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このパフォーマンス2015(国内編)Concerts/Live ShowsNo. 214

#869 このライブ/このコンサート2015国内編#06 『うたをさがして』

2015年11月22日 ギャラリー悠玄(東京・銀座)

齋藤徹 (b)
さとうじゅんこ (vo)
喜多直毅 (vl)

text and photos by Akira Saito 齊藤聡

2011年の震災のあと、齋藤徹は、被災地において人の心に届くものとして、歌と踊りとを見直したのだという。とくにこのトリオにおいては「ことば」。それは、テオ・アンゲロプロスの映画(トニーノ・グエッラの手による脚本)からインスパイアされた日本語詞であり、故・渡辺洋の詩であった。また、ガルシア・ロルカによるスペイン語の詩であり、アントニオ・カルロス・ジョビンのポルトガル語の歌曲であった。

さとうじゅんこが、ジョビンの歌を「カンタ、カンタ」と、「イマジーナ」と、歓喜をたたえて発するとき、また、渡辺洋の詩を想いを込めて「ねばりづよく」と発するとき、言語によらない「ことば」の力が満ちた。

喜多直毅のヴァイオリンの音はやはり素晴らしいものだった。湧き出て流れ出てくる人間の音に加え、まるで虫の声、風の音、さらには沖縄の指笛までも。

会場には、多くの作家による作品が展示してあった(『おしゃべりなArt展』)。面白いことに、途中で3人ともギャラリーを歩き回り、数々の作品に付せられたことばやそれにより想起したことばを交互に発し、ことばによる乱しと刺激とを与える時間があった。そして齋藤徹のベースが、場に絶えず振動を与えた。まるで、紙の上に置いた砂が振動によってことばを形成していくようなイメージを想起させた。

(文中敬称略)

齊藤聡

齊藤 聡(さいとうあきら) 著書に『新しい排出権』、『齋藤徹の芸術 コントラバスが描く運動体』、共著に『温室効果ガス削減と排出量取引』、『これでいいのか福島原発事故報道』、『阿部薫2020 僕の前に誰もいなかった』、『AA 五十年後のアルバート・アイラー』(細田成嗣編著)、『開かれた音楽のアンソロジー〜フリージャズ&フリーミュージック 1981~2000』、『高木元輝~フリージャズサックスのパイオニア』など。『JazzTokyo』、『ele-king』、『Voyage』、『New York City Jazz Records』、『Jazz Right Now』、『Taiwan Beats』などに寄稿。ブログ http://blog.goo.ne.jp/sightsong

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