#1483 『Fish From Hell / Moby Dick Wanted !』
text by 定淳志 Atsushi Joe
Freddy Morezon(Mr Morezon 015)
Fish From Hell:
Marc Démereau – baritone saxophone, music saw
Fabien Duscombs – drums, percussions
Sébastien “Bakus” Bacquias – contrabass, loops
- Océans
- La Chasse
- Récifs
- Rivages Barbares
- Moby Dick
- Struggle
- Le Calme avant la Tempête
- Deep
- Les Obsessions d’Achab
- Le Naufrage
recorded Sep. 2016
フランスのレーベル Freddy Morezon からの最新作(本稿執筆時点)。バリトンサックスを中心としたコードレスサックストリオによる音楽は、タイトルが示す通り、小説家サマセット・モームが『世界の十大小説』の一つに位置付けたハーマン・メルヴィルの古典的名作『白鯨(Moby-Dick)』がテーマで、もともとは2015年3月に創作された音楽劇なのだそうだ。各曲のタイトルも、<大洋><狩り><サンゴ礁><野蛮海岸><モビィ・ディック><死闘><嵐の前の静けさ><海溝><エイハブの執念><沈没>と、作中の様々な場面を表現しており、それぞれ標題音楽として聴くことが可能だ。
トリオはアコースティックなフリージャズのほか、ミュージックソーやらループやらシンバル擦音やらを効果的に使って、一連の音楽劇を盛り立てる。多くの曲で“主演”を務めるバリトンサックスのマルク・デメローは、各場面の情景、表情、感情を、精彩に幅広く演じ分け、非常に高い技倆を感じさせる。<狩り><死闘><エイハブの執念>といった曲では、狂気すら感じられる人間側の激しさを表現する一方、<モビィ・ディック>は激しさと同時にどこか哀しみに満ちた存在として描いている(ように聴こえる)のが興味深く、最終曲<沈没>が余韻を残す。
Marc Démereau、Fabien Duscombs、Sebastien Bacquias