音質マイスター萩原光男のサウンドチェック #2『ホリー・コール /ドント・スモーク・イン・ベッド』」
text by Mitsuo Hagiwara 萩原光男
◎プロフィール
まず、彼女のプロフィールを紹介しましょう。
1963年、クラシック音楽を愛好する両親から生まれ、家族は全員がピアノを演奏します。
お兄さんがバークリー音楽院にジャズの勉強の為に入学したので、お兄さんを頼ってボストンに行き、ジャズと出会ったのでした。それから数年後シングル版を発表すると、ベースとピアノをメンバーとしたトリオを結成しました。
1990年に「Girl Talk」
1992年に「Blame It On My Youth」を録音し、
1993年に今回取り上げた「Don’t Smoke in Bed」をリリースしています。
ホリー・コール・トリオのメンバーは、当初より
ベース David Pitch
ピアノ Aaron Davis です。
このアルバムでは、曲により
ギター David Lidley (tr:2)
ハーモニカ Howard Levy (tr:3.5.11)
サックス Joe Hendersosn (tr:6)
ストリングス conducted by Glenn Morley が参加しています。
◎概要
「Don’t Smoke in Bed」は、高い評価を得て、ホリーコールの代表作のアルバムになりました。
2000年前後には、評価やプレゼン用ソースとして多用されました。
2018年11月にSACD/CDハイブリッド盤でも発売され、長い間人気があります。
録音されてから時間が経っていますが使いやすい音作りでオーディオプレゼンターにとっては、ありがたいソースです。
プレゼンではとりあえず音出しすると、聴きどころを心得た音作りなので、ベースのインパクトと共に聴く者を引き込む力があります。
このベースは多様な表現力を見せ、このソースの大きな魅力になっています。
周波数レンジはそれほど広くなく、低域はベースでバランスを作り、それに見合う高域はピアノで構成しているので、どんなオーディオシステムでもとりあえずバランス良くなってしまいます。
低域は、ベースのマッシブで輪郭を強調させた曲もある一方で、やゆったり語りかけるようなベースの音の曲もあり、ボーカルの太さも装置の低域の表現力があると楽しめます。
ところで、ホリー・コールはカナダ出身で、カナダのジャズマンとしては古くはオスカーピータソンがいます。ジャンルは違いますが、セリーヌ・ディオン、クラシックのグレン・グールドもいます。
あえてカナダ出身ということで音楽の共通点を見つけるわけではないですが、ホリー・コールのこのアルバムに見られる、破綻のない音のバランスやまとめ方に品格さえ感じるのは、そうしたアーティストと共通の文脈の中で語ることができそうです。
◎聴きどころ
音についての印象をまとめておきましょう。
オーディオで音楽を聴くことの楽しさは、楽器の音色を味わうことと、楽器やボーカルが反射音との関係で作り出す多様な表情を聴くことです。
このソースとは長い付き合いですが、このCDの聴きどころはベースにあり、オーディオ機器がそのベースの音をどれだけ再現できたかが試されるところです。
1曲目はマッシブなベースが曲のポイントで聴く者の心を捉えます
2曲目は、アダージョくらいのテンポで、リキみなく弦が爪弾かれ表情豊かで深い味わいがあります
5曲目のテネシー・ワルツはお馴染みの曲なので丁寧に作られていて、プレゼンターはこの曲を中心にかけるケースが多いようです。ハモニカ、ピアノ、ベースのアドリブは聴きどころが多く、パートごと演奏の魅力で最後まで聴いてしまいます。楽器の競演の感があり楽しい曲です。
意表をつく9曲目はフランス語の曲で、フランス語という言語の特徴で味わい深い曲となっていて、アルバムの出来栄えに大きく貢献しています。フランス語の発音は英語と日本語の中間にあります。つまり英語は口先の方での発音が多いのに対して、日本語の多くは喉での発音します。フランス語はちょうど中間で歌われるので、声の口内での響きは、こもりがちで一見不明瞭ですが、装置がうまく再生できれば、他の曲と違う曲想で味わいがあります。ゆったりアンニュイを感じて素敵です。
12曲目のケセラセラも楽しい低音です。
曲目のまとめとしては、楽器の聴かせどころを心得て作られていて、ボーカルも味わい深いCDです。
◎収録曲
1. I Can See Clearly Now
2. Don’t Let The Teardrops Rust Your Shining Heart
3. Get Out Of Town
4. So And So
5. The Tennessee Waltz.
6. Everyday Will Be Like A Holiday
7. Blame It On My Youth
8. Ev’rything I’ve Got
9. Je Ne T’Aime Pas
10.Me And My Shadow
11.Cry (If You Want To)
12. Que Sera Sera
13..Don’t Smoke In Bed
Manhattan Records CDP 781198 (1993)
Engineer: Leanne Ungar
Mastered by Bernie Grundman
Recorded at Reaction Studios
Mixed at Brooklyn Recroding Studio
Mastered at Bernie Drundman Mastering
Produced by David Was