタイルの演奏に観客は最初からヒートアップ気味。goatとは違ったノリだが、どちらも同じように頭と身体で感じて素直に反応する。毎度ながらMODEに集まる若者の柔軟な感性には驚きと喜びを感じる。実験的な芸術を通じた「交換・交流」の場としてのMODEが支持されている証拠に違いない。

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MODE公式Instagram

6/29-30 MODE 2026 東京・草月ホール

剛田武

剛田 武 Takeshi Goda 1962年千葉県船橋市生まれ。東京大学文学部卒。サラリーマンの傍ら「地下ブロガー」として活動する。著書『地下音楽への招待』(ロフトブックス)。ブログ「A Challenge To Fate」、DJイベント「盤魔殿」主宰、即興アンビエントユニット「MOGRE MOGRU」&フリージャズバンド「Cannonball Explosion Ensemble」メンバー。

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