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音質マイスター萩原光男のサウンドチェックNo. 340

#25 『シンディ・ブラックマン・サンタナ/コヒーレンス』

text:Mitsuo Hagiwara 萩原光男

Mack Avenue BSMF-5149. ¥3,500+税(8/21リリース予定)

Cindy Blackman Santana: Drums (All), Spoken Word (4, 6)
Aurelien Budynek: Guitar (1-3, 7, 10, 11, 13-17)
Felix Pastorius: Bass (1-3, 7, 10-17)
Emilio Modeste: Saxophone (1-3, 7, 10-17)
Zaccai Curtis: Keyboards (1-3, 7, 10-16)

Carlos Santana: Guitar (3, 5, 8, 9, 10, 17)
Snoop Dog: Shout-Out Intro (3)
Matt Garison: Bass (4, 5, 6)
Dave Eggar: Strings (7, 8, 11-14)
Ray Angry: Keyboards (8)
John McLaughlin: Guitar (9), Organ (9)
Alonso Broz: Bass (9)

1. Illumination
2. Blue Whale
3. The Message is Love
4. Coherence Tapestry
5. Coherence
6. Coherence Embrace
7. Peace Please
8. Psychedelic Movie House
9. Guitar Love
10. Capri
11. SyZyGy
12. Circe
13. Eclipse
14. Soon a Queen
15. Sunday
16. Music
17. Sanctuary


1.まえがき

アメリカン・ジャズ・ロックを、アメリカン・オーディオの底力で、たっぷり味わいました。ロック・ファンの私としてはひさびさに聴くカルロス・サンタナです。近頃再婚したとのこと、ドラマーの奥さんとの仲睦まじき演奏か、とタカをくくって聴きました。当家のベッドサイド・オーディオでは、まさにその域を出ませんでした。試聴の最後は、筆者所有の大型システムで聴くのですが、パパ・サンタナのギターの咆哮と、重戦車の如きドラムワークに圧倒されました。

「私が日本製オーディオを使わないのは、日本製はサラリーマン・オーディオだから。オーディオに浸るのであれば、遊び人オーディオで聴かなければ!」(筆者加筆編集) と、著書の中で語ったのは、ジャズ&オーディオ評論家 寺島靖国翁です。

当家の最終試聴システム、マッキントッシュ・アンプで鳴らすJBL4320は、そんなアメリカの「遊び人オーディオ」なのです。アメリカ人は車でもSUV(Sport Utility Vehicle) と言って、遊びのために実用性や悪路走破性を備えながら、日常のドライブやレジャーなど幅広い用途で使える乗用車を作ってしまう国の人々の作るオーディオです。これで聴くパパ・サンタナのギターは荒野をつんざく雷鳴のよう、それに呼応するシンディ・B・サンタナのドラムは重戦車です。ベッドサイド・オーディオで心地よく鳴っていたアルバムは、その音にまさにSUVの如き悪路さえ突っ走る重厚さでステージをアリゾナ砂漠に変え、迫り来るのでした。

2. カルロス・サンタナの今

サンタナのギターと言えば、あの<ブラック・マジック・ウーマン>の「キーン」と鳴り響いて中高域を駆け巡る速弾きのギターです。<ブラック・マジック・ウーマン>はピーター・グリーンが作曲し、「フリートウッド・マック」で演奏した曲です。このカバーをサンタナが1970年に、アルバム『天の守護神』に収録して大ヒットさせました。
サンタナと筆者の関わりですが、<ブラック・マジック・ウーマン>の1970年代の次は、1990年代のオーディオ・バブル期に、DVDデモ・サラウンドソースでの彼のステージ演奏でした。あらためて近年の彼の活動を確認すると、たくさんのステージをこなしツアーも行っているとのこと。そして2010年にジャズ・ロック・ドラマーのシンディ・ブラックマンと結婚したのです。ミュージシャン同士の結婚ですから、カルロス・サンタナも、愛情とともに、音楽の新展開を狙ったこともあるはずです。今回のアルバムを聴くと、カルロス・サンタナは、ギターにかけた武人から、戦隊を組むに至ったロック・ジャズの隊長、と言った音楽に聞こえます。音的にも、陶酔的なエキセントリックなギターワークから、客演とはいえ重戦車を率いるギターに変身しています。

3.このアルバムの音

①編成
このアルバムは、ギター3本、ベースギター、ドラム、と管楽器が入っていることで音楽的な厚みを増しています。編成の大きさで味わえる迫力感、音の響きの豊かさも、このアルバムの魅力です。

②ドラムの低音
筆者所有のアメリカ製「遊び人オーディオ」で聴くとパワーと電源安定度があるので、ドラムのベースが太く迫力があり、女性のドラマーと甘くみてはいけません。10曲目はこのトラックだけ他の曲とはちがって、特別にキーが低く、重厚な迫力で圧倒されます。まさに聴きどころです。

