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Concerts/Live ShowsNo. 301

#1257 Joe Rosenberg Trio JAPAN Tour 2023 大阪公演

text by Ring Okazaki 岡崎 凛

2023年4月1日
open 19:00 / start 20:00
出演;
Joe Rosenberg (soprano sax)
落合康介 (contrabass)
大村亘 (drums)
会場:
Studio T-BONE
大阪市浪速区木津川1-2-6児島ビル1F

ジョー・ローゼンバーグ(Joe Rosenberg)が2020年以来の来日となる日本ツアーを2023年の春に実現させた(3月30日~4月9日)。彼のトリオには落合康介(b)、大村亘(ds)が参加。
ジョー・ローゼンバーグ はバリ島、シンガポール、クアラルンプールなど東南アジアで精力的に活動し、このツアーの後はシンガポールでダレン・ムーア(Darren Moore)と共演している。

このライヴを通して感じたのは、ジャズの即興ライヴでは、音楽家たちの過去の積み重ねをじわじわと反映させて滋味深いものが生まれるということだった。ジョー・ローゼンバーグの演奏を聴くようになって4年ぐらいしか経っていないのだが、彼のライヴで味わうものは、過去20年以上の音楽家の活動から染み出すエッセンスだろう。それが未来に向けてゆっくりと広がっていくように感じる。
今回の彼のライヴでは、早世した音楽仲間へ思いを込めた曲が演奏された。ここではライヴレポートだけでなく、サックス奏者ジョー・ローゼンバーグのかつての共演者で、神戸在住だった浜村昌子(piano)についても触れたい。また、ジョー・ローゼンバーグの過去の日本ツアーについても振り返りたいと思う。

ファーストセットはウェイン・ショーター作曲の〈nefertiti>から始まった。彼のオリジナル曲から始まる予定だったのに、急にこの曲に変わったようだ。大村亘のダイナミックで引き締まったドラミングの重量感に比べると、ソプラノサックスとベースはどこか飄々としていて、その対比が面白い。独特のムードのあるこの曲の管楽器のソロに、ねっとりとした感触を予想したが、ローゼンバーグの音はややあっさりとしていた。だが起爆剤があちこちに撒かれるようなスリリングな演奏で、終盤で激しさを増すドラミングがストレートに曲を盛り上げるのが心地よい。

その後ショーター追悼の言葉が出てくるかと思えばそんなことはなく、ローゼンバーグの曲〈.357〉が始まる。(.357と数字の前にピリオドがつくと、357口径、.357マグナム弾の意味になるようだ。)
続く曲〈21, 22, 23〉は2021、2022、2023の年を表しているという。21年と22年には新型コロナウィルスが猛威を振るい、来日できなかったが、23年にやっと来ることができたという思いを込めて書いた新曲とのこと。ローゼンバーグの曲は「風雲急を告げる」という感じの緊張感に満ちた曲が多く、動き回るベースに絡むサックスの音を、暗がりを照らす光の軌跡を追うように聴いた。ファーストセットの最後の〈Blood Count〉は記事の最後にアルバム音源のリンクを載せている。

最初の〈nefertiti>だけでなく、セカンドステージではウェイン・ショーター作曲の〈Iris〉も演奏され、先ごろ亡くなったショーターへの追悼の意が伝わる選曲だった。

今回のライヴで、もう一人追悼の思いが込められたピアニストがいる。東南アジアを中心に海外でのジョー・ローゼンバーグの公演に何度も参加した浜村昌子である。〈Hamamura〉と題された曲をこのトリオはセカンドセットで演奏した。このコンサートが行われたのは彼女が亡くなった4月9日(2019年)に近く、桜の咲く頃だ。彼女への言葉を手向けるように、〈Hamamura〉が捧げられる。深い悲しみの時は過ぎ去り、彼女の遺したものを慈しむ時間が訪れたのを感じながら、この曲を聴いた。

ピアニスト、浜村昌子と彼の曲〈Hamamura〉について、ジョー・ローゼンバーグに尋ねると、メールで返事をしてくれた。拙訳を添えて紹介したい。
I wanted to write something for her and her memory. something that she would have liked to play and that reflected some of her qualities; beauty, simplicity, subtlety. I think I achieved that.
(彼女のために、彼女との思い出のために、何か書きたくてね。彼女なら、どんなふうに弾きたかっただろうと考え、浜村昌子に備わっていたもの、つまり、美しさ、シンプルさ、細やかで奥深い表現といったものを反映させた曲を書きかった。それは達成できたと思う)

ジョー・ローゼンバーグは1999年に浜村昌子に偶然出会ったという。その後彼女はJoe Rosenberg Quartet Eastに参加してバリ島などアジアを拠点に活動した。「浜村昌子との出会いのきっかけを作ったのは、神戸Big Appleの近藤さんかもしれない。「一瞬で彼女と音楽でのつながりを感じた私は、それ以来できる限り彼女とプレイすることを心がけた」とジョー・ローゼンバーグは書いている。

(撮影時と場所は不詳だが、ジョー・ローゼンバーグと浜村昌子が共演する写真。友人のM氏から提供されたもの)

ジョー・ローゼンバーグ(右)と浜村昌子(左)
left: Masako Hamamura,right: Joe Rosenberg

下の写真は2018年、2019年、2023年のジョー・ローゼンバーグ日本ツアーのフライヤー。
2019年のツアーには出演予定だった浜村昌子(piano)の名前が載っている。しかし出演は叶わなかった。

ジョー・ローゼンバーグの来日については、このコンサート・ツアー参加のベーシストである落合康介のブログが詳しい。以下のリンクから2018年からのツアーの参加者、日程などを追うことができる。落合康介は、共演者としてだけでなく、マネージング面でのサポート、広報活動など様々な形でジョー・ローゼンバーグのツアーを支えているのが分かる。時にはジョーが語る言葉を紹介し、音楽交流だけに留まらない深いつながりで結ばれた共演者たちの心情に触れる。メンバーの顔や会場写真ではなく、樹木などの写真を添えるところに、即興演奏家の詩情や歌心が表れている。

コントラバス奏者、落合康介のブログ:
Joe Rosenberg quartet Japan tour 2018
https://skbss117.exblog.jp/26548891/

Joe Rosenberg quartet Japan tour 2019
https://skbss117.exblog.jp/27452968/

JazzTokyoの関連記事;
JazzTokyo News (2019年1月6日、2019年12月10日) :
2/14~2/23 ジョー・ローゼンバーグ・カルテット Japan Tour 2019
https://jazztokyo.org/news/post-36769/
(ここには出演予定だった浜村昌子(piano)の名前が掲載されている)
JazzTokyo News (2019年12月10日)
2/15~2/22 ジョー・ローゼンバーグ・カルテット Japan Tour 2020
https://jazztokyo.org/news/local/post-47494/

Joe Rosenberg Quartet 〈Blood Count〉アルバム『Quicksand』(2003,Black Saint)より

Bass – Mark Helias
Composed By, Soprano Saxophone, Producer – Joe Rosenberg
Drums – Tom Rainey
Piano – Masako Hamamura
Recorded live on June 30th, 2002 at The Knitting Factory, NY

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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