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Reviews~No. 201

Library #62『ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ』

text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌

書名:ニューヨーク アウトドアコンサートの楽しみ
著者:常盤武彦
発行:産業情報センター
初版:2010年4月15日
定価:1,300円+税

腰巻きコピー:
野外で音楽!やみつき!
R&B、ジャズ、ロック、フォーク、クラシック、ポップス。
若手からベテランまでが勢揃いのニューヨーク名物、野外音楽フェスガイドの決定版!


2006年に、『ジャズでめぐるニューヨーク』(角川oneテーマ21)を取り上げた音楽ジャーナリスト・常盤武彦氏の新著である。慶応大学を経た後、1988年に渡米、ニューヨーク大学芸術学部(写真専攻)に学び、卒業後はNYに腰を落ち着け、音楽を中心に取材を続けているジャーナリストである。氏の詳細な経歴や活動振りについてはかつてインタヴューを通じてお伝えした通りである。近々、その後の4年間のNYの音楽シーンの動きを内部から語っていただくインタヴュー#2を試みるつもりでいる。
ところで、氏の音楽観が一挙に大きく拡がったのはひと夏のNYでのアウトドア・コンサートの体験だったという。それは、本書に掲載された写真を観れば容易に想像がつくことである。どの写真からも青空の下で思いっきり音楽を楽しむ聴衆とミュージシャンの顔が飛び込んでくる。それは、ジャズに限らず、ラテンであり、ロックであり、フォークであり、クラシックでさえある。紙面を通してさまざまな音楽が聞こえてくる。思わず身体が揺れてくる。アメリカは人種の坩堝(るつぼ)、サラダボール。とくに、ニューヨークは世界各地からの観光客も加わりオリンピックのような人種の賑わいを呈する。音楽好きは、来年の夏はひとつNYのアウトドアで開放感に浸りながら思う存分音楽を楽しんで来ようか、などとカレンダーを手に浮き足立ってくるのではないのだろうか。
前作では「ジャズ・ミュージシャンを中心に、歴史の縦軸に沿い列伝風にまとめた」ものだったが、本作では、「3ヶ月ほどの間に、様々な音楽が展開される一夏のNYの音楽シーンを時系列に並ぶ横軸で捉えた」ものである。野外コンサート(しかも、その多くは無料である)のメッカともいえるセントラル・パークを始め、ブルックリン、リンカーン・センターなどスポットごとの特徴も巧みに捉えられている。単なるガイドに終わらず、随所に織り込まれたエッセイもNYの20年以上の居住経験を持つ筆者ならではのエピソードに溢れ、読み物としてもそれなりに楽しい。巻末には、コンサート・カレンダーやマップ、ライヴスポットのガイドが付いているが、絶え間なく変転するNYのこと、出掛ける前にはネットで最新情報の確認が必要なのは言うまでもない。

*初出:2010年6月11日 JazzTokyo #139

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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