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R.I.P. チック・コリアNo. 276

追悼 チック・コリア by drummer/composer 福盛進也

text by Shinya Fukumori  福盛進也

ジャズを始めたきっかけは?

と訊かれれば、僕は必ず「Chick Coreaとの出逢い」と答える。2000年も終わりに近づいてきた頃、16歳の僕はロサンゼルスにいた。
冬休みを利用して、兄の留学しているこの場所に遊びに来たのだ。
飛行機を降り、時差ボケで頭がうまく回らないまま、兄の車で家へと向かった。
そして家へ着くなり「さあ、出かけよう」と兄が僕に言った。
こんなに疲れているのにどこに連れて行く気だ、と思いながら到着したのはロスで有名なジャズクラブ「Catalina」。

ドラムを始めてまだ間も無く、「ジャズなんて頭のいい連中がやる音楽で、自分には一切縁なんて無い」と思っていた。
しかし、兄は「これは絶対に観ておいたほうがいい」と、長蛇の列に並びながら僕に伝えた。
初めてのジャズクラブにドキドキしながら、僕らは席に着く。そして演奏が始まった瞬間、僕の時差ボケは吹っ飛んだ。

Chick Corea New Trioがステージ上にいた。
圧倒的なエナジーと表現力。
こんなにもカッコいい音楽が存在していのか、と僕は度肝を抜かれた。
後半の「500 Miles High」では、ボーカリストでChickの妻でもあるGayle Moranが飛び入り参加し、ボルテージは最高潮に達した。
完膚無きまで打ちのめされた僕は、その日からジャズのことばかり考えていた。

その後、大阪に帰り、ちょうどまた同じタイミングでそのトリオが来日し、再び僕は感動に浸った。
演奏後、トリオに話しに行き、優しい笑顔でChickは僕の私物にたくさんサインをしてくれた。

この一連の出来事は、一生忘れることはないだろう。
そしてこの衝撃は、僕の人生を大きく変えた証として、僕の音楽の中に残っていくだろう。

ありがとう、Chick Corea。
そして、どうか安らかに。
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進也

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