#1127 ラ・フォル・ジュルネ 2020 ― ベートーヴェン〜ナントのレポートと東京の今後

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Marc Roger and Hideo Kanno

ラ・フォル・ジュルネ・ド・ナント 2020 ― ベートーヴェン
La Folle Journée de Nantes 2020 – Beehoven

2020年1月29日〜2月2日 (5日間)
Cité des Congrès de Nantes(ナント国際会議場)、CIC Ouest、Lieu Unique

1995年フランスの港町ナントで、ルネ・マルタンの発案で始まった「ラ・フォル・ジュルネ」=”熱狂の日”クラシック音楽祭。2020年のテーマは、生誕250周年を迎えるベートーヴェン(1770-1827)で、本家フランス・ナントで成功裡に閉幕した。16回目となる「ラ・フォル・ジュルネTOKYO」は新型コロナウイルスCOVID-19感染拡大の影響のため中止となり寂しいGWとなったが、このナントのコンサートレポートに関連の演奏動画を付けたので、開催をイメージしながら少しでもお楽しみいただければ幸いだ。
※曲目はプログラム記載のものに従い、変更やアンコールには必ずしも対応していないことをご了承いただきたい。

ナントでは、有料公演数271、アーティスト数1,800、有料座席数144,195席に対して、140,050席を販売した(販売率 97%)。これは東京とほぼ同規模で5日間にわたり、フランスの地方都市であること、最大のハコ”Salle 2000″が2,000人とホールAの40%であることを考えると相対的にはかなり大きい。多数の児童・生徒を招きながら、地元と密着したより濃いイベントでもある。2021年ナントのテーマは、「ロシア音楽の誕生」(チャイコフスキーまで)と発表された。2021年東京についてKAJIMOTOの梶本眞秀社長は、COVID-19が終息し開催が可能となった場合には、「ベートーヴェン」で再挑戦したいと意欲を表明している。


Photos: ©Marc Roger
●ルネ・マルタン、LFJアーティスティック・ディレクターからのメッセージ
2020年のラ・フォル・ジュルネでは、偉大なる作曲家ベートーヴェンの生誕250周年を記念して、交響曲やピアノ協奏曲、ピアノ三重奏曲、ピアノソナタなど傑作の数々をお届けします。また、彼の知られざる作品や、ジャズや電子音楽も含めた19~20世紀の作曲家たちによるベートーヴェンへのオマージュ作品など、ラ・フォル・ジュルネならではの独創的なプログラムの数々もご紹介します。ベートーヴェンの作品はヒューマニズムにあふれ、人類愛と思いやりを今もなお人々の心に届けるという意味においても、音楽史上唯一無二の存在です。ベートーヴェン自身、彼の音楽の目指すところを、このように記していたではないでしょうか。

「心より出で、願わくば再び心に至らんことを」 -「ミサ・ソレムニス」楽譜に添えられた言葉より

Photos: ©Marc Roger

●日本の新星たちの活躍〜藤田真央、辻 彩奈、水野蒼生
N°112 1/31 16:00 Salle 150
Mao Fujita 藤田真央 piano

モーツァルト:ピアノ・ソナタ第12番ヘ長調 K332
ベートーヴェン:ロンド・ア・カプリッチョ「なくした小銭への怒り」op.129
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第8番 ハ短調 op.13 「悲愴」
Mozart : Sonate n°12 en fa majeur K. 332
Beethoven : Rondo a capriccio (“Le groschen perdu”) en sol majeur opus 129
Beethoven : Sonate n°8 en ut mineur opus 13 “Pathétique”

Photos: © Hideo Kanno

N°081 1/31 19:45 Salle 800
Nikita Boriso-Glebsky ニキータ・ボリソグレブスキー violin
Alexander Kniazev アレクサンドル・クニャーゼフ cello
藤田真央 Mao Fujita piano
Sinfonia Varsovia シンフォニア・ヴァルソヴィア
Mihhail Gerts ミハイル・ゲルツ conductor

ベートーヴェン:ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調 WoO6
ベートーヴェン:ピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲 ハ長調 op.56
Beethoven : Rondo pour piano et orchestre en si bémol majeur WoO 6
Beethoven : Triple Concerto pour piano, violon et violoncelle en ut majeur opus 56




