Earth Wind & Fire 久保智之
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私の「ジャズ事始」は、ジャズ曲とは言えないと思いますが、Earth Wind & Fireの『I AM』の一曲目、<In The Stone>を挙げようと思います。
中学生の頃にこの曲を聴いて、イントロのハーモニーに衝撃を受けました。濁りのないカラッとした響きなのに、普通じゃない強烈な存在感。ハーモニーの中の音が半音ずつ動くたびに、曲の色合いがどんどん変わっていく不思議な感覚。当時のロックやポップスでよく聴かれるCとかG7のシンプルな響きとは違う世界があることを知って驚きました。そして、そういった「普通じゃない」サウンドに惹かれていきました。当時はよくわかっていませんでしたが、ハーモニーの中の4度系のオープンな感じや9th、13thなどのテンション感にハマったのだと思います。また、ブラスセクションの音やリズムも衝撃的でした。これが私のジャズへの入り口だったのではないかと思います。
当時はジャズ系の音楽としては、「フュージョン」全盛期でした。フュージョン曲にはこうしたテンションがたくさん含まれていたので、どんどんハマっていきました。13th、#11thなどのテンションの音や、G/Aなどの響きがとても心地好くて、こうしたハーモニーの入った曲を探しては聴いていきました。そうしていくと、フュージョン系以外にもソウル系やAOR、ブラジル系、また日本のポップスにもこうしたハーモニーが多く含まれている曲があることがわかり、そうした曲もジャズだと思いながら聴いていました。こうした音楽ばかり聴きすぎて、13th、#11th、#9th、などの音が数字として聴こえてきてしまうほどでしたが、それがなんだか気持ち良かったのでした。そして、13thと#9thの響きが特に気に入っていた時、ジャズの音楽理論書を読んでいたところ、この二つのテンション音は、コードでとらえた時に裏表の関係にあることがわかりました。これには驚きました。ハーモニーの成り立ちが数遊びのようにもとらえられることがわかって、ますますジャズ系の音楽の面白さに惹きつけられたのでありました。
これまで長くジャズ系の音楽を聴いてきていましたが、自分の入り口はこのような感じでハーモニー中心で聴いていたせいか、ジャズのアドリブソロのフレーズなどには実はあまり深く意識が向いていなかったかもしれません。でも最近、演奏の練習をしていく中で「b9th」や「b13th」の音が意識的に耳に入ってくるようになりました。自分のボキャブラリーとして入ってきたような感じです。そうなると、いろいろなアーティストのソロ中の音でもオルタード系の音が、これまでよりよく聴こえるようになって、印象が少し変わってきたのです。いやぁ面白い。よく聴こえていない音はまだいろいろとあると思いますので、今後もジャズ系のハーモニーのボキャブラリーを増やして、もっと「ジャズ」を楽しめるようになりたいと思っています。
フュージョン、Earth Wind & Fire、テンション、ハーモニー、コード