#1228 角野隼斗&エリック・ミヤシロ
〜ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ

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Text by Hideo Kanno 神野秀雄
Photo by Takuo Sato 佐藤 拓央

ピアノ・コンチェルトの先にあったピアノとビッグバンドとの未知の響き合い

Celebrate “International Jazz Day”
BLUE NOTE TOKYO ALL-STAR JAZZ ORCHESTRA directed by ERIC MIYASHIRO
with special guest HAYATO SUMINO
ブルーノート東京オールスター・ジャズ・オーケストラ directed by エリック・ミヤシロ
with special guest 角野隼斗

2022年4月28日(木) 29日(金) 18:00 20:30 ブルーノート東京

エリック・ミヤシロ Eric Miyashiro(Trumpet, Flugelhorn, Piccolo Trumpet, Conductor, Arranger)
角野隼斗 Hayato Sumino(p) *special guest
Piano: 宮本貴奈(4/28のみ & 4/29EC) 、RINA(4/29のみ)
Bass: 川村 竜 Drums: 川口千里
Sax: 本田雅人、庵原良司、小池 修、竹野昌邦、鈴木 圭(sax)
Trumpet, Flugelhorn: 西村浩二、小澤篤士、田沼慶紀、山崎千裕
Trombone: 中川英二郎、半田信英、阿部史也、小椋瑞季

2022年4月28日(木)1st 29日(金)1st 共通
1. Blue Horizon (Eric Miyashiro)
2. Hirotaka Izumi Medley: Takarajima 宝島〜Omens of Love (和泉宏隆)
3. Joyful Joyful* (Ludwig van Beethoven – Henry van Dyke)
4. So in Love* (Eliane Elias / Arr. by Bob Brookmeyer)
5. Jupiter* (Gustav Holst)
6. The First Circle* (Pat Metheny & Lyle Mays)
7. Birdland (Joe Zawinul)
EC. Spain* (Chick Corea)

2022年4月28日(木)2nd
1. Blue Horizon (Eric Miyashiro)
2. Monmouth College Fight Song (Russell Ferrante)
3. Joyful Joyful* (Ludwig van Beethoven – Henry van Dyke)
4. So in Love* (Eliane Elias)
5. Jupiter* (Gustav Holst)
6. The First Circle* (Pat Metheny & Lyle Mays)
7. Birdland (Joe Zawinul)
EC. Spain* (Chick Corea)

2022年4月29日(金)2nd
1. Blue Horizon (Eric Miyashiro)
2. Overjoyed (Stevie Wonder)
3. Hirotaka Izumi Medley: Takarajima 宝島 – Omens of Love (和泉宏隆)
4. Joyful Joyful* (Ludwig van Beethoven – Henry van Dyke)
5. So in Love* (Eliane Elias / Arr. by Bob Brookmeyer)
6. Jupiter* (Gustav Holst)
7. The First Circle* (Pat Metheny & Lyle Mays)
8. Birdland (Joe Zawinul)
EC. Spain* (Chick Corea)

*角野隼斗 参加曲 Played by Hayato Sumino
All arranged by Eric Miyashiro except “So in Love”

「国際ジャズデイ」(4月30日)を記念して、東京ではブルーノート・ジャパンが構成し、神田小川町ワテラスとブルーノート東京で開催される「Jazz Auditoria」がその代表的イベントとして確立し、2020年からはCOVID-19をきっかけに世界のミュージシャンをネットで繋ぎ素晴らしいヴァーチャル・ジャズ・フェスティヴァルを実現している(「Jazz Auditoria Online 2022」「同2021」「同2020」について)。初回よりその看板パフォーマンスとなってきたのが、エリック・ミヤシロ率いるブルーノート東京・オールスター・ジャズ・オーケストラ(BNTASJO)。中川英二郎、本田雅人、小池 修、西村浩二らのファーストコール・ミュージシャンに加え、川口千里をはじめ気鋭の若手も積極的に登用。そしてパット・メセニーをはじめ世界のトップミュージシャンをゲストに迎え、エリック編曲による、ここでしか聴けないスーパーセッションの数々を生み出してきた。

角野隼斗」、そしてピアノYouTuber Cateen(登録者100万人超)、〜もはやブランドとして確立している気がするので説明はさておき〜、「Jazz Auditoria Online 2021」で、ピアノソロでガーシュウイン<Rhapsody in Blue>をワテラスからライヴ配信、続いて、2021年6月7日ブルーノート東京ソロ公演を即日完売し大成功に、そしてショパン国際ピアノコンクールに向かいセミファイナリストとなった。ブルーノート東京出演は11カ月ぶりとなる。