Photos: © Hideo Kanno

藤田真央は1998年、東京生まれ。2019年6月にチャイコフスキー国際コンクール ピアノ部門で2位に、ネット配信で世界的に関心を集めた。LFJの時点では東京音楽大学の4年生で3月に卒業。2020年、出光音楽賞を受賞。映画『蜜蜂と遠雷』で風間塵のピアノを担当し、素晴らしい音を聴かせてくれて、個人的にはバルトークの<ピアノ協奏曲第3番>で強い印象を受けた。今回がLFJ初出演、いきなりナントからとなる。
終始柔らかい笑顔を絶やさず、気負わず純粋で音楽の喜びに溢れた演奏に惹き付けられる。ダイナミックレンジが広く、音量コントロールに優れていることに驚かされた、無意識ではあると思うが的確な音量にぴったりあてて来る、それがナチュラルな表現につながる。
ピアノ・ソロ・プログラムでは、思わずモーツァルトが聴けたのも嬉しかった。というのは藤田が最も好きという作曲家だから。前述のようにベートーヴェンのソナタで素晴らしい演奏を披露し、スタンディングオベーションとなった。
<ピアノと管弦楽のためのロンド 変ロ長調>では、藤田ならではの伸びやかで華やかで、オーケストラと美しく響きあう演奏に魅せられた。<ピアノ・ヴァイオリン・チェロのための三重協奏曲>は藤田が演奏したかった曲といい、1961年生まれのアレクサンドル・クニャーゼフ、1985年生まれのニキータ・ボリソグレブスキーと世代を跨ぎ、藤田は気遣いを見せながらも3者は対等に演奏し、3人の美しいうたが絡み合い溶け合いながら、ときに美しく、ときにダイナミックにオーケストラとともに壮大な響きを産み出していた。ニキータとアレクサンドルはもともと共演が多く、ボリス・ベレゾフスキ-とのトリオもよく演奏し、最高の演奏を紡ぎ出すユニットだ。藤田もその中で笑顔とともに最高の演奏で響き合い、スタンディングオベーションに。翌日、次の公演地ミュンヘンへ向かった。この他、ディアナ・ティシチェンコ(vn)と<ヴァイオリン・ソナタ第5番「春」>と<第7番>も演奏した(N°041 1/30 17:45 Salle 450)。

藤田真央 ピアノ・ソロ・リサイタル:モーツァルト〜第1回ザリャジエ国際フェスティバル(2019.10.31)

N°172 2/1 21:00 Salle 300
辻 彩奈 Ayana Tsuji violin
Emmanuel Strosser エマニュエル・シュトロッセ piano

ベートーヴェン:ヴァイオリンのためのロマンス第2番 ヘ長調 op.50
ベートーヴェン:ヴァイオリンのためのロマンス第1番 ト長調 op.40
ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第7番 ハ短調 op.30-2
Beethoven : Romance pour violon n°2 en fa majeur opus 50
Beethoven : Romance pour violon n°1 en sol majeur opus 40
Beethoven : Sonate pour violon et piano n°7 en ut mineur opus 30 n°2


Photos: © Hideo Kanno

N°225 2/2 18:15 Salle 800
辻 彩奈 Ayana Tsuji violin
Concerto Budapest コンチェルト・ブタペスト
András Keller アンドラーシュ・ケラー Conductor

ベートーヴェン:ヴァイオリン協奏曲ニ長調 op.61
Beethoven : Concerto pour violon et orchestre en ré majeur opus 61


Photos: © Hideo Kanno

辻 彩奈は岐阜県出身、2016年モントリオール国際音楽コンクール第1位、出光音楽賞受賞。LFJの時点で東京音楽大学4年生だったが、3月、卒業生総代として卒業式に臨んだ。辻も藤田もすでに海外でのプロ活動も多いため時間の制約があり、学業を修了するのもたいへんだったと思う。心から「卒業おめでとう」を申し上げたい。
辻のヴァイオリンで驚かされるのは、その音色の表現の豊かさ、非常に繊細な要素が見え隠れしながらその組み合わせの中で鮮やかな表現が浮かび上がって来ることだ。と、言葉では表現できないのでぜひ辻のヴァイオリンを聴いて欲しい。辻とエマニュエル・シュトロッセとのデュオでは、濃密でありながら爽やかで鮮やかなやりとりが見事だった。
ヴァイオリン協奏曲では、特に高音域での特徴のある音色に圧倒された。線のかすれるような音の要素を絶妙に含めながら線の細さと太さを併せ持ち、切なさも感じさせる素晴らしい”こえ”だった。カデンツァは非常に聴き応えがあり、もはやひとつの曲にもなりうる密度の高いものだったが、これはロンドンにいる藤倉大から送られて来たものだった。観客は鳴り止まない拍手とスタディングオベーションで賞賛を送っていた。すでに海外での演奏も多く、パリをひとつの拠点とするようだが、今後の飛躍に期待は高まるばかりだ。

