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R.I.P. ゲイリー・ピーコックNo. 270

ゲイリー・ピーコック
まさにワン&オンリーなベース・スタイル bassist 納 浩一

Text by Koichi Osamu 納 浩一
Photo by Roberto Masotti

彼を初めて聞いたのは、1983年、彼とキース・ジャレット、ジャック・ディジョネットの3人で結成された、そしてその後40年近くにわたって活動することとなる、「スタンダーズ」の第1作目で、でした。

そのリリカルなプレイスタイルから繰り出されるベースは、彼がソロを取っているときのみならず、キースのソロの伴奏のときですら、その後ろで唄いまくっています。それを初めて耳にした、当時まだ23歳、ジャズを初めて数年目の僕は、「ああ、こんなスタイルのベーシストがいるんだ!」と、本当に刺激を受けました。
もちろん、それ以前に、そういったスタイルのパイオニアとも言うべきスコット・ラファロが、ビル・エバンスのピアノと、絶妙な対話を繰り広げているのですが、キースとピーコックのそれは、さらにその対話を、より濃厚な、そしてグルービーなものに発展させているように感じます。
キースの、あの天才的なピアノプレイに、あのように濃密に絡んでいくということは、同じベーシストの立場で考えても、並大抵のことではありません。いや、ピーコックくらいしか、そんなことが出来るベーシストはいないのではないでしょうか?
同じことはジャックのドラミングにも言えます。だからこのトリオが40年近くも続いたのでしょう。しかもスタンダード一筋で。

彼がしばらくの間、日本の、しかも京都で暮らしていたということも、そのプレイスタイルに大きな影響を与えたであろうと考えると、日本人として嬉しくもあり、一方、同じベーシストとして、しかも京都で学生時代を過ごしていた身としては、ちょっと悔しい思いもあります。

いずれにしても、本当にワン・アンド・オンリーなスタイルとサウンド、フレージングを持つピーコックがこの世を去ったことは、またジャズの大きな星が一つ消えてしまったということ。

謹んでご冥福をお折りします。


納 浩一 Koichi Osamu Electric & Acoustic Bass
1960年10月24日、大阪生まれ。京都大学卒業後、バークリー音楽大学に留学。1985、1986年度のバークリー・エディ・ゴメス・アウォード受賞。1987年に同大学作曲編曲科を卒業。
帰国後は都内のライブハウスやスタジオセッションを中心に活動。1996年〜2008年、渡辺貞夫グループのレギュラー・ベーシストとして全国ライブハウスや、モントルージャズフェティバルをはじめとする海外ジャズフェスティバルなどに多数に出演した。2001年より、大坂昌彦、小池修、青柳誠とのユニット「EQ」でアルバム8枚をリリースし、「東京JAZZ 2004」など数多くのライブ活動を展開してきた。現在はクリヤ・マコト、則竹裕之と共にユニットを組み、2016年にアルバム『Acoustic Weater Report』、2019年に『Acoustic Weater Report 2』を発表し、国内ジャズフェスや日本中のライブハウスでの演奏活動を展開中。
1997年、初リーダーアルバム『三色の虹』を、1999年には布川俊樹との共同アルバム『DuoRama』をリリース。2006年、リーダー作『琴線/The Chord』をリリース。2009年、布川俊樹との共同アルバム第2作目『DuoRama 2』、2015年、第3作目『DuoRama Standards』をリリース。
教則DVDは、「すぐ弾けるジャズ・ベース」「ジャズベース・スタンダード」(リットーミュージック)、「ウォーキング・ベース自由自在」「ウッド・ベースの嗜み」(アトス・インターナショナル)を制作。またジャズスタンダード曲集「ジャズスタンダード・バイブル1・2」「ジャズスタンダード・バイブル・フォー・ボーカル」やソロ集「ジャズスタンダード・バイブル for ADLIB」、ジャズの理論書「ジャズ・スタンダード・セオリー」をリットーミュージックより出版し、好評を博している。
納 浩一 オフィシャルウェブサイト

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