【参考】 角野隼斗 Blue Note Tokyo Live 2021年6月7日

エリック作曲、BNTASJOのテーマ曲<Blue Horizon>からステージが幕を開ける。エリックの故郷でありインスピレーションを与え続けるハワイの海と空をイメージしていることは間違いない。軽快でブラスが層になり自由に飛び回りエリック節の中で会場の気分が高揚して行く。

【参考】 Blue Horizon (Eric Miyashiro) 2021年

いよいよ角野がステージに登場。ベートーヴェン<交響曲第9番 第4楽章>を讃美歌にした<Joyful Joyful>。クラシックとソウルをシームレスに演奏する角野にとってはうってつけの選曲。角野の爆発するようなハッピーなエネルギーと、ブラスのサウンドが絶妙にバランスしてまさに歓喜の場を生み出す。

グスタフ・ホルスト<惑星>から<Jupiter>。原題は<Jupiter, the Bringer of Jollity>、快楽をもたらす者だから、<Joyful Joyful>からの歓喜を受け継ぐ。BNTASJOの持ち曲としての<Jupiter>のスコアは、ゲストとなる機会が多い平原綾香に当てて書かれている。そしてその先には自らもサックス専攻だった綾香の父、サックス奏者の平原まことの存在があり、エリックや本田、小池らにとっても先輩であり同僚であっただけに特別な一曲。これもクラシックからJ-Popのフィルターを経ての良い意味でのスコアの流用だが、ホルストのプロットを借りながら物語を構築していくエリックと角野の世界に魅せられる。

最大の魅せ場は、パット・メセニー&ライル・メイズの名曲<The First Circle>。もともとパット・メセニー本人のためにエリックが書き下ろしたスコアだ(Blue Note Jazz Festival 2015)。「11拍子ですが、手拍子ができる方はぜひ!」とマニアックなファンを掴みつつ。出だしのピアノ連打のタッチに完全にやられてしまった。本家ライル・メイズとも違う、クラシックピアニスト&スタインウェイのタイム感と輝く音。他方、クラシック・ギタリストの村治佳織も<The First Circle>に挑戦したがここでもジャズミュージシャンとは違う輝きを魅せていた。

【参考】 The First Circle (Pat Metheny & Lyle Mays)
Blue Note Tokyo All-Star Jazz Orchestra with Special Guest 村治佳織

そもそもビッグバンドにおけるピアノのバランスと立ち位置は非常に難しいと思っている。優れたジャズピアニストであってもバランスと煌めきを完全に実現することは難しい。そこをビッグバンド初体験の角野は天性の感覚と、ここ数年のさまざまな経験値を踏まえながら、一気に解決の緒を掴んでしまったようだ。実はこの後、とあるコンサートで偶然、角野の隣に座り言葉を交わす機会があって、角野の考え方ということでは決してないのだが、キーワードとして浮かんできたのは、クラシックピアニストのタッチ、そして、大ホールでオーケストラとともにピアノ協奏曲を鳴らしきる力。繰り返しで、角野の考えではなく、あくまでも私の感想だが、その二つがビッグバンドにおいてピアノをバランスと輝きを持って演奏するのにポジティヴに効くのではないかと思った。その意味で、このライヴを聴けたのはとてもラッキーだった。

アンコールにはチック・コリアへの追悼を込めて<Spain>。角野のジャズの師匠である宮本貴奈との共演を含めて熱い演奏で締めくくられた。

Jazz Auditoriaの終盤では、黒田卓也 “SIT-IN”セッションにも参加し、<In Case You Missed It>、<I Got Rhythm>ここでの角野は、、完全に対等に渉り合っていた、、とは必ずしもならなくて、光るものを見せながらさらに伸び代がある感じだった。それはよい意味でジャズのイディオムと流儀に染まっていないこともあるだろうし、黒田セッションは、その場での勢いだけでなく、時間をかけての準備と理解も求める要求が高いもので、その先に角野と黒田と仲間たちだからの素晴らしい世界が待っている気がした。

今回、角野とエリックが引き出したビッグバンドとピアノの未知の響き合いと可能性、今後も両者の共演と拡張を期待したい。

DAY2 4.30sat.17:00〜/19:00〜 “MAIN STREAM” of JAZZ AUDITORIA ONLINE 2022(from WATERRAS COMMON HALL)
大きな古時計 (角野隼斗ソロ)
Someday My Prince will Come (角野隼斗&井上銘デュオ)

Jazz Auditoria 2021 – 角野隼斗ソロ George Gershwin: Rhapsody in Blue

Cateen’s Piano Live – Summer 2022 (7月21日)

HAYATO SUMINO – third round (18th Chopin Competition, Warsaw) First Round Second Round

George Gershwin: Rhapsody in Blue 2021年2月3日 サントリーホール

※「Jazz Auditoria 2021」「同2022」の動画リンクについては、「寿すばる@ピティナ特級公式レポーター」氏の「note記事」を一部参考にさせていただいた。

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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