東京JAZZ 2019 ー チック・コリア・アコースティック・バンド & エレクトリック・バンド TOKYO JAZZ 2019 – Chick Corea Akoustic Band & Elektric Band
第18回 東京JAZZ / 18th Tokyo Jazz Festival
Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Hideo Nakajima 中嶌英雄 & Rieko Oka 岡 利恵子
©18th TOKYO JAZZ FESTIVAL
L+R: Hideo Nakajima
L: Rieko Oka R: Hideo Nakajima
The Chick Corea Akoustic Band with John Patitucci and Dave Weckl
チック・コリア・アコースティック・バンド with ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル
2019年8月31日(土) 19:50 NHKホール
Chick Corea(p) チック・コリア
John Patitucci(b) ジョン・パティトゥッチ
Dave Weckl(ds) デイヴ・ウェックル
1. On Green Dolphin Street
2. Japanese Waltz
3. That Old Feeling
4. In a Sentimental Mood
5. Life Line
6. Scarlatti Prelude
7. You and the Night and the Music
EC. Spain
L: Rieko Oka R: Hideo Nakajima
L: Rieko Oka R: Hideo Nakajima
The Chick Corea Elektric Band with Frank Gambale, Eric Marienthal,John Patitucci and Dave Weckl
チック・コリア・エレクトリック・バンド withフランク・ギャンバレ、エリック・マリエンサル、ジョン・パティトゥッチ and デイヴ・ウェックル
2019年9月1日(日) 19:50 NHKホール
Chick Corea(p) チック・コリア
Frank Gambale(g) フランク・ギャンバレ
Eric Marienthal(sax) エリック・マリエンサル
John Patitucci(b) ジョン・パティトゥッチ
Dave Weckl(ds) デイヴ・ウェックル
1. Charged Particles
2. Trance Dance
3. CTA
4. Alan Corday
5. Silver Temple
EC. Got A Match?
チック・コリアは1941年マサチューセッツ・チェルシー生まれの78歳、1940年代出まれの巨匠の中で最もアクティヴに演奏・創作を続ける。今回は、ジョン・パティトゥッチ、デイヴ・ウェックル、フランク・ギャンバレとエリック・マリエンサルによるチック・コリア・エレクトリック・バンド、それから派生したトリオ、アコースティック・バンドが日を替えての出演。2017年に同メンバーのエレクトリック・バンドで来日しているが、一度の来日で両バンドを演奏するのは27年ぶりという。今回の来日では、8月28日にビルボードライブ大阪で、アコースティックバンドのライブを行った。
最も多くの日本人に記憶されたチックのバンドは何かと考えてみる。1972〜77がリターン・トゥ・フォーエバー(RTF)、1985〜93年にエレクトリックバンド、1987〜1992年にアコースティックバンドとなっていて、圧倒的な人気を確立した頃の長い期間であったことで、チック・コリア=エレクトリックバンドと認識するファンは多そうだし、2016年のブルーノート・ニューヨークでのレジデンスシリーズでも、エレクトリックバンドが冒頭を飾った。それだけに客席の熱狂は異常とも言えるほどだった。
●チック・コリア・アコースティック・バンド
土曜の最後のセットとなったチック・コリア・アコースティック・バンドのライブでは、まず直前のセットに出演し、オリジンやニュートリオでも演奏を共にしてきたアヴィシャイ・コーエンとそのトリオへの賞賛を告げた後、マイルス・デイヴィスに捧げる<On Green Dolphin Street>から。ピアノソロのイントロから、ジョンとデイヴならではの軽快なフォービートが走り出し、自由な演奏が繰り広げられる。最後はデイヴのダイナミックなドラムソロへ。アコースティック・バンドは、昔のプロジェクトというより、最前線を別々に走ってきた名手3人のそのままのインタープレイだ。とはいえ、ただのセッションで終わる訳はなく、チックの巧みなリハーモナイズによって広がって行く世界観に、たとえば、<In a Sentimental Mood>では、透明感のある水面の反映を思わせるようなピアノソロイントロから。テーマやソロパートではしっかり巧みに打ち込んで来るピアノとベースの決めフレーズなど、さすがチックの音楽であり、この3人のグルーヴはあくまでもオンリーワンだ。
