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YUMI'S ALLEYArchiveNo. 202

Yumi’s Alley #26「祝20周年!阿佐谷ジャズストリート2014」

text &b photos: Yumi Mochizuki 望月由美

「阿佐谷ジャズストリート2014」、今年は20周年の節目にあたり、「ジャズで二十歳になりました」というキャッチコピーのもと杉並区全体が大いに盛り上がりこのイヴェントを楽しんでいた。時には大雨に見舞われる年もあったが今年は10月24日(金)と25日(土)の二日とも天候にも恵まれどの会場も立ち見がでるほどの大盛況であった。1995年の第1回スタート時は13か所だった会場も65か所以上に広がり、青空のもと無料で楽しめるストリート会場、共通パスポートで全会場自由に入れるパブリック会場、そして阿佐谷のライヴハウスやレストランなどのバラエティ会場でさまざまなセッションが繰り広げられた。
今年の阿佐谷ジャズストリートは20周年と2020年のオリンピック・パラリンピック招致決定、そして自動車の杉並ナンバー発行を記念して盛大にパレードが行われた。
パレードは25日(土)の午前中、区役所前からスタートし、JR阿佐谷駅南口噴水前まで。
先導は警視庁騎馬警官隊が務め、若干の交通規制はあったものの車の行き交う中でのパレードであった。

警視庁交通騎馬隊

 

☆記念パレード
パレードは杉並区長や実行委員会が先頭に立って大会を盛り上げる。

☆ディキシーランド・パレード
続いてニューディキシーモダンボーイズや早稲田ニューオルリンズジャズクラブがディキシーを奏でながら練り歩き、ジャズのムードを演出。

☆記念セレモニー
阿佐ヶ谷駅南口噴水前特設ステージには杉並区長、阿佐谷ジャズストリート実行委員長などが勢ぞろい、現在杉並に在住するロサンゼルスやソウル・オリンピックに出場した水泳の長崎宏子さんが挨拶をして花を添えた。

photo: 大賑わいの阿佐ヶ谷駅南口噴水前

☆米国空軍太平洋音楽隊
記念セレモニーに続いて25日のオープニング・ステージは米国空軍太平洋音楽隊。
米国空軍太平洋音楽隊は阿佐谷では大人気のオーケストラ、<A列車で行こう>~<イパネマの娘>が演奏されると熱狂的なファンで広場は盛り上がる。

あまりの人だかりでステージが見えないほどであるが心配は無用。阿佐ヶ谷駅南口噴水前のステージを見るには実は絶好の穴場がある。JR阿佐谷駅のホームからは緑に囲まれた特設ステージの全景が一望でき、時おり電車が入ってくるのも風情があってよい。

☆山下洋輔SOLO & MORE at 神明宮能楽殿
24日金曜の夜、阿佐谷恒例の山下洋輔は自己のユニット「山下洋輔SOLO & MORE」で神明宮能楽殿に登場。山下洋輔(p)、熊本比呂志(per)、米田裕也(as)、赤塚謙一(tp)という全員が国立音大出身者のフレッシュなユニット。昨年は病気療養中のため日野皓正h factorに代わってもらった山下洋輔の出演とあって神明宮周辺は日の暮れる前から長蛇の列ができ開演前からいやが上にも気勢があがる。

演奏に先立って杉並区長や阿佐谷ジャズストリート実行委員長、宮司さんなど多くの方々が祝辞を述べ、ジャズストリートの20周年を祝った。宮司さんのお話によると、昨年の伊勢神宮式年遷宮で取り外された鳥居を神明宮がもらえることになり、来年のジャズストリートまでには鳥居を建てることができるというおめでたいニュースも伝えられた。

photo: 杉並区長 田中良さん | 宮司さん 実行委員長の渡辺功一さん

定刻の午後6時、山下洋輔が登場、来春公開予定の映画音楽として作曲したというクルト・ワイルの曲のようにドラマチックな曲をソロで演奏、境内の空気を手中に収めた。

photo: SOLO at 神明宮 山下洋輔

ピアノ・ソロで会場をうっとりさせた後メンバーが舞台に登場「山下洋輔SOLO & MORE」の演奏がスタート。

photo: 山下洋輔(p) 赤塚謙一(tp) 米田裕也(as) 熊本比呂志(per)

photo: 軽妙なスピーチで聴衆の心をひきつける山下洋輔さん

☆峰厚介スーパーセッション at 産業商工会館
25日(土)の夕刻は産業商工会館の顔、テナーの重鎮、峰厚介のスーパーセッション。峰厚介(ts)、板橋文夫(p)、米木康志(b)、本田珠也(ds)の強豪4人組。峰厚介と板橋文夫の有名な代表曲と本田竹広の曲を中心にアコースティックジャズの極致を展開した。

photo: 板橋文夫(p) 米木康志(b) 峰厚介(ts) 本田珠也(ds)

この日の峰厚介はいつになくホットに燃え、美しい音色に加えて力強いマスター・テナーの底力を発揮した。

photo: 峰厚介(ts)