辻 彩奈 & エマニュエル・シュトロッセ〜ヴァイオリンのためのロマンス第1番 ト長調 op.40

1/29-2/3 Grande Halle – Kiosque
Aoi Mizuno 水野蒼生, DJ


Photos: ©Hideo Kanno

Photos: ©Marc Roger
ナント国際会議場では、ほとんどの会場に行くためにキオスクホールを必ず通る構造になっていて、常に無料コンサートが開催され、お祭りの中心という感覚で、東京では地下ホールEにキオスクステージがあるが、こちらは観たい人が足を運ぶので雰囲気は異なる。1月30日(木)〜2月1日(土)22:30からと、2月2日(日)20:30からと毎日の締めを任されていたのが、DJ Aoi Mizunoこと、水野蒼生、指揮者/クラシカルDJ。1994年生まれでザルツブルグ・モーツァルテウム大学オーケストラ指揮及び合唱指揮の両専攻を首席で卒業後、現在は日本を拠点に。ドイツ・グラモフォンから史上初のクラシック・ミックスアルバム「MILLENNIALS-We Will Classic You-」をリリースしてメジャーデビュー。LFJ TOKYO 2019では、地下ホールEで「フォル・ニュイ」のひとつとして出演した。既存の音源に、独自に企画収録した音源も積極的に加えながらベートーヴェンなどの名曲を見事に再構築して、コンサートから深夜に向かう興奮と安らぎの時間を演出する。「きらクラ!」にも出演し「LFJ TOKYO 2020」のアンバサダーに任命された ふかわりょうが、遠くからだがとても嬉しそうに満足そうに見ていたのが印象に残った。

水野蒼生/Beethoven Symphony No.5 1st Movement [Radio Edit] MV

ラ・フォル・ジュルネ TOKYO 2019『史上初のクラシカルDJ:LFJ feat. Aoi Mizuno -VOYAGE MIX-』

●ジャズ・プログラムなど

N°082 21:30 Salle 800
Joachim Horsley ヨアキム・ホースレイ piano
“Beethoven à La Havane”「ハバナのモーツァルト」

Photos: ©Marc Roger

ヨアキム・ホースレイはアメリカのピアニスト、映画音楽やテレビの作編曲でも活躍。ベートーヴェン<交響曲第7番>を編曲した動画がYouTubeで大ヒットして以来、大作曲家たちの作品をラテン音楽と様々に融合させる試みで人気となっている。LFJには、ピアノ、ベース、ドラムス、パーカッションのカルテットで登場、ベートーヴェンのメロディーをキューバのグルーヴに乗せて演奏し、ピアノをパーカッシヴに弾きながら、ときには3人でピアノを叩きながら演奏し、会場を沸かせていた。

Joachim Horsley – Beethoven In Havana (7th Symphony, 2nd Movement Rumba)

Joachim Horsley – Beethoven’s Cuban Concertino (Piano Concerto No.5, 2nd Movment, Cuban Style)

N°138 22:15 Grand Atelier-Lu Unique
Paul Lay ポール・レイ piano
Olivier Garouste オリヴィエ・ガロステ vidéo
“Beethoven at Night”


Photos: ©Hideo Kanno
フランスのジャズピアニスト、ポール・レイは、LFJ TOKYO 2018に『チャップリンの移民』に音楽を付けるプログラムで来日していた。今回は、ビデオ作家のオリヴィエ・ガロステの映像とともに、ベートーヴェンの音楽にジャズ、ブルースを織りまぜながら即興の旅に出た。Lu Uniqueは国際会議場から少し離れた「LU」の元ビスケット工場を改装し、壁には”風呂敷”的な布を貼った不思議な大きなハコだが、ジャズのピアノソロとして第一級の素晴らしい演奏を楽しみながら、映像がイメージを脹らませてくれる気持ちのよいプログラムとなった。

Paul Lay & Olivier Garouste / Billy Holiday Cine-Concert

N°075 1/31 Salle 800
VOCES 8
James sherlock ジェームズ・シャーロック piano
天才作曲家が遺したもの ベートーヴェン250

