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Concerts/Live ShowsNo. 289

#1208 塩谷 哲 スペシャルデュオ with 小沼ようすけ at ブルーノート東京

Text by Hideo Kanno 神野秀雄

塩谷 哲 Special Duo Live with 小沼ようすけ
Satoru Shionoya Special Duo Live with Yosuke Onuma

2022年4月8日(金) 18:00 ブルーノート東京 Blue Note Tokyo
塩谷 哲 Satoru Shionoya(piano)
小沼ようすけ Yosuke Onuma (guitar)
公演ウェブページはこちら

1. What Can We Do? (塩谷 哲)
2. Morning Bliss (塩谷 哲)
3. 88+∞ (塩谷 哲) (※Eighty-eight plus infinity)
4. Fly Way (小沼ようすけ)
5. Delicious Breeze (塩谷 哲)
6. Azumi (塩谷 哲)
7. Coffee Please (小沼ようすけ)
EC. Blue Bossa (Kenny Dorham)

塩谷 哲と小沼ゆうすけは強い信頼で結ばれ、共演の機会が非常に多く、大儀見 元を加えた「塩谷 哲スペシャルトリオ」、さらに東儀秀樹、古澤 巖、井上陽介を加えたスーパーユニット「Six Unlimited」でもツアーを共にしてきたが、デュオプロジェクトとしては2017年以来の5年ぶりとなる。今回は、4月8日〜9日のブルーノート東京、4月21日のBillboard Live OSAKA、4月23日の下関Jazz Club BILLIEの3箇所をめぐるツアーだった。

塩谷 哲は、1966年東京都出身で、作編曲家、ピアニスト、プロデューサーとしてジャズからJ-Popまで幅広く活躍している。14歳で作曲した<海溝 A Deep>がJOCで入賞し、久石譲編曲で吹奏楽の名曲のひとつとなる早熟さを見せ、東京藝術大学作曲科在学中に、オルケスタ・デ・ラ・ルスに参加、アメリカ・ラテンアメリカから評価を受けて、国連平和賞受賞、アカデミー賞ノミネートに。自身のバンド、ソロの他、佐藤竹善、小曽根真らとのコラボレーションでも新しい音を生み出してきた。この6年間はパペットバラエティ番組『コレナンデ商会』(NHK Eテレ 平日07:20-30)の音楽担当に全力投球し、2022年3月31日に惜しまれながら放送を終了した。

ギタリストの小沼ようすけは、1974年秋田県出身。さまざまな国を旅して得た経験を取り入れた音創りで、独自のジャズを追求し進化を続けてきた。2010年に発表した『Jam Ka』では、フレンチ・カリビアンの音楽家が持つグルーヴを現代ジャズに結びつけた独自の世界観を展開し、ヨーロッパやカリブ海の島々でも演奏活動を繰り広げてきた。

2021年の「塩谷 哲スペシャルトリオ」の記憶から陽気なフレンチ・カリビアンのノリを想像していたが、期待は気持ちよく裏切られた。沈黙が透けて見えるようなシンプルで透明な音色に研ぎ澄まされた響きのやりとり。1曲目に<What Can We Do?>その終盤からシームレスに<Morning Bliss>へと繋がるシーケンスが鳥肌ものだった。<What Can We Do?>はCOVID-19の厳しい状況を背景に作られた一曲だが、その未来への不安と希望はウクライナ侵攻に始まる世界の動きへも繋がる。<Morning Bliss>は、『塩谷哲トリオ/Eartheory』の1曲目、筆者の大好きな曲、”朝の至福”だから一見繋がらなさそうだが、やってみたら驚くほど繋がったらしい。ツアー後半ほど演奏の精度は上がるものの、最初のセットで”やってみたら凄いケミストリー”と言う瞬間を目撃できるのもすごく嬉しい。

続いて、<88+∞>(Eighty-Eight plus Infinity)のリズミカルな楽しいやりとり。小沼のオリジナル<Fly Way>は『Jam Ka』の録音と前後してセッション用に書かれた曲で、その後さまざまなミュージシャンとさまざまなフォーマットで演奏されてきただけに塩谷とのデュオにもぴったり来ていた。

<Delicious Breeze>は、”すっかり時間が経った新曲”で初出は2012年だったが未だ録音されていない。フォービートを基調にしたハッピーな一曲を二人が歌い上げる。2022年以降はアルバム制作にも力を入れたいという塩谷、アルバム収録へ期待が止まらない。

塩谷はMCで、ピアノとギターのコード楽器同士でのデュオは難しいし、同じコードが弾けるにしてもギターでなければ出せない表現が羨ましいと言う。その中で、6度でのフレーズはギターで弾くとかっこよくて、それを出したくて書いた曲だというのが<Azami>。もともとはギタリスト田中義人と共同プロデュースによる『Hand of Guido』に収められている。超個人的には、この日、東京大学理学部附属 小石川植物園に遅い桜を見に行きながら、薊(キク科アザミ属)を何故かじっくり見ていた後だったのでびっくり。その話を二人にしたところ、お二人とも小石川にちょっと縁があるということでもびっくり。ともあれ、アコースティック・ギターの6度のフレーズが美しく、そこにさりげなく入ってくる塩谷のピアノとの響き合いが美しい。

<Coffee Please>は小沼のオリジナルとして。カフェでなかなかコーヒーが来ないときに浮んだという曲だが、小沼オリジナルの中でも最もよく演奏される曲になったというから運命はわからないもの。そして、アンコールに<Blue Bossa>が演奏された。

なお、初日2ndのアンコールでは、小曽根真が加わり、Gotta Be Happy (小曽根真)が演奏されたことも付記しておきたい。

このデュオも自由で繊細で、どこまでも拡張されていきそうで、今後も定期的にライヴが開催されることを期待したい。

What Can We Do? (塩谷 哲)
塩谷 哲スペシャルトリオ with 小沼ようすけ & 大儀見 元

●ブルーノート東京 4公演 全セットリスト
2022年4月8日(金)
<1st> 18:00

1. What can we do?
2. Morning Bliss
3. 88+∞
4. Fly Way
5. Delicious Breeze
6. Azami
7. Coffee Please
EC. Blue Bossa

<2nd> 20:30
1. What can we do?
2. Morning Bliss
3. 88+∞
4. Dlo Pann
5. A Brand New Day
6. Azami
7. Coffee Please
EC1. Gatta Be Happy (w/Makoto Ozone)
EC2. Ode to Liberty

2022年4月9日(土)
<1st> 16:45

1. What can we do?
2. Morning Bliss
3. Delicious Breeze
4. Fly Way
5. Azami
6. fellows
7. Coffee Please
EC. Ladies in Mercedes

<2nd> 19:30
1. What can we do?
2. Morning Bliss
3. Delicious Breeze
4. Dlo Pann
5. Azami
6. fellows
7. Coffee Please
EC1. Ladies in Mercedes
EC2. Ode to Liberty

塩谷 哲トリオ with 井上陽介、山木秀夫

Yosuke Onuma / Ti Punch at Sunset, Paris

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小沼ようすけ 「Moai’s Tihai」from 『Jam Ka 2.5 Tokyo Session』

【塩谷 哲と小沼ようすけの寄稿による「JAZZ TOKYO」記事】
R.I.P. 鈴木 勲 「自分を変えてくれた二つの言葉」 by 小沼ようすけ
Lyle Mays 〜音楽世界における Einstein 〜が遺した財産 by 塩谷 哲
私の中のチック・コリア by 塩谷 哲

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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