#1094 栗林すみれ×福盛進也×黒沢綾

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渋谷・公園通りクラシックス Koendori Classics, Tokyo
2019年8月25日 14:00

福盛進也 Shinya Fukumori (drums)
栗林 すみれ Sumire Kuribayashi (piano)
黒沢 綾 Aya Kurosawa (Voice)

1.That Night(Darek Oleszkiewicz)
2.This Song (栗林)
3.Flight of a Black Kite (福盛)
4.六花舞うように (黒沢)
5.Luck and Plack (黒沢)
6.Birth (福盛)
7.Spectacular (福盛)
8.Departure Time (栗林)
9.Wild Tale (栗林)
10.Walk (NILO/福盛)

EC.Lawns (Carla Brey)

2018年にECMから『福盛進也トリオ/For 2 Akis』(ECM2574)でデビューしたミュンヘン在住のドラマー、福盛進也。6月〜8月に来日しさまざまな公演を行ってきたが、その最終公演となったのがこのトリオで、8月21日の佐藤浩一とのデュオの後に急遽組まれた。栗林すみれがニラン・ダシカ・グループでオーストラリアのフェスティバルに出演した際に、福盛トリオのピアニストでもあるウォルター・ラングが栗林の演奏に感激し、ヨーロッパに来る機会があったら一緒に演奏しようと約束を交わす。今年、ジョゼッペ・バッシとのイタリアツアーの前後にミュンヘンとその周辺で、福盛、栗林、ウォルターの共演が実現した。今回の来日では、7月18日に福盛、ニラン・ダシカを含む栗林すみれグループで公園通りクラシックスに出演した。この数カ月のうちの日豪独伊にまたがる時機を逃さない動きもどこか閉塞感のある日本ジャズ界から海外への拡張へ今後に期待を感じるところだ。

休憩なしでの100分連続でのパフォーマンス。栗林のピアノが幅広い表現と豊かな音で、公園通りクラシックスのピアノとひとつにつながって最高の鳴りとグルーヴを生み出していた。栗林自身も仲間からこのピアノのよさはきいていたが、今回弾いてみて本当に最高だった、とMCで語っていた。栗林のピアノのフレーズに乗るヴォイスもいつもより控えめになり、ピアノとの対話を楽しんでいるようだった。福盛のドラムは、リズムパターンを叩き出すのではなく、ブラシやマレットも駆使しつつ、ひとつひとつの音に思いを込めて音響を拡げて行く。福盛は優れた作曲者であるが、現場では自分が仕切るよりも共演者に流れを任せることも多い。その中で、幅広いダイナミックレンジと、自由自在なリズムの変化を提示し、福盛とコミュニケートしながらストーリーを創って行く栗林は、今後もユニークな共演者のひとりであり続けると思う。

黒沢綾は、栗林の尚美学園大学の先輩にあたり、高校生のころ制服姿の栗林が黒沢のライブを聴きに行ったこともあるという。黒沢の正確なピッチと透明感がありながら暖かいヴォイスが、福盛と栗林が作る美しくかつダイナミックな世界に暖かさや空気を加える。たとえば、福盛トリオの<Spectacular>も黒沢のヴォイスに乗るとまた違った生命を持っていた。黒沢の書く歌詞とメロディの妙も素晴らしく、栗林はお母さんのお腹の中にいるような気持ちになると語っていたし、今回のトリオのサウンドは「優しく包まれる」感覚を強く受けた。黒沢は自らもピアノを弾き、今回は連弾でも参加したし、ライブによっては栗林のヴォイスとの響き合いも美しい。

私は栗林と黒沢、ニランにベースの伊東佑季が加わった「ひゅむたん」を「このパフォーマンス2018(国内)」に選んだ。なお『福盛進也トリオ/For 2 Akis』を「このディスク2018(国内)」に選んでいるから、ベスト×ベストなスペシャル過ぎるライブだった訳だ。福盛と栗林と黒沢のオリジナルの素晴らしさは言うまでもなく、美しさや展開のおもしろさだけではない、心を動かすパワーを持つ作品の数々と、繊細さから力強さまでシームレスに表現するこのトリオに、今回の福盛の数ある公演の中でも特に独自の発展性と多くのリスナーを惹き付ける可能性を感じた。ぜひ今後も再演して欲しいと思う。

福盛は12月〜1月にかけて再来日を予定しており、12月9日に公園通りクラシックスでウォルター・ラングと栗林の2台のピアノと福盛のトリオが決まっている。なお、1月7日には代々木上原ムジカーザで「最愛のピアニスト」佐藤浩一とのデュオライブもある。

神野秀雄

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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