#1073 3/4~5 エリントン DE 行こう

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text by Masahiko Yuh 悠 雅彦
photos by Yumi Mochizuki 望月由美

1.デューク・エリントンを語る~大友良英

2018年3月4日月曜日 19:00    渋谷区文化総合センター大和田伝承ホール
大友良英(お話)

2.エリントンDE( Duke Ellington )以降~渋谷毅・編曲指揮}
2018年3月5日火曜日 19:00   渋谷区文化総合センター大和田さくらホール

渋谷毅(ピアノ、オルガン)
峰厚介(テナー・サックス)
松風鉱一(クラリネット、フルート、アルト・サックス、バリトン・サックス)
津上研太(ソプラノ・サックス、アルト・サックス)
纐纈雅代(アルト・サックス)
松本修(トロンボーン、指揮)
石渡明廣(ギター)
上村勝正(ベース)
外山明(ドラムス)
関島岳郎(テューバ)
清水秀子(ヴォーカル)
太田恵資(ヴァイオリン)

1.East St. Louis Toodle-Oo
2.Mood Indigo
3.  Island Virgin
4.Sonnet to Hank Cinq / Sonnet to Search of a Moor / Sonnet for Caesar /Sonnet for Sister Kate           5.   Creole Blues
6.   Prelude to a Kiss
7.Jump for Joy
8.  I’ m Beginning to See the Light(灯りが見えてきた)
9.Such Sweet Thunder
10.  The Star- Crossed Lovers
11.   Rockin’  In Rhythm
12.  Caravan
13.  It Don’t Mean a Thing ( If It Ain’t Got That Swing : スウィングしなけりゃ意味がない)
14.  Come Sunday
15.  Take the  “A“ Train (“A”列車で行こう)
16.  Lotus Blossom

エッセンシャル・エリントン

渋谷毅オーケストラ


かつて上梓した『ジャズ』(音楽之友社)の中で、私はジャズ史上最大の音楽家をひとり選べと言われたら、かのパーカーやマイルスではなく、大好きなコルトレーンやモンクでもなく、なんらためらわずにデューク・エリントンと答えると書いた。この気持ちはあれから20余年経った現在もまったく変わらない。まったく同じ信念を持ち続けている音楽家が少なくとも一人いることを私はよく知っている。その名は渋谷毅。

今年はそのエリントンが没して120年。生まれたのは1899年4月29日(没年1974年5月24日)だから、来月が来れば早くも121年。ニューポートやモンタレー・ジャズ・フェスティヴァルをはじめ何度かエリントン自身が元気な姿で指揮するエリントン楽団のナマ演奏を聴き、そのつど感激に浸ったことを今でも思い出しては、ときに涙する。

今回、Live Performance SHIBUYA 開催に当たって、渋谷区文化総合センター大和田さくらホールは<21世紀のエリントン・ミュージック>とタイトルを掲げ、エリントンといえばわが国では彼をおいてほかにいないと言っても過言ではないほどエリントンの音楽に心酔し、彼の音楽を師とすることで自己の音楽を啓発させてきたピアニスト、コンポーザー、アレンジャーの第1人者、渋谷毅を指名し、<エリントン DE (Duke Ellington) 行こう>と銘打ったコンサートを催した。当日のタイトルに<21世紀のエリントン・ミュージック>とあるように、演奏されるエリントン作品はすべて渋谷毅が編曲したスコアに基づいている。オーケストラには我が国を代表する名うての名手たちが集められ、渋谷毅オーケストラでは長いこと傘下でバンドを支えてきた峰厚介や石渡明廣や松風鉱一らに加え、デビュー時にセンセーションを巻き起こしたアルトの纐纈雅代やヴァイオリンの太田惠資を加えた最良のメンバーで臨んだ(渋谷毅がキーボードを担当するため、必要な場面での指揮にはトロンボーン奏者の松本治が当たった)。エリントンの作品といえば「A列車で行こう」を例に挙げるまでもなく、この夜演奏された「明かりが見えてきた」や「スイングしなけりゃ意味ないよ」などは言わずもがなだが、「ムード・インディゴ」、「プレリュード・トゥ・ア・キス」、ファン・ティゾールと共作した「キャラヴァン」、スピリチュアルな名曲「カム・サンデイ」などエリントン愛好家にとっては忘れがたくも思い出深い名曲が渋谷の新たな編曲でよみがえり、エリントン・ファンの喝采を博したことは、渋谷のアイディア豊かな編曲やオーケストレーションとともに最近では画期とでも呼びたいくらいエリントン・カラーが宙を彩った。しかし、例えば冒頭の「イースト・セントルイス~~」、30年代初頭の「クリオール・ブルース」や「ロッキン・イン・リズム」、57年の『真夏の夜の夢』に書いた「サッチ・スイート・サンダー」や「スター・クロスト・ラヴァーズ」等々、あるいは良き相棒だったビリー・ストレイホーン(”A列車で行こう”の作曲者)の「ジャンプ・フォー・ジョイ」や「ロータス・ブロッサム」などを総合して評価すれば、当夜の16曲はまさに渋谷毅の好みとカラーを反映したエリントン作品群だったと言ってもいいのではなかろうか。