ベートーヴェン:合唱幻想曲 ハ短調 op.80から フィナーレ
ベートーヴェン:悲歌 op.118
ベートーヴェン:カンタータ「静かな海と楽しい航海」 op.112
ベートーヴェン(パーシー編):12のスコットランドの歌 WoO156から ロッホナガー
ベートーヴェン:25のアイルランドの歌 WoO152から さらば幸せよ、さらばナンシーよ
ベートーヴェン:みどり児に寄す op.108
クレメンツ:Beethoven Re-arranged
“The Legacy of Genius : Beethoven 250”
Beethoven : Fantaisie pour piano, chœur et orchestre opus 80, finale
Beethoven : Elegischer Gesang opus 118
Beethoven : Meeresstille und glückliche Fahrt opus 112
Beethoven/Pacey : Lochnagar WoO 156
Beethoven : Farewell bliss WoO 152
Beethoven : Enchantress farewell opus 108
Clements : Beethoven rearranged

Photos: ©Marc Roger

VOCES 8 / 天才作曲家が遺したもの ベートーヴェン250

1/29-2/3 Grande Halle – Kiosque
Renegades steel Orchestra レネガデス・スティール・オーケストラ


Photos: ©Marc Roger

Renegades Steel Orchestra – “Ode à la joie” (Symphony No.9) (Facebook動画)

●ピアノを中心に

N°155 2/1 9h15 Sell 450
Luis Fernando Pérez  ルイス・フェルナンド・ペレス piano

ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2「テンペスト」
ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 作品27-2「月光」
Beethoven : Sonate n°17 en ré mineur 10 opus 31 n°2 “La Tempête”
Beethoven : Sonate n°14 en ut dièse mineur opus 27 n°2 “Clair de lune”

Photos: ©Hideo Kanno
スペインのピアニスト、ルイス・フェルナンド・ペレスは、LFJ2018-2019でアルベニス<イベリア>で最高の演奏を楽しませてくれた。ベートーヴェンのピアノソナタでは、深く重みのある音色でじっくりと聴かせてくれ、痛みと切なさ、その先の希望を感じる素晴らしい演奏だった。COVID-19を巡ってはスペインは非常に多くの感染者を出し心配していたが、最近も自宅からヴァーチャルコンサートを行っていて安心している。

Beethoven Piano Concerto No.1 2nd movement
Luis Fernando Pérez, piano, Franz List Chamber Orchestra on October 20, 2012

Luis Fernando Pérez Virtual Concert (2020.4.26)

N°157 2/1 12:30 Salle 450
Claire Désert クレール・デゼール piano
広瀬悦子 Etsuko Hirose piano
Lidija Bizjak リディア・ビジャーク piano
Sanja Bizjak サンヤ・ビジャーク piano

エッセール:2台ピアノ・8手のためのベートーヴェンの交響曲9曲による変奏曲
サン=サーンス:2台ピアノ・8手のためのベートーヴェンの交響曲第3番 変ホ長調「英雄」op.55の主題によるスケルッツォとフィナーレ
Heisser : Variations sur les neuf Symphonies de Beethoven pour deux pianos et huit mains
saint-saëns : Scherzo et Finale de la Symphonie n°3 en mi bémol majeur opus 55 “Héroïque” pour deux pianos et huit mains


Photos: ©Hideo Kanno
今回のテーマ「ベートーヴェン」のひとつのフォーカスは、「編曲」にある。特に交響曲などを室内楽編成から、ピアノ2台などミニマムな編成への編曲は多く、同時代から始められ、本人によるもの、友人によるもの、後世のものなどがある。このプログラムでは、エッセールとサン=サーンスによる交響曲第9番「合唱付き」と第3番「英雄」から拡張された2台のピアノ版に取り組んだ。日本から広瀬悦子、フランスからクレール・デゼール、ロシアからリディア&サンヤ・ビジャーク。この「第九」はLFJ TOKYOの5月1日の前夜祭でもクレールと広瀬を含めて演奏される予定となっていた。広瀬は別公演、カルクブレンナー編曲の交響曲第9番の合唱とピアノ版を演奏して喝采を浴びた。オーケストラすべてをピアノで請負い、合唱と向き合う超絶な演奏になる。

