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Jazz and Far Beyond

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特集『私のジャズ事始』

『Return To Forever』  村井康司

1973年元日の早朝に、FMラジオで『Return To Forever』を偶然聴いて、それまで興味がなかった「ジャズ」という音楽に関心を抱いた。その年の春に高校に入学したら、なんとそこには「ジャズ研」というサークルがあるではないか。中学時代からギターを弾いていた私は、学内ではジャズ研、学校の外ではロックバンドという音楽三昧の暮らしを送ることとなった。
ジャズ研の2年上にはとても上手い先輩たちがいたのだが、1年上には部員がおらず、彼らが卒業すると残るは2年生3人(ギター、ベース、ドラムス)だけ。幸い新入生が何人か入ってくれたのでジャズ研は存続した。で、どんな曲をやっていたといえばブルースと何曲かのスタンダード、そしてハービー・マンの〈Memphis Underground〉。学園祭の野外ステージでこの曲を延々やってひんしゅくを買ったことを覚えている。
「課外活動」という名目でジャズ喫茶にも出入りするようになった。当時函館には素敵なジャズ喫茶がいろいろあったのだが、いちばんよく行っていたのは「アルフィー」という店。とてもバランスのいい選曲をするところで、ハードバップもコルトレーンもエレクトリック・マイルスもここで教えてもらった。
学外でのロックバンドの方はオールマン・ブラザーズやドゥービー・ブラザーズなどのコピーの他にオリジナルもやり、高3のときにはヤマハのポピュラーソング・コンテストで北海道代表になったりもしたのだが、大学に入って上京すると、それ以後はジャズにずぶずぶに浸かって約50年、今日に到る。


村井康司(むらい・こうじ)
音楽評論家、編集者。1958年、北海道函館市生まれ。著書に『あなたの聴き方を変えるジャズ史』、『ページをめくるとジャズが聞こえる 《村井康司 ジャズと文学》の評論集』、『100年のジャズを聴く』(後藤雅洋、柳樂光隆との共著)(以上シンコーミュージック)、『JAZZ 100の扉』、『現代ジャズのレッスン 1959年から考える』(以上アルテスパブリッシング)ほかがある。尚美学園大学音楽表現学科講師(ジャズ史)。鎌倉FM「世界はジャズを求めてる」パーソナリティ。2024年4月から東京・四谷のジャズ喫茶「いーぐる」にて、月1回の連続講演「時空を超えるジャズ史」を開講中。

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