#1056 リューダス・モツクーナス「エモーショナルなサックス・マイスター」

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text by Tetsu Sakamoto  阪本テツ
photo by Seiichi Sugita 杉田誠一

リューダス・モツクーナス (ts,ss)
12/05 浦邉雅祥 (as)
12/07 纐纈雅代 (as)
横浜・白楽 Bitches Brew for hipsters only

 

“東欧最強のサックス”と謳われるリューダス・モツクーナスの来日公演。横浜・白楽のビッチェズ・ブリューでの2夜を体験した。サックス、クラリネットなどマルチ・リード奏者である彼が今回のツアーに持ってきたのはソプラノサックスとテナーサックスの2本。

12月5日(水)の共演は浦邊雅祥。先行した浦邊のパフォーマンス色の強いプレイにインスパイアされたリューダスのソロは、リードに口を触れず強いブレスのみで音を発する奏法からはじまった。そして強烈なパーカッシブ・タンギングやフラッタード・タンギング、マルチフォニック(重音)、循環呼吸など多彩な技法を駆使した演奏が展開する。自身の身体の軋みそのもののような浦邊のアルトサックスに対して、リューダスには “道具” としてのサックスの可能性を拓く強い意思が感じられる。驚いたのは彼が「ウォーター=プリペアード・ソプラノサックス」と名付けたパフォーマンス。ブリキのバケツに張られた水にソプラノのベルを突っ込みオーバートーンやマルチフォニックと水の共振を組み合わせることで、未知のサウンド・エフェクトが発生する。ついにはコップにくみ取った水を管体に流し込みサックスを天に向けて、ブクブクとブレスを続けるに至った。

12月7日(金)は纐纈雅代のアルトサックスとの共演。終始エキセントリックでエネルギッシュな纐纈の音に対して、この日のリューダスは重厚でどこかユーモラスな生命力を感じさせる音を聴かせた。纐纈のブロウに寄り添った彼のミニマル・パターンのフレーズも、決してメカニカルではなく肉感的。巨漢ならではのソプラノとテナーの2管同時奏法での音圧も驚異的だった。

タイプの違う共演者と対峙することで見えたリューダスのインプロバイザーとしての資質の豊かさ、サックスを熟知した高い技法。彼の強烈なエモーションと、知的コントロールの共存する演奏に圧倒されたライヴだった。

終演後に彼から聞いた言葉が印象に残る。

「即興演奏において、いつもどのように全体を構成するかを考えることを大切にしているよ。ライヴの時には、どこかに行ってしまうけれどね。」


■阪本テツ(サックス、バスクラリネット)

早大モダンジャズ研究会にてアルトサックスを始める。学生時代より即興性と構築性を重視したポスト・フリージャズを目指して活動。「横浜トリエンナーレ・ファイナル・フリーセッション」、「川俣正通路展セッション」など現代美術の場での演奏も多い。即興Duo「トマソンズ」での活動のほか、近年は即興演奏家庄田次郎氏等と共演。マルチ・リード奏者として、フリーインプロビゼーションの可能性を模索中。

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