ベートーヴェン:交響曲第9番 第2楽章より クレール・デゼール&フローラン・ボファール

Etsuko Hirose – Beethoven/Liszt : Symphony no.5 -Allegro con brio

N°196 2/1 20:30 Salle 80
Marie-ange Nguci マリー=アンジュ・グッチ piano

ベートーヴェン: ピアノソナタ第25番 ト長調 op.79
ベファ:ベートーヴェンへのオマージュ (ピアノソナタ第25番 ト長調 op.79より)
ベートーヴェン/リスト:交響曲第7番 イ長調 op.92
シューマン:ベートーヴェンの主題による自由な変奏形式の練習曲
Beethoven : Sonate pour piano n°25 en sol majeur opus 79 “Alla tedesca”
Beffa : Hommage à Beethoven (création d’après la Sonate n°25 de Beethoven)
Beethoven/Liszt : Symphonie n°7 en la majeur opus 92, 2ème mouvement
Schumann : Études en forme de variations libres sur un thème de Beethoven

Photos: ©Hideo Kanno
1997年、アルバニア生まれ、13歳でパリ国立高等音楽院に飛び級で入学、16歳でピアノ演奏の修士号を取得し、後にソルボンヌでも学ぶなど早熟で好奇心と探究心に溢れたピアニスト、マリー=アンジュ・グッチによるピアノソナタと、交響曲ピアノ版、オマージュ作品のプログラム。シューマンはベートーヴェンの熱狂的ファンであり、交響曲第7番のアレグレットをテーマにした一連のバリエーションを作曲した。

Chopin – Concerto n°1 op.11 – Marie-Ange Nguci, Benjamin Levy, Orchestre Pelleas

N°200 2/1 13:30 Salle CIC Ouest
Anne Queffélec アンヌ・ケフェレック piano

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 op.27-2「月光」
ベートーヴェン:ピアノソナタ第21番 ハ長調 op.53「ヴァルトシュタイン」
Beethoven : Sonate n°14 en ut dièse mineur opus 27 n°2 “Clair de lune”
Beethoven : Sonate n°21 en ut majeur opus 53 “Waldstein”

Photos: ©Hideo Kanno
LFJ TOKYOでも常連で、熟練ながら輝きと深みのあるピアノ演奏で惹き付けてやまないアンヌ・ケフェレック。個人的にはフランスものが好きで、最近ではヘンデルやスカルラッティ、バッハなどの演奏の機会も多かったが、ベートーヴェンでもじっくりと作曲者の心に迫る演奏を聴かせてくれた。

ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第14番嬰ハ短調 op.27「月光」

ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第4番 第1楽章 (1992)

Masterclass “Lettre à Elise” Beethoven – Anne Queffélec

N°159 2/1 15:45 Salle 450
Aurélien Pascal オーレリアン・パスカル cello
Anne Queffélec アンヌ・ケフェレック piano

Quintette Moragues モラゲス五重奏団
ベートーヴェン :ピアノ、チェロ、ヴァイオリンのための三重奏曲第4番 変ロ長調 「街の歌」 Op.11
ベートーヴェン: ピアノと管楽のための五重奏曲 変ホ長調 作品16
Beethoven : Trio n°4 pour clarinette, violoncelle et piano en si bémol majeur opus 11
Beethoven : Quintette pour piano et vents en mi bémol majeur opus 16

Photos: ©Hideo Kanno

ベートーヴェン: モーツァルトの「魔笛」から「恋を知る殿方には」の主題による7の変奏曲 WoO 46 変ホ長調
オーレリアン・パスカル&ナタナエル・グーアン

TRIO PASCAL – Alexandre, Aurélien et Denis Pascal – concert Salle Gaveau, Janvier 2020

Moraguès Woodwind Quintet – W. A. Mozart: Quintet in E-flat Major, K. 458

●医療従事者によるオーケストラ
European Doctors Orchestra ヨーロピアン・ドクターズ・オーケストラ
Fayçal Karoui フェイサル・カルイ conductor
Dmitri Makhtin ドミトリ・マフチン violin
ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス第2番 ヘ長調 op.50
ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 「運命」 op.67
Beethoven : Romance pour violon et orchestre n°2 en fa majeur opus 50
Beethoven : Symphonie n°5 en ut mineur opus 67


Photos: ©Marc Roger
最後に触れておきたいのはヨーロッパ・ドクターズ・オーケストラ(EDO)、文字通り、ヨーロッパ内の現役医師が集まって演奏している。最低年2回のチャリティーコンサートを行い、LFJにも定期的に出演しており、今回は、フェイサル・カルイ指揮、ドミトリ・マフチンのヴァイオリンで、最大のホール”Salle 2000″で公演を行った。この公演のわずか1ヵ月後には、ヨーロッパ全体の状況が「運命」的に一変し、参加した医師たちは、この楽器を持っていたその手で、(COVID-19担当かどうかを問わず)その最前線に立ち向かうこととなった。LFJがまた開催される際には、日本でもこういった医療従事者との接点を模索してもよいかも知れない。EDOメンバーのご活躍と安全を心からお祈りしたい。

