食らいついて by 松井宏樹

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Text by Hiroki Matsui 松井宏樹

「もっとビューっとやるんだよ!」
「一瞬のタイミング逃したら音が生きないぞ!」
「いつも世界のトップレベルを見ろ!」
「周りを生かすも殺すも自分次第!」

今でも大切にしている言葉は全てオマさんからの頂き物。今僕が音楽できて、音楽を考えていられるのはオマさんのお陰だなと、亡くなられてから特に感じている。

Oma Sound に入ったのは2012年頃。音楽家としての自分の行き詰まりや、震災の影響で心が閉塞感に満ちていた時の青天の霹靂だったのを覚えてる。
入りたて初期はオマさん、加藤一平くん、平瀬祐人くんや吉良創太くんと共に、毎週のように学芸大学のスタジオでリハーサル。オマさんがその日パチンコでゲットした菓子パンを大量に振舞ってくれるところからスタートしていた。
それから適当にダベって、リハーサルはと言えばそれまでの僕の音楽観を見事に覆す!!謎満ちた時間だった。譜面がない、あったとしてもオマさんが提示するのは譜面と違うこと、は当たり前。そんなことこれまで経験してこなかった。
そして僕はプレイしては叱られる。。(この当時のオマさんはかなり丸くなっていたようだがそれでも怖いす)
自分のあまりの不甲斐なさに正直、共にステージに上がるのが怖い時もあったが、オマさんの音楽に触れていたい、オマさんに認められたい (ギャフンと言わせたい!) 一心でおよそ4~5年、お世話になった。

だけどなんだろう。
オマさんと過ごした日々を経ても、とても成長させてもらったけど、根っこで僕は僕のままだった。と今感じている。無論良い意味で。
オマさんが望むようなプレイを研究し、バンドに沿うようなアプローチやアンサンブルを心掛けた。でもバンドや僕がオマさんの思うようにいかなくても、叱りながら僕を尊重してくれてた。気がする。

「これを吹け」じゃなくて「こうやって吹け」を提案してくれて丸々プレイを入れ替えるのではなく、今ある「いいこと」を生かすために何が必要なのかを、哲学的に提示してくれた。
「周りを生かす」を体現してくれてたのかな。僕たち年下ミュージシャンにかけてくれた数々の言葉は、冒頭の言葉含め、オマさん自身の鍛錬の為に唱えていた物なのかもしれない。

オマさんはスポンジのような人だった。演奏中でも何気ない世間話中でもその場を全部吸い取って、自在に自分の姿や場の空気を変化させていく。
変化させなきゃ気の済まない人だった。しかも凄まじい速さで。
それでいて時には、海の真ん中で周りを一切介さずプカプカ浮かんでるような、真芯の強さがあった。
スポンジが水を吸って膨張したり吐いてしぼんだり、を繰り返すような変幻自在な会話を何度もした。
それは時に(さっきまでと言ってること全然違う!)という事態を引き起こし、トラブルの種になったのだが。。まあご愛嬌。

もう叱ってくれる、鼓舞してくれる恩師と面と向かって喋れないのは寂しい限りだけど
遺してくれたものはずっと心で浮かんでるから。
これらを一生かけて考えるのは長い道のりです。とんでもない宿題。

とにかくありがとうございました。
修行しておきますんで、また僕の音聴いてやってください。


松井宏樹 Koki Matsui – Alto & Soprano Saxophone, Composer
1983年福岡生まれ。鈴木勲 辛島文雄 福村博 南博 向井秀徳ほか共演者多数。新宿ピットイン昼の部を拠点に自己のバンドを活動させ続け2020年3月リーダーカルテット「gradate」 1stCD「うつろい」リリース。その他 Jongdari13 / DOBU SOUND SYSTEM. / 松井宏樹SOLO / 林栄一 MAZURU Orch など様々な形で活動中。2020年8月より長野県松本市在住。

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