「チックにまつわるエトセトラ」 by drummer みどりん (SOIL&”PIMP”SESSIONS)

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2021年2月初旬、耳を疑う様なニュースが音楽業界に走った。チック・コリアが亡くなったと。ある日突然やって来たニュースだった。
だって先日までオンラインで元気にピアノレクチャーやってたじゃん? YouTubeバンバン出してたじゃん? 何故よ? 後々の話だけど『トリロジー 2』だって今回グラミー賞よ?

今更ながらの追悼文ですみません。が、矢張り思い出だらけが頭の中を駆け巡る。演奏家として人と接する中でチック・コリアが好きというアイコンだけで今まで、いや今現在もどれだけの人達と繋がることが出来ただろうか。寧ろ自分にはそう言った意味で偉大なるチックには感謝しかない。

このコロナ禍に於いて新たな繋がりの演奏が出来た事が幾つか自分にはある。その一つがアメリカ在住のピアニスト 宇関陽一とのデュオ・ライヴ・プロジェクトだ。元々フィラデルフィアに20年近く住んでいる宇関なのだが、この状況の中昨年から日本で足止めを喰らっていたところに彼から「久々にデュオやらないか」との連絡があった。

実は我々二人は大学生時代からのジャズ研繋がりの仲間であり、当時からよく周りの同世代と一緒にライヴをやっていた。
その流れで一度だけ大学の講堂の中でグランドピアノとドラムのみのデュオライヴをやった事があり、その際のレパートリーは…?もちろん!と言って良いほど当時ハマっていたチックのエレクトリック・バンドの「Got A Match?」やら「Spain」やらだった。当時はスピード感というか単に速さを目指していたのだろうか。

その後二人が関わる数回のライヴでも常にチックの曲(「Now He Sings, Now He Sobs」「The Loop」「What Was」「Samba Song」など)を常にキーワードとして取り上げていた事がよくあった事を一番に思い出す。

宇関の呼び掛けのお陰で、昨年6月から再び二人で主に調布GINZにて全編完全即興のライヴを行わせて頂いている。アンコールでたまたま「Spain」を演奏したところ、当時の思い出の様なものがチックへの憧れと共に蘇る残像を見た気がした。

チックの数々の名曲に現れるのは琴線に触れるが如く『蝶の様に舞い、蜂の様に刺す』メロディーだと評したのは元スウィング・ジャーナル編集長、故・中山康樹氏であるが、何とメランコリックなアクが抜けない人なんだろうと思う。かの「Spain」はB’z 松本孝弘氏が過去にヘヴィメタルとして演奏しているが、そのハマり具合といったらとてもメタルの様式美的感覚としても素晴らしい。人を焚き付ける何かが常にあるのだろう。

アブストラクトなメロディーでも、リズムがハッキリある事からその楽しさを拾う事も出来る。例えば初期のバンド、サークルでもどれだけフリーキーな演奏になってもメンバーによるメロディーというオモチャ箱を使った音遊びという感じにも取れると感じる。

自分がチックが亡くなったと聞いて、一番最初に手元のライブラリーから引っ張り出したのはアルバム『A.R.C.』(ECM1009)の「Nefertiti」でした。
この衝撃には未だに敵わない。
とてもポップに聴こえる。
そしてトンガってる。
その後トリオ・ミュージックのライヴやらフレンズやらゲイリー・バートンやボビー・マクファーリンとのデュオやら聴いたけど、何だか不思議と彼の居ない悲しさよりも彼の音楽を浴びる嬉しさからの笑顔しか出て来なかったな。

音楽の聴き方の可能性を広げてくれたのも矢張りチック・コリアその人であったと、あらためて感謝を致します。


みどりん Midorin – drummer
1978年福島県出身。SOIL&”PIMP”SESSIONS、J.A.Mのドラマー。SOIL&”PIMP”SESSIONSの活動では世界最大級のフェスティバルであるイギリスの”グラストンベリー”に2度出演、J.A.Mでは’10年に2ndアルバム『Just Another Mind』をリリースし、Billboard Japan Music Award 2010で”優秀ジャズアーティスト賞”を受賞した。
また様々なアーティストのライブ、レコーディングに参加。
近年では、Superfly、ノラ・ジョーンズのJAPANプロモーション、ハナレグミ、BONNIE PINK、椎名林檎、原田知世、福原美穂などにラブコールを受け、共演を果たしている。
2021年3月17日には、SOIL&”PIMP”SESSIONS初のJAZZカヴァー作品となるミニアルバム『THE ESSENCE OF SOIL』をリリース。今作ではメンバーそれぞれがどのようなJAZZのルーツを持っているのか源流を辿る。 SOIL&”PIMP”SESSIONS 公式ウェブサイト

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