#1347 Robert Glasper Trio at City Winery Boston, 2025-01-19
2025年1月19日(日):City Winery, Boston
Text by Hiro Honshuku(ヒロ・ホンシュク)
- Robert Glasper(ロバート・グラスパー)– keys
- Burniss Travis(バーニス・トラヴィス)– bass
- Justin Tyson(ジャスティン・タイソン)– drums
グラスパーがボストンに来ると必ず行くようになって何年になるだろう。2018年にはブルーノートNYCまで見に行った。その時の模様はこちら→
なぜこんなにグラスパーに惹かれるのか、その理由が言葉で説明できない。今回のこのライブ、レギュラー・メンバーの中でDJ Jahi Sundance(DJ ジャヒ・サンダンス)が欠席だった。開演前にDJの機材がステージになく、一抹の不安を覚えた。グラスパーのライブでのDJジャヒの貢献度は半端ない。どの曲にも物語を描き出す彼のDJなしで、しかも歌やホーンのゲストがいないピアノ・トリオでのグラスパーのライブなど今まで見たことがなかった。普段グラスパーが自分のソロをフィーチャーするのは大抵1、2曲で、彼は常に音楽の全体像を提供するアーティストだ。
開けてみれば、とんでもなくすごいステージだった。グラスパーがこんなに弾きまくったのを見たのは初めてだった。しかもスィングビートのソロまで披露した。そのうち、なんと<ステラ・バイ・スターライト>のソロピアノまで飛び出した。これには驚いた。グラスパーのメロディーに対する自由な演奏が、まあ、すごいったらありゃしない。もう一つ驚いたのは、バックビートの曲のソロでビパッブやビートルズを初めとする、誰もが知っている曲のフレーズをちょろちょろと埋め込んでいた。彼に客を喜ばせようなどという気は全くない。遊んでいるのだ。聴衆もその遊びに乗って来る。
グラスパーのライブには、いつもメンバー全員に期待して出かける。なんと言ってもジャスティン・タイソンだ。筆者はオン・トップ・オブ・ザ・ビートでこんなエキサイティングなバックビートを叩くドラマーを他に知らない。ビハインド・ザ・ビートのバックビートで幸せ気分にしてくれるドラマーと違い、タイソンはこっちを崖っぷちに立たせる。しかもそれが不快ではない。ここが不思議なのだ。普通こんなに長く興奮させられ続けたら疲れるはずだ。きっとトラヴィスのベースが何か魔法を出しているに違いない。
グラスパーの演奏は「自然体」としか説明できない。かっこいい演奏をしようなどという気は毛頭ないだろう。ソロを組み立てるなどという小細工はゼロだ。この3人の演奏はまるで3人の悪友がガヤガヤおしゃべりして騒いでいるようにも見える。筆者はバックビートのグルーヴでおかずの多いリズム・セクションを好まない。グルーヴが壊れるからだ。ベースもドラムもツボでグルーヴし続けてくれるのを好む。だが、トラヴィスもジャスティンもおかずだらけなのに、全く邪魔にならない。おかずは、わざとらしくグラスパーに合いの手を入れているのでは全くない。いったいどうなっているのか全くわからない、から、何度も何度も彼らのライブに出向いてしまう。
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