「ずっと以前に、クリスマスの時期に家族で6週間を京都で過ごしました。おそらく、私が人生でとった唯一のバケーションです。そのときに書いた曲を聴いてください。Japanese Waltzです。」 デイヴの手数の多く力強いブラシプレイ。ジョンの粘りのあるベース、少しだけエディ・ゴメス、スティーヴ・ガッドを彷彿するところもある。実際、他のライヴでは<Hampty Dumpty>なども演奏されている。
『The Chick Corea New Trio』でアヴィシャイとともに録音された<Life Line>。ピアノの内部奏法も交えながら、ドミニコ・スカルラッティの<前奏曲>に<You and the Night and the Music>を重ねた演奏で締め括る。そして、最後は期待を裏切らず、アンコールは<Spain>。例によって<アランフェス協奏曲>第2楽章のモチーフをピアノソロで弾き始め、そして後半はチックの弾き出すフレーズに会わせて会場中で歌うあれだ。最後の最後はアランフェスのフレーズを全員で歌って終わった。
●チック・コリア・エレクトリック・バンド
日曜夜、つまり、2019年の東京JAZZの最後を飾るのが、チック・コリア・エレクトリック・バンド。ステージに登場するだけで興奮と大きな拍手に包まれる。「いつもは2時間以上コンサートをするからたくさんの曲を演奏できるけど、今回は1時間だからどの曲を演奏しないかを決めるのがたいへんでした。」と素晴らし過ぎるメロディメーカーだからこその悩みを語る。
『Beaneth the Mask』から<Charged Particle>。オープニングにふさわしい明るい曲調だが、演奏の難易度は高そう。『The Eyes of Beholder』から<Trance Dance>も、ミドルテンポからのユニゾン感が楽しいが、曲中はアコースティックピアノとガットギターを立てながらのメランコリックな表情を魅せる。ジミー・ヒース作の<CTA>。CTAとは、シカゴ・オヘア空港からダウンタウンに向かったり、「ループ」をまわるあの地下鉄的なシカゴの鉄道システムだ。スイング感溢れながら、ジョン&デイヴだからの強力なドライヴ感。エリックとフランクのスピード感のあるソロ。
「1980年代に、妻と子供たちと6週間を京都で過ごしました。おそらく、私の人生唯一のバケーションです。」と昨日と同じ話が出てきて、、、お、来た<Siver Temple>、銀閣寺の印象で書かれた曲、1983年頃に百万遍界隈にいたらしく、確かに銀閣寺に近く、42歳のチックと家族の美しい思い出を象徴する曲に違いない。筆者もジャズ研で演奏したこともあり、エレクトリックバンドで最も好きな1曲で、演奏されて本当に嬉しかった。前夜アコースティックバンドで演奏された<Japanese Waltz>と<Siver Temple>は、じっくり聴いてみると、コード進行や節回しに共通点が多く、遠縁の姉妹曲のようで、京都の印象の一貫性があるようだ・<Silver Temple>同様ファーストアルバムに収められているが、エレクトリック・バンドの中で最も人気がある<Got A Match?>をアンコールに。そうなると、ショルダーキーボード YAMAHA KX-5 を持ってフロントに加わり、嫌が応にも盛り上がる。マイナーブルースのコード進行での熱いソロの応酬を聴かせて、サウンドでもヴィジュアルでも最高の盛り上がりのうちに、秋の東京JAZZ終えた。
Japanese Waltz – Chick Corea Livestream Highlights 2020
Behind the Scenes: Chick and The Elektric Band Rehearsing “Got a Match?” – August 2019
Silver Temple – Chick Corea Elektric Band LIVE 1986
Chick Corea Elektric Band – City Gate & Rumble
Live Under The Sky ’86
●東京JAZZ 2020は、5月渋谷で開催
スクリーン上には「2020年5月渋谷で開催」との発表が。「GWのラ・フォル・ジュルネTOKYOと対決か!?」と冗談を言いつつ、実際はNHK放送センター建て直しとNHKホール耐震工事のためらしく、NHK交響楽団も2020年9月より、NHKホール公演を池袋・東京芸術劇場に移すことも10月に発表された。「東京JAZZ 2019」ホール公演の全セットリストと放送予定はこちらをご参照いただきたい。ホール公演は各2グループで構成され、以前の3グループ、計15グループの時代に比べるとフェスティバルというには広がりが弱い感じが否めない。それでも公園通りから代々木公園に抜ける通路での「The Plaza」でのラインナップもよく、その狭さと内容の事前告知不足は今後の課題ではないかと思う。20回、30回に向けて持続性のあるイベントを期待して行きたい。
●東京JAZZ 2019 放送予定
第1夜 10月12日(土) 深夜25:15〜26:44 NHK-BSプレミアム
第2夜 10月19日(土) 深夜25:15〜26:44 NHK-BSプレミアム
第3夜 10月26日(土) 深夜25:15〜26:44 NHK-BSプレミアム