●LFJ TOKYOで予定されていた企画から

「みんなで第九」
2020年LFJ TOKYOの締めはホールAにおいて、井上道義指揮で、客席から第九の大合唱をすることになっており、事前練習、ワークショップも予定されていて、その準備をされた方々にも頭が下がる。実は「みんなで第九」は2014年に地上広場ですでに行われているので、その動画を振り返ってみたい。

芳垣安洋 Orquesta Nudge! Nudge!
2018年、2019年とLFJ TOKYOに出演していたパーカッションアンサンブル「オルケスタ・ナッジ!ナッジ!」は、2020年も出演を予定していた。芳垣安洋のハンドサインによる即興でグルーヴを叩き出す。ホールでの公演は精鋭のプロ打楽器奏者を中心に、地下ホールEのキオスクステージでは、一般のワークショップメンバーも(筆者も)参加しながら会場を巻き込んでいた。2019年の動画を載せておきたい。
同様に、DJ水野蒼生もキオスクコンサートが予定されていたようで、記事冒頭の2019年の動画を参照されたい。

●いま、ベートーヴェンの「編曲」が持つ意味
正直、突き詰めるとベートーヴェンのオリジナルの完成度の前に、編曲や企画ものにそこまで及ばない感は、ときに否めないのだが、そもそも、ベートーヴェン作品は完璧に見えるし、そしてベートーヴェン自身は編曲されるのは好まないのではないかという先入観を持っていて、その質問をアーティスティック・ディレクターのルネ・マルタンにぶつけてみた。
ルネによると、ベートーヴェンの時代においては、たとえば交響曲などの編成の大きい作品が発表されると、まもなく、室内楽やピアノ独奏などにスケールダウンして、ウィーン市内のあちこちのサロンでリアルタイムで演奏されていたというのが背景にあり、編曲はその意味で当然の流れだったとのことだ。もちろんそれは録音媒体がなく楽譜が媒体となり、ミニマムな演奏ユニットを必要としたことになる。
この話は、あわせて生まれたばかりの曲が街のあちこちですぐに演奏されるという状況も羨ましい。最近の日本では作曲して100年経たないとクラシック音楽ではないという感覚になりつつある気がする。同時代の音楽として復権もベートーヴェンから学びたい。
今回のCOVID-19感染予防対策でも、ライブ、コンサートの感染リスクに注目が集まってしまった。ジャズクラブ規模もさておき、大ホールでの公演がいつどういう形で可能になるかは予断を許さないところだ。その中で、そもそも、クラシックは、ホールに大人数が集まって演奏を聴くのが当たり前ではなく、小会場のオプションももっと活用、評価されてもよいのではと思われた。

なお、エンターテイメントの今後はこれからの模索になるが、LFJを巡ってひとつの検討課題としてあるのは、どうしてもヨーロッパから演奏者をそっくり持ってくる形、つまり特定地域の比重が高い場合、その地域の危機に対して招聘上のリスクが高まる。日本のアーティストの割合も拡大しながら、アジア、アメリカの割合を増やすオプションもあるのかも知れない。国内オーケストラの条件についての事情もあれば、また、それを言えば、ジャズ・フェスティバルにおけるアメリカ偏重も同じになり、もろもろ事情は簡単ではないのだが。

●感謝を込めて
ルネ・マルタン・アーティスティック・ディレクター、梶本眞秀社長を筆頭に、CREA、株式会社KAJIMOTO、株式会社東京国際フォーラム、三菱地所株式会社をはじめたくさんの方々が、LFJ TOKYOの準備に楽しく真剣に独創的に取り組まれてきた、ナントでも日本からのスタッフの活躍をお見かけした。そして、出演予定アーティストも公演に向けて魂を込めて準備されてきた。その熱意と努力、時間と労力に心から感謝したい。2021年開催への道のりは容易ではないが、音楽・文化を取り巻くさまざまな問題の検討・解決と併せて、ファンが持っていたエネルギー、15年におよぶ感動の集積を大切にしながら、音楽の未来につないで行けたらと思う。

●ルネ・マルタンからのメッセージ

神野秀雄

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。東京JAZZ 2014で、マイク・スターン、ランディ・ブレッカーとの”共演”を果たしたらしい。

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