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Concerts/Live ShowsNo. 309

#1279 シェク&イサタ カネ-=メイソン デュオリサイタル」

2023年12月10日(日)@東京・紀尾井ホール

Reported by Kayo Fushiya 伏谷佳代

出演:シェク・カネ-=メイソン(チェロ) Sheku Kanneh-Mason (Cello)
イサタ・カネ-=メイソン(ピアノ) Isata Kanneh-Mason (Piano)

曲目:
F.ブリッジ:チェロ・ソナタニ短調 H.125
Frank Bridge: Sonata for Cello and Piao in D minor, H.125
F.ショパン:チェロ・ソナタト短調 Op.65
Chopin: Sonata for Cello and Piao in G minor, Op.65
<休憩>
S.ラフマニノフ:チェロ・ソナタト短調Op.19
Rachmaninov: Cello Sonata for G minor, Op.19


7人兄弟全員が優れた器楽奏者であるという驚異のカネ-=メイソン一家。そのなかでも長女のイサタ(2021-22シーズンにおけるECHOライジングスター選出、オーパス・クラシック最優秀若手ア-ティスト賞受賞)と次男のシェク(チェロ奏者として史上最年少でDECCAと契約、17歳でBBCヤング・ア-ティスト賞受賞)は、それぞれソリストとして破竹の勢いで世界中で演奏している。今回はこのふたりがデュオとして初来日、コロナ禍で二度の来日中止を乗り越え満を持しての実現だ。

何ものにも囚われない―まさに曲のなかを生き、自在に泳ぎまわる。息をするように自然に多彩なテクスチュアを現出させるシェクのチェロ。イサタのピアノは、その音色のあわいとリズムとが不可分に一体化したみごとなリリシズムだ。刹那に冴えわたる美意識は、まさに天性のもの。また、記譜のあらゆる可能性が切り開かれてゆくようなふたりのテンペラメントの振れ幅が露わになる、絶妙なプログラミング・センス。例えば、ショパンの第2楽章での倍音ギリギリの際(きわ)をゆくチェロの一触即発な境界感、ラフマニノフの第2楽章ではピアノが穿つパーカッシヴな音の楔とチェロのヴィブラートとのアマルガムのような合体、フィナーレでの溜めの効いたテンポの揺籃など、立体的かつ鮮やかに音楽の要所要所を際立たせる。収斂と開放のコントラスト。肉体に有り余るグルーヴ感を音符の極限にまで宿らせるふたりの演奏は、「形式」があるクラシック音楽であるが故により一層の強度で、音楽することに対する分け隔てのないスタンスや、その普遍的な楽しさを伝えてくれる。

シェクとイサタの例にもれず、最近のクラシック音楽はアルバム制作の傾向を見ても、コンセプトを大きくひとつ設定しての自由なオムニバス形式のものが多いようだ。作曲家の想いを忠実に伝えることは第一義だが、自己の世界観を最も効果的に表現するというプロデューサー的な俯瞰の視点を、今のトップ・アーティストたちにはひしひしと感じるのである(*文中敬称略。12月12日記)。


関連リンク:
https://www.amati-tokyo.com/

伏谷佳代

伏谷佳代 (Kayo Fushiya) 1975年仙台市出身。早稲田大学卒業。欧州に長期居住し(ポルトガル・ドイツ・イタリア)各地の音楽シーンに通暁。欧州ジャズとクラシックを中心にジャンルを超えて新譜・コンサート/ライヴ評(月刊誌/Web媒体)、演奏会プログラムやライナーノーツの執筆・翻訳など多数。

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