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Concerts/Live ShowsNo. 340

#1419 望月紅華ダンスカンパニー / 今来個ん – Konkokon –

Text by Akira Saito 齊藤聡
Photos by Ted Forbes

2026年7月11日(土) 冬青庵能舞台(京都)

望月紅華(総監督、演出、振付・即興)
タツ青木(音楽)

共催 Asian Improv aRts Midwest

望月紅華が英国で学んだのはコンテンポラリーダンスである。その地点からの意図的な逸脱が、今般のステージにつながっている。彼女が既存の方法論に見出した亀裂は、それが白人の身体を前提としていること、伝統邦楽がまだほとんど入っていないことだった。そして、コンテンポラリーダンスの振り付けと即興音楽とを重ね合わせることは非常に難しいという。それは、彼女が学んだマース・カニングハムの方法論であっても、またピナ・バウシュの積み重ねてきた実践においても、である(*1)。

それゆえ、彼女は独創のため能楽と舞踏を学び、表現に取り入れた。即興に関していえば、シカゴに住む日本舞踊の藤間淑之丞(Rika Lin)との縁が、タツ青木のプロジェクトとの縁につながった。いちどきりのステージにおける越境の実践から伝わってくる迫力は、膨大な積み重ねからもきているわけである。

今回用いられたサウンドは興味深いものだ。ドラゼク・フスカルド(Drazek Fuscaldo)はシカゴを拠点としており、ときに青木(三味線)やジャズのハミッド・ドレイク(ドラムス)といった面々とのコラボレーションを展開してきたオルタナティブ・ロック的なデュオユニットである。そして青木の出自たる三味線、シカゴの和太鼓グループ・司太鼓の音も提供された。それらの音源は録音されたものだが即興要素が非常に強く、本ステージでの青木の即興との架橋となった。

「狐の嫁入り」は『サロメ』に触発された新作だ(オスカー・ワイルドの戯曲、さらにそれをもとにしたリヒャルト・シュトラウスのオペラ)。望月の動きからは目が離せない。狂える妄執は重力に従い、ときに重力に逆らう。

三部作「鷹匠」に入り青木が登場し、まず「月下美人」において三味線で望月と共演する。特筆すべきは、そこで楽器が鳴らされていることによる響きの揺れ動きと、望月のふるまいの揺れ動きとが相まって、ステージに異様な迫力が持ち込まれたことだ。そしてエレクトロニクスによる音の拡張、太鼓による驚きとが、観る者がその場から逃げ出すことを許さない空間を作り上げる。舞台を踏む音すらなまなましい。後半になり、コントラバスのグルーヴが時間を進行させた。

「影法師」はそのはじまりから異界であり、衣装を脱ぎ捨てたこともあり、望月の動きがむき出しで迫ってくる。振付と即興との抜き差しならない関係が、表現として昇華されているわけである。静寂のテンションは観客が「凝視」することへと誘う。そして「鷹匠」の世界に封じ込められることになる。

望月は「あわい」ということを意識しているという。能楽の舞台は形だけでいえば客席・外の世界に大きく開かれているにも関わらず、本舞台も後座も簡単に近寄ることを許さない。また、望月は踊りのあいだ白目を剥き、その反射光が振幅をもって明滅する―――まるで彼岸と此岸とのあいだにあるように。すなわち、「あわい」には場も肉体もあった。それは、東洋の「畳む身体」と西洋の「開く身体」とを往還・融合することを目指した独自の方法論「三位一体身体法」とも関連しているだろう。そして、本ステージでは音楽もまた相反するものの間の往還を担った。

文字通りの一期一会だったということができるだろう。

(*1)ピナ・バウシュは一度か二度ペーター・ブロッツマン(サックス)のような即興音楽家と一緒にやったが、それは彼女にとって望ましいものではなかった。完璧主義者のピナは、事前に確認して最善なものを観客に見せるべきだと考えていた。(拙著『齋藤徹の芸術』より)

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』、『オフショア』、『Jaz.in』、『ミュージック・マガジン』などに寄稿。linktr.ee/akirasaito

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