ファースト・ステージの1曲目は板橋文夫の大ヒット曲<花満開>。スタートと同時に猛ダッシュの板橋にカルテットは強烈にスイング、続く板橋の代名詞<渡良瀬>へとなだれ込み、客席から歓声が沸き起こり会場は熱い熱気に包まれる。

photo: 板橋文夫(p)

続いて今年の7月に亡くなったチャーリー・ヘイデン(b)の<ELLEN DAVID>。ここではベースの米木康志がフィーチャーされ、ヘイデンを偲んだ。

photo: 米木康志(b)

このバンドは日頃「本田竹広トリビュート・バンド」として故本田竹広(p)の曲を演奏していることもあって、この日も本田竹広の<MINOR’S ONLY>を演奏、フィーチャーされた本田竹広の子息、本田珠也(ds)のドラムが爆ぜた。

photo: 本田珠也(ds)

☆ストリートを楽しむ
この2日間、阿佐谷の街を歩いているといたるところでジャズと出会える。JR阿佐谷 駅高架下のゴールド街の前では昨年から登場したマリンバが今年は二重奏で登場、きれいな女性のデュオとあって黒山の人だかり。

<シャレードを演奏するマリンバ二重奏>
JR阿佐谷駅北口にある老舗古書店では毎年ジャズストリートの2日間「ジャズ本特集」を開いている。古いジャズ本から昔のコンサートのプログラムまでが揃えられ本の背表紙を見ているだけでジャズの歴史がよみがえる。

☆ディスクユニオン at 阿佐谷ジャズストリート2014
今年は初めての試みとしてディスクユニオンがジャズストリートに登場。阿佐ヶ谷駅南口噴水前の特設ステージの隣に出店した。黒地に赤のdisk UNIONの文字はなかなか決まっている。テントの中には新着中古CDからベストものまでがずらりと並び特設ステージから流れてくるジャズを浴びながらCDをあさる人でテントはいっぱい、先ずは大成功。

☆椎名豊カルテット+豊田チカ
例年、ジャズストリート二日目の土曜日には様々なセッションが繰り広げられて阿佐谷のメイン会場のひとつとなっている杉並第一小体育館。小学校の体育館なので土足禁止、靴を持って素足での鑑賞もリラックスできて結構楽しい。
豊田チカ(vo)は母マーサ三宅(vo)、姉大橋美加(vo)とともに阿佐谷の常連の一人。一方の椎名豊(p)は阿佐谷ジャズストリートの第1回目に出演したという縁の深い結びつき。二人の人気は絶大で300人キャパの体育館がほぼ満席、今年のジャズストリートはどこも盛況。

photo: 椎名豊(p)カルテット+豊田チカ(vo)

豊田チカと椎名豊の二人は阿佐谷ジャズストリートの名物!スーパージャムセッションにも登場、豊田チカは<月の砂漠><キャラバン>などを、スキャットを交えて歌った。

photo: 豊田チカ(vo)

一方の椎名豊は竹内郁人(as)とジャム。竹内郁人は例年、阿佐谷北口パサージュ前をホームグランドとしている、やはり阿佐谷ジャズストリート、ストリート会場の常連でこの日もパサージュ前の演奏を終えて駆け付け、ジャムセッションならではの共演が実現した。  ジャムセッションの司会は例年野口久和(p)が担当しているが、多くの新人ミュージシャンとベテラン・ミュージシャンとの顔合わせなど珍しいセッションがみられる。

photo: 椎名豊(p) 竹内郁人(as)

☆ジャズ・アート展
この時期パールセンター商店街には杉並区の小学生の制作したジャズ・アートが展示され行き交う人の目を楽しませてくれる。ジャズ・アートの出店数は年々増え、今年は中学生の参加も2校あり、そのレベルも上がっている。多くの作品の中から中学校の2作品と小学校2校の作品をご紹介。

photo: 杉森中学校

photo: 阿佐谷中学校

photo: 東田小学校

馬橋小学校

☆阿佐谷ジャズストリート2014
今年の阿佐谷ジャズストリート2014は10月24日(金)、25日(土)の二日間、晴天に恵まれて街中がジャズを楽しむ人で賑わい成功裏に終わった。今年は20周年という節目の年でもあり、山下洋輔、峰厚介、鈴木良雄、マーサ三宅などのベテラン勢に加えて南佳孝や今陽子など人気アーティストも出演、多くの人が20周年を祝った。
ジャズストリートを企画し支えるのは実行委員会で、すべてボランティアで運営されている。阿佐谷ジャズストリート実行委員会のお話によると出演バンド数は190近く、出演ミュージシャンも1100人を超え、観客数は二日間で延べ8万人という過去最高の祭典であった。(2014年11月)

photo: 中杉通りを行進する警視庁交通騎馬隊
初出:Jazz Tokyo #202 (2014.11.09)

望月由美

望月由美 Yumi Mochizuki FM番組の企画・構成・DJと並行し1988年までスイングジャーナル誌、ジャズ・ワールド誌などにレギュラー執筆。 フォトグラファー、音楽プロデューサー。自己のレーベル「Yumi's Alley」主宰。『渋谷 毅/エッセンシャル・エリントン』でSJ誌のジャズ・ディスク大賞<日本ジャズ賞>受賞。

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