③楽器の配置・定位
曲目ごとの楽器の定位・配置も大きな聴きどころです。ギターがエコー豊かにすべてを包み込む様に広がり、ベースの残響はオフで前面に聞こえます。この定位に関しては、当方の大型システムで、低音高音とも高ダイナミック・レンジのシステムで味わえました。
特に、遊び人オーディオ、と言ってしまいましたが、筆者使用のマッキントッシュ・アンプなどアメリカのパワーアンプは、出力パワーに対して必要以上に電源の余裕があります。この様なものづくりは、当然、低音の安定した再生能力に貢献しているわけで、低音イコール音場の安定した広がりの再生が可能となり、この点からも、音場や定位の再現が優れているわけで、当然今回のアルバムはそれに応えるだけのパフォーマンスを持って制作されているのです。

4.アルバム試聴記

各曲の音を次の様に聴きました。

*1曲目:  バスドラ、ドスドスと大迫力。ロックアルバムと感じました。しぶとくバスドラをキックし続けるのがシンディ・ブラックマン・サンタナのスタイルか。非常な説得力を感じる。アルバム全体を通してだが、ブラスの演奏が音楽に厚みを付けている。

*3曲目:これぞカルロス・サンタナ!!というギターです。
ギターのまさに咆哮から始まり、筆者の様なロックファンを虜にしてしまいます。
エキセントリックなギターワークが空間に鳴り響き漂う。その高域に時折り低域でブファブファとファズを効かせる、ややお決まりのエレキギター・フレーズは、ギター好き殺し、とさえ言ってしまいましょう。
そのギターの高域にバスドラの重低音が良くバランスしています。
このギターのハイのヒステリックな叫びは、まさにパパ・サンタナここにあり、というところ、このアルバムの聴きどころです。

他の曲も素晴らしいですがオールド・ファッションとは言え、多くの人に聴いてほしい。筆者絶賛の3曲目です。

*5曲目 : パパ・サンタナが登場しますが、この曲含めて、3曲目以外は流している感じ。その様なわけで、3曲目があるからこのアルバムの価値がある、とさえ言えます。

*6曲目 : 40秒ほどの短い曲ですが、シンディ・B・サンタナの語りです。ややハスキーでフェードアウトしていく。coherenceと語り続けて暗示的。

*8曲目  :アダージョのテンポでパパ・サンタナ始め、複数のギターの協奏でエコーのかかり方なども良い感じ。この曲も、このアルバムの一つの典型のようです。

*9曲目:  <Guitar Love>と題されたこの曲は、ジョン・マクラフリン、パパ・サンタナも加わりそれぞれバラードっぽく演奏しています。後ろにエレピとギター一本がエコーがかかってひろがり、ベースとドラムスが前面に配置され音作りがドリーミーで良い。手慣れた音作りを感じます。

*10曲目:  バラードっぽく管楽器が前面にいて、ギターがややエコーを効かせてムーディーな音作り。冒頭からのドラムはこのトラックだけ特別にキーが低く迫力で圧倒する。シンディ・B・サンタナの面目躍如、というところか。

*16曲目:  最後を飾るにふさわしい、アップテンポでドラムが疾走して、ギターが追従する。ギターのファズ・エフェクターの音各種は聴いたことのあるもののオンパレード。最後を飾るにふさわしい。

5.あとがき

今回は、筆者所有の、遊び人オーディオという人もいるアメリカン・オーディオで、ジャズ&ロックのもう一つ別の音楽が聴けました。筆者は、音楽に多感な時期をロックを聴いて過ごしたので、この分野の音楽には思い入れがあります。

ところで、ロックミュージックの出現は時代の必然です。
1960年代1970年代はエレキミュージックの萌芽期、時代のエネルギーは活力ある若者にあり、ビジネス的にも大きなものになります。こうした背景で盛り上がったロック、カルロス・サンタナもこの盛り上がりの頂点にいたわけです。
今は、音楽はやや停滞期、すべての音楽に活力は感じられるものの時代を牽引する大きな流れは感じられません。こんな時は、時代の流れに素直についていきます。

AI、パワー、金額で大きくなったオーディオ、デジタル、ボーダーレス、そして過去に見出すステキなもの・機材と。

CDを受け取った時、ステレオタイプ、お決まりの音を心に描いてしまいましたが、聴き終わってみると、どうやら編集長の深い思いが潜んでいた様で、敬服の至りであります。

萩原光男

萩原 光男 1971年、国立長野工業高等専門学校を経て、トリオ株式会社(現・JVCケンウッド株式会社)入社。アンプ開発から、スピーカ、カーオーディオ、ホームオーディオと、一貫してオーディオの音作りを担い、後に「音質マイスター」としてホームオーディオの音質を立て直す。2010年、定年退職。2018年、柔道整復師の資格を得て整骨院開設、JBL D130をメインにフルレンジシステムをBGMに施術を行う。著書に『ビンテージ JBLのすべて』。

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