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Concerts/Live ShowsNo. 309

#1280 sonora do silêncio at 公園通りクラシックス
〜沢田穣治、太田剣、柳原由佳 ゲスト: Kan

Text & photos by Hideo Kanno 神野秀雄

< sonora do silêncio>
the second contact at 渋谷・公園通りクラシックス

2023年12月15日(金) 19:30
沢田 穣治 Jyoji Sawada: contrabass
柳原 由佳 Yuka Yanagihara: piano
太田 剣 Ken Ota: sax
スペシャルゲスト Kan: pandeiro

Your Strange (沢田穣治)
Stay Here (沢田穣治)
Lau Dai (太田剣)
奇妙な時計 (沢田穣治)
Rain (太田剣)
2018 March (柳原由佳) +ゲスト: Kan (pandeiro)

桜の記憶 (太田剣)
優しい雨 (柳原由佳)
Prism (Keith Jarrett)
星の瞬き(沢田穣治)

Sinfonie Nr. 9 d-moll op. 125 (Ludwig van Beethoven)

沢田穣治、太田 剣、柳原由佳によるアコースティックユニット<sonora do silêncio>。それぞれ違うフィールドで活躍し、お互いをリスペクトしながら、まだ出会っていなかった音楽家3人が当日初めて集ったのが、2023年10月20日池袋・Apple Jumpでの「the first contact」ライヴ。素人のほんの思いつきから始まった組み合わせが予想を遥かに超える成功を収め、レギュラーユニットとして動き出した。

そしてアコースティックな響きの美しさでも圧倒的な支持を受ける渋谷「公園通りクラシックス」での「the second contact」。1966年にできた日本基督教団 東京山手教会地下1階にあり、伝説のハコ「渋谷・ジャンジャン」のバックスペースにもあたる。クリスマスを前に教会の地下(建築的に重要な構造の一部)でのライヴ、「戦場のメリークリスマス」の坂本龍一、「クリスマス・イヴ」の山下達郎、ついでにパット・メセニーと共演していた頃の矢野顕子らも出演していたハコ縁の空間でのライヴと考えると感慨深い。筆者は、「矢野顕子ピアノソロ」で行ったことがある。

3人の美しいオリジナルの数々に魅了される。聴いて心地よくも実は構造や構成が複雑なオリジナルが多いのだが、テーマを一回さらう程度のリハーサルしかしていないのに、音を濁らせることなく正確に音楽を紡ぎ出すが、その緻密で正確で透明な世界で、自由で揺らぎのあるサウンドを生み出す。

今回は、バークリー音楽大学に学んで、COVID-19で日本に帰国しているパーカッションの Kan が観に来た。さまざまなパーカッションを叩き出すのはもちろんだが、ブラジル音楽に深く繋がっていて、パンデイロの名手。小曽根真 featuring No Name Horsesのオーチャードホールでのコンサートに抜擢され<La Fiesta>を演奏していた。今注目のピアニスト壷阪健登とボストン時代からの盟友でもあり、壷阪健登と石川紅奈のユニット「soraya」のレコーディングにも参加している。第1部の最後に、柳原のオリジナル<2018 March>にパンデイロ1つで参加し、巨匠・中堅の3人と向き合う。<2018 March>はこの3人のthe first contactライヴでも、全く新しい生命を持ったと感じたけれども、Kanのパンデイロが全く観たことがない地平へ連れて行ってくれた。Kanは翌日が誕生日でさりげなく<Happy Birthday>も演奏されて、客席からプレゼントも寄せられていた。

後半では、今までオリジナルしか演奏してこなかったユニットの初のカヴァー曲として、キース・ジャレットの<Prism>が演奏された。<Prism>の初録音は1979年4月、中野サンプラザでの『Personal Mountains』(ECM1382)だが、1983年1月スタンダーズトリオ初録音時の『Changes』(ECM1276)が先にリリースされている。また『Michael Breker & Charly Handen / American Dream』の演奏も残る。聴いてて気持ちが良いのに演奏が超絶難しい曲の筆頭だが、この3人の名手にかかると初挑戦ながら、曲想をつかみ、コードの流れに的確に沿いながら美しいソロを奏でていく。

最後の曲は、沢田が書いたばかりと持ってきた<星の瞬き>。この12月に亡くなられた母を想って書いた曲を穏やかに祈るように演奏した。

アンコールに応えて、年末にしか演奏できない曲として、太田編曲による、ベートーヴェンの交響曲第9番より、いわゆる「歓喜の歌」をリハーモナイズした音楽を奏でて幕を閉じた。

想えば、それぞれ3人が今まで奏でてきた音楽とは少し違う、既視感のない音楽を生み出すことに成功し、しかも回を追うごとに新しい魅力を増している。次回ライヴは3月以降を予定しており、沢田と柳原が関西在住でもあるだけに関西公演も待たれるところだ。動き出したばかりで、新しい音を生み出し続けるsonora do silêncioのライヴをぜひ体感していただきたい。

2018 March (柳原由佳)
柳原由佳(piano) 安カ川大樹(bass) 2019年6月21日 神戸 Born Free

Prism (Keith Jarrett)
沢田穣治(bass) 馬場孝喜(guitar)  芳垣安洋(drums)

太田剣&松本圭司 『TETE-A-TETE』リリースツアー Final at 渋谷JZ Brat

神野秀雄

神野秀雄 Hideo Kanno 福島県出身。東京大学理学系研究科生物化学専攻修士課程修了。保原中学校吹奏楽部でサックスを始め、福島高校ジャズ研から東京大学ジャズ研へ。『キース・ジャレット/マイ・ソング』を中学で聴いて以来のECMファン。Facebookグループ「ECM Fan Group in Japan - Jazz, Classic & Beyond」を主催。ECMファンの情報交換に活用していただければ幸いだ。

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