天才的な鍵盤奏者への憧れ by ナカノサキ

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text by Saki Nakano ナカノサキ

Lyle Maysの訃報には大きな喪失感を感じております。特別に好きな鍵盤奏者でした。

私は、Pat Metheny Group (PMG)のトリビュートバンド「PA!! METHENY GROUP」の鍵盤奏者として都内ジャズフェス等でライブ活動を行っています。メンバーには「DEZOLVE」で活躍する北川翔也(g)と 小栢伸五(b)、それに「Vityazz」の安倍弘樹(ds)がいます。初めは、私が内輪の演奏会で青と白のボーダーTシャツとパーマのカツラを被って”パッと見メセニー”と称してメセニーの曲をソロまで完コピーしてピアノで演奏した事がきっかけだったのですが、その後トリビュートバンドとしてメンバー数を増やし、かなり徹底して演奏の研究を行い、代表曲からUnity Groupの15分を超える大曲まで様々な曲に挑戦しました。

私がLyle MaysやPat Methenyに初めて触れたのは2014年頃、自身が二十歳の時です。
大学時代に入った音楽サークルがきっかけでジャズフュージョンというジャンルを聴き始め、当時Pat Methenyの新作『KIN(<–>)』から始まりPMGの方の作品にも遡り手を伸ばしました。

聴き始めてすぐに、PMGの楽曲の中でLyle Maysの演奏が非常にセンスよく光っている事に気付き、大変衝撃を受けました。予想を超えてくる良フレーズや良コードがどんどん流れ込み展開し、聴く人をワクワクさせるのが上手すぎる!と。流麗なピアノソロはさることながら、バッキングもセンスが他の鍵盤奏者とは桁違いだと感じていました。しかも何台ものシンセとピアノを組み合わせながらですから、天才的だと思います。

残念ながら知ったのが遅かった故にLyle Maysの在籍するPMGを生で見る事は叶わず、YouTubeに残るMVやLIVE映像を繰り返し視聴しました。Lyle Maysのフレーズやボイシング、そして”弾く姿”も真似したいと思い、今もそのイメージを持ち続けています。シャツと長髪が美しく、手元は余計な上下の動きが無く滑るようで且つ鋭いですね。ピアノの音色は水のような透明さを感じました。

特に好きな曲はやはり代表曲「First Circle」です。そして「Third Wind」のバッキングは最初から最後までコピーする価値ありでした。超有名曲の「Have You Heard」は演奏してみると凄さを実感します。メセニーのGtに絡むフレーズが沢山あり、同時にコードバッキングも全てLyle Maysが担うので、これを再現するのは難易度が高いものでした。LyleはPMGの楽曲において非常に仕事量が多く、曲に影響力を大きく持ち素晴らしい功績だと思います。私はPMG最後の長編作品『The Way Up』も非常に好きで、聴く度に溜息が出ます。長編なのに曲のどこを取っても高度過ぎる…。Lyle Maysへの憧れは永遠に消えないでしょう。私はまだ技術も経験も未熟な鍵盤奏者ですが、自身の作曲や演奏の中でその憧れを形に出して行けたら、と思っています。

できるならば生で演奏を見たかった、お会いしてみたかった、新しい作品を聴きたかった、いつかPMGの復活も期待していた、という悔しい気持ちもありますが、鍵盤奏者というパートへの憧れを1番教えてくれた存在はLyle Maysです。とても感謝しています。

どうぞ安らかに。


ナカノサキ Saki Nakano
鍵盤奏者/作曲家 Keyboardist / Composer

1993年生まれ。ロックバンド「イエロー・シアン・マゼンタ」、ビートルズトリビュートバンド「The RiverBirds」にて活動中。また、自身のピアノトリオでオリジナルインスト曲を発表している。

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