全16曲のうち、第1部の「スイングしなけりゃ意味がない」と「クレオール・ブルース」は清水秀子のヴォーカルで、往時を忍ばせるがごとき後者での渋いヴォーカルが光った。器楽ソロではヴェテランの峰厚介のテナーとソプラノ、松本治のトロンボーン、松風のクラリネットやバリトン、纐纈のアルト、津上のソプラノやアルト等々、ヴェテランはヴェテランらしく味わい豊かな、他方若手は若手らしく溌剌としたソロをとって、渋谷の作り出すエリントン・サウンドに花を添えた。エリントンへの敬意がかえって邪魔したか、あるいはヴェテランたちに遠慮したか、纐纈のソロは残念ながら当方が期待した噴火山とはならなかったけれども。そんな中で気を吐いたのがヴァイオリンの太田惠資。後半の第2部で渋谷に紹介されて登場した太田は、エリントンがシェイクスピアの「真夏の夜の夢」に作曲した「Such Sweet Thunder」と「The Star–Crossed Lovers」で松本治、石渡明廣、関島岳郎(チューバ)、外山明、渋谷毅とともにソロを披露したが、彼の天性ともいうべきコミック風でありながら曲の核心を突くプレイが聴く者を泣かせるといえばよいか、あたかも浅草の演芸場で本物の芸に浸るような気分にさせてくれた。特に後者「The Star–Crossed Lovers」でのソロは素晴らしかった。この2曲もそうだし、ストレイホーンと共作した「Such Sweet Thunder」の中の4つのソネットなどは、渋谷毅ならではの選曲、というより彼でなければ思いもつかぬエリントン曲だったといってよいのではないか。

「Come Sunday」から「Take the A Train ~A 列車で行こう」へ。最後はまさにエリントン賛歌のように響き渡った。これだったらオーケストラ面々全員で「テイク・ジ・エイ・トレイン!」と歌い収めればよかったのでは。その合唱に太田惠資のヴァイオリンが絡みつく図を想像してみた。最後は渋谷毅が美しい「Lotus Blossom ~ハスの花」をソロで呟くように、静かに締めくくった。

*ちなみに<エリントン DE 行こう>は前日の4日から始まった。前夜は大友良英の “ デューク・エリントンを語る “。大友が個人的に好きなデューク・エリントンの音源(SP盤やLP盤)をかけながら、エリントンと彼自身の関わりを語った一夜。機会があったらこの一夜の話もしてみたい。.

悠雅彦

悠雅彦

悠 雅彦:1937年、神奈川県生まれ。早大文学部卒。ジャズ・シンガーを経てジャズ評論家に。現在、洗足学園音大講師。朝日新聞などに寄稿する他、「トーキン・ナップ・ジャズ」(ミュージックバード)のDJを務める。共著「ジャズCDの名鑑」(文春新書)、「モダン・ジャズの群像」「ぼくのジャズ・アメリカ」(共に音楽の友社)他。

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