JazzTokyo

Jazz and Far Beyond

閲覧回数 56,165 回

Concerts/Live ShowsNo. 271

#1151 KHAMSIN〜古谷光広、清野拓巳、柳原由佳、白石宣政、松田広士

Text & photo by Hideo Kanno 神野秀雄

KHAMSIN
2020年10月18日(日) Jazz & Live Born Free (神戸市東灘区)
古谷光広 Mitsuhiro Furuya (Tenor Sax)
清野拓巳 Takumi Seino (Guitar)
柳原由佳 Yuka Yanagihara (Piano)
白石宣政 Nobumasa Shirai (Bass)
松田”GORI”広士 Hiroshi ”GORI” Matsuda (Drums)

1. Blue Black – unchanged (清野)
2. Penglai Garden(蓬莱の庭) (古谷)
3. January Notes (清野)
4. Flow (白石)
5. S.E.T.I. (古谷)

6. Song for My Mother (古谷)
7. Precise Rewind (清野)
8. Melancholia (柳原)
9. Asuka (古谷)
10. Intelsat 45 (清野)

11. The Way in the Heart (古谷)

「高槻ジャズストリート」がCOVID-19で中止になった2020年、関西ジャズ界のレジェンドの1人であるサックスとヴォーカルの古谷 充(ふるや たかし、1936年2月13日〜2020年9月2日)が亡くなった。小曽根実(1934〜2018年)、北野タダオ(1934〜2018年)と同世代にあたる。「食の文化祭〜高槻ジャズとグルメフェア」(パンフPDF)では、10月18日(日)15時から野外ステージで「古谷 充とザ・フレッシュメン」が名義をそのままに出演、長男の古谷光広がアルトサックスを吹き、大塚善章らとともにが、このイベントへの出演を楽しみにしていた父に捧げながら熱い演奏を繰り広げ、会場を楽しませた。古谷の家族も会場に来ていた。

古谷光広は、1973年大阪生まれ、高校時代から立命館大学のビッグバンドに参加、大阪音楽大学短期大学部でジャズサックスを学び、「EWI」(ウインド・シンセサイザー)プレイヤーでもあり、甲陽音楽学院と大阪音楽大学で講師も務める。

1996年に古谷が、中学高校の先輩であり、別のバンドで共演していた松田”GORI”広士から「年上の者とバンドを組んだらどうか」という勧めがあり、古谷は松田に「ギターを連れて来て欲しい」と頼む。そこで松田がバークリー音楽大学を卒業し帰国したばかりの清野拓巳を連れてきた。そして結成したフュージョン・グループが「KHAMSIN(カムシン)」だった。その名前は、北アフリカやアラビア半島で吹く、砂塵を含んだ乾いた熱風のことで、また、「見えざるもの」の神の名前でもあるという。1998年に1stアルバム『KHAMSIN』をリリース、そして休止し、松田は渡米して活躍するようになった。

2016年より、新たなメンバー柳原由佳(p)、白石宣政(b)を加えて新生「KHAMSIN」として活動を再開した。2018年に新メンバーでライヴ盤『Blue Hour』をリリースしている。2020年1月の公演の後、COVID-19で休止を余儀なくされたが、2020年7月よりライヴを再開し、関西地区の各都市で公演を行っている。

前もって演奏動画などをチェックすることなく先入観なしで聴いた。メンバーの中では、ピアノの柳原由佳は月の半々、関東と関西でライブを積極的に行っているので東京でも聴く機会が多く、個人的には『柳原由佳トリオ/Inner Views』(2019年、+山田吉輝(b)、則武諒(ds))を高く評価し、バークリー音楽大学出身者が揃った、柳原由佳、伊東佑季、山本玲子とのユニット「te-te-Yuka」を「JAZZ TOKYO」の「このパフォーマンス(国内)2018」に選んだこともあり、それを通じてKHAMSINの演奏レベルの高さを期待してはいた。なお、柳原は関東への活動を増やしつつあるところで、実力の割に知名度や業界内での人脈はこれからというところで、今後の広がりに期待したいところだ。また、ギターの清野拓巳も関東での演奏も行って来たものの、2020年はあまりできていないので、2021年以降の関東での活躍も期待したい。

何よりオリジナル曲が素晴らしい。メンバーの真っ直ぐな人柄を反映してか奇を衒うことのない確かな”うた”とグルーヴを持つ曲の数々。COVID-19下も含めて、清野と古谷を中心に、メンバー全員それぞれがたくさんのオリジナルを書き溜めて来た。レパートリーが多過ぎてライブでの演奏曲を選ぶのが難しいという状況で、今回は約半分を『Blue Hour』から、あと半分をそれ以外からという構成になっていた。

日本のいわゆる”フュージョンバンド”では、どこかで聴いた、誰かに影響を受けたという感が出てしまうことは少なくはないが、KHAMSINにあっては、メンバーが自分の”声”を持っていて、バンドとしてもKHAMSINだけのサウンドを持っている。さらに強力なグルーヴを生み出すメンバーの力量もあって、独特の存在感を放っている。清野と柳原の色彩豊かな表現力、白石宣政のウッドベースとエレキベースを使い方分けての幅広い表現と確実なビート、そして古谷のサックスには不思議に引き込まれる魅力がある。

COVID-19が落ち着いたら、関東でのライヴも観たいし、たくさん溜まったオリジナル曲を取り上げながらのスタジオ録音盤も期待しながら、今後の活躍を楽しみにしたい。


「食の文化祭〜高槻ジャズとグルメフェア」
2020年10月18日(日) 高槻市立第一中学校グラウンド
「古谷 充とザ・フレッシュメン」

古谷光広 Mitshiro Furuya (Alto Sax)
大塚善章 Zenshow Otsuka (Piano)
ユン・ファソン Yoon Fasong (Trumpet)
魚谷のぶまさ Nobumasa Uotani (Bass)
ボン・バロン Von Baron (Drums)
1 Stranger In Paradise
2 佐渡おけさ
3 Taboo
4 Soul No.1 (大塚善章オリジナル)
5 癋見悪尉 (大塚善章オリジナル)
大塚善章 アレンジ

『KHAMSIN / Blue Hours』 試聴

高槻ジャズストリート2019 Jack Daniel’s ステージ 2019年5月3日

Partial Eclipse

『柳原由佳トリオ / Inner Views』 試聴

古谷 充とザ・フレッシュメン
2020年7月4日 京都 Live Spot RAG ライブ配信

1st

2nd

【KHAMSIN 2020年 ライヴスケジュール】
1月25日(土) 吹田 LIVE BAR TAKE FIVE OSAKA
2月9日(日) 神戸 ビッグアップル
3月14日(土) 京都祇園 ボンズロザリー
3月15日(日) 徳島 ゴトーズバー
7月25日(土) 神戸 ビックアップル
8月29日(土) 吹田 TAKE FIVE OSAKA
10月18日(日) 神戸岡本 ボーンフリー
11月27日(金) 姫路 ライラ
11月28日(土) 神戸 ビックアップル
12月26日(土) 京都 ボンズロザリー

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください