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Concerts/Live ShowsNo. 314

#1309 吉田篤貴EMO strings Concert 2024 -noboru-

2024年5月12日(日) ムジカーザ

text by Kazune Hayata 早田和音
photo by Yasuharu Hoshino 星野泰晴

 

【出演】
吉田篤貴(vln, cl) 沖増菜摘(vln) 地行美穂(vln) 青山英里香(vln) 萩谷金太郎(va) 大嶋世菜(va) 島津由美(vc) 内田麒麟(vc, handpan) 米光椋(b)

【セットリスト】
1st. SET: 1.The Wind Fiddler 2.ニュー・シネマ・パラダイス 3.新曲2024① 4.Dancing Spoon 5.Our “Happy Ending”
2nd. SET: 1.灯火 2.極夜 3.Hydra 4.Abuju 5.レティーロの夜更けには
enc. Casa Nostalgia

 

《吉田篤貴EMO strings: Concert 2024 -noboru-”》が、5月12日に代々木上原にあるホール、ムジカーザで開催された。EMO stringsというのは、ヴァイオリン&ヴィオラ奏者および作編曲家として活躍する吉田篤貴が、自身のオリジナル曲を中心に演奏を行なう弦楽奏団。編成やメンバーは時に応じて変化するようだが、この日は沖増菜摘(vln)、地行美穂(vln)、青山英里香(vln)、萩谷金太郎(va)、大嶋世菜(va)、島津由美(vc)、内田麒麟(vc)、米光椋(b)という、いずれも第一線で活躍するプレイヤーを揃えた、ヴァイオリン×4、ヴィオラ×2、チェロ×2、コントラバス×1という9人編成。これまで弦楽四重奏の演奏は何度か聴いているが、この編成の演奏を生で聴くのは初めてのこと。挾間美帆m_unitや武本和大Departureプロジェクトの中心メンバーを務めるなど、ジャズ・フィールドでも活躍する吉田が率いる弦楽九重奏団の演奏を待つ僕の胸は高鳴っていた。

1stセット1曲目の「The Wind Fiddler」が始まった途端、期待で満ち溢れた僕の耳に、聴いたことのない音、未体験の響きが次々に飛び込んできた。編成としては、オーソドックスな弦楽四重奏をダブルにして、コントラバスを加えた形の今回のEMO strings。弦楽四重奏自体も多様なアンサンブルの選択肢を具えているのだが、このバンドのアンサンブルの豊かさは、弦楽四重奏を単純に2倍にしたのではなく、掛け算にしたような感覚。さらに言えば、冪乗(べきじょう)のようなスケールで膨らむということを実感させられる。それを最も雄弁に示してくれたのが1stセット3曲目に披露された「新曲2024①」だった。吉田が書き下ろしたばかりで、まだ正式な曲名を持たない同曲はこの日が初演。19拍子を基調とし、その他にもいくつものリズム変化やミニマル・ミュージック的な展開を伴うという、言葉にすると大変に複雑な表現になってしまう楽曲を、EMO stringsの面々はとても躍動的に演奏。米光のコントラバスが送り出すグルーヴ感ゆたかなリフに乗せて、精緻なアンサンブルや、疾走感あふれるチェイスが行き交うさまは、聴く者の感情を大きく揺さぶるもの。バンド名に織り込まれた“EMO”という言葉を実感させる演奏となっていた。

        

撮影:小野寺将也

圧倒的な演奏が繰り広げられた第1部に続く第2部は、その魅力がヴァラエティ豊かに紹介されていく展開。内田麒麟が演奏するハンドパンと呼ばれる楽器をフィーチャーした幻想的な内田オリジナル曲「灯火」で幕を開けた後は、静謐な味わいの薫る「極夜」、変拍子とダークなハーモニーがダイナミックに交錯する「Hydra」、1歳になる愛息が発する喃語にインスピレーションを受けて作曲した、この日が初演となる「Abuju」を経て、挾間美帆の作曲による「レティーロの夜更けには」でドラマティックにフィニッシュ。温かなテイストの薫るアンコール曲「Casa Nostalgia」まで11曲が披露された充実のコンサートは、このバンドが今年秋頃に予定している次回ライヴ、そして吉田が構想を始めているという次作アルバムへの期待を大きく搔き立てるものとなっていた。

   

撮影:小野寺将也

早田和音

2000年から音楽ライターとしての執筆を開始。インタビュー、ライブリポート、ライナーノーツなどの執筆やラジオ出演、海外取材など、多方面で活動。米国ジャズ誌『ダウンビート』国際批評家投票メンバー。世界各国のメジャー・レーベルからインディペンデント・レーベルまで数多くのミュージシャンとの交流を重ね、海外メディアからの信頼も厚い。

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