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Jazz and Far Beyond

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CD/DVD DisksNo. 220

#1329 『チョビ渋』

text by Kenny Inaoka 稲岡邦弥

B-68F  1,000円+税(北海道限定)

 

チョビ渋
アルトサックス 後藤更紗  小山菜生  松原慎之介  平澤舞彩  矢田楓
テナーサックス 後藤紅絹  矢田渓佑
トランペット 佐藤愛莉  竹山純一朗  古幡宇海  吉野菫  氏家日葵
トロンボーン 江刺家勇  斉藤百恵  金丸彩乃  平澤龍
ピアノ 角谷美音
ギター 傳法瑠樹
ベース 小林海
ドラム 関裕太  宮崎隼門
パーカッション 山谷洋介
鍵盤ハーモニカ 早坂真周
ヴォーカル 杉森千文  祐川彩葉  高島伊織  斎藤和花
ダンドリ 佐藤奈月

1.本多畳店のテーマ
2. Open the Gate
3. かいじゅう
4. 2013Miles
5. Sosu
6. 三角大福中
7. 気まぐれ
8. 日の出

録音:田中篤史@芸術の森アリーナ、2013/3/16
ミキシング&マスタリング:石崎信雄
プロデューサー:不破大輔

 

京土産を思わせる八角形のアンティーク風パッケージを開いた途端、飛び出してきたのははち切れんばかりの若さ溢れる音の洪水!
まさに、びっくりぽんだ!(古い!?)
『チョビ渋』というタイトルの「渋」に、何かあるかな?とは警戒はしていたのだが...。
これは、「渋さ知らズ」の孫弟子たち? リフの上に奔放なソロが展開されるというパターンは「渋さ」を踏襲しているけれど、ソロのはじけ方は「渋さ」も青くなるほどの強烈さだ。
カウント・ベイシーのオーケストラだって旗揚げした頃は、ろくに譜面を読めないメンバーがリフを繰り返して、ソロをサポートしてたんだ。
しかし、この子たちは違う。解説によると「チョビ渋とは、2年前までの3年間、札幌で行われていた渋さ知らズによる中学から高校1年までの子供たち向けワークショップ」ということだ。
渋さ知らズのワークショップというと、以前本誌でも紹介した『十中八九』を思い出す。「十中八九」は、東日本大震災からの復興に励むいわき市で渋さ知らズが敢行したワークショップで、若者からサラリーマン、自営業者たち市民がメンバーだった。ワークショップを繰り返したあと、助成金やクウドファンディングで集めた資金でCDを制作、国内だけでなく、海外にも遠征したはず。
「チョビ渋」は中高生がメンバーだったので、すでに解散したそうだが、中にはバークリー音大に進学してミュージシャンへの道を目指している者もいるという。「十中八九」も「チョビ渋」もワークショップの中心となっているのは「渋さ知らズ」のダンドリスト不破大輔だが、彼のこれら地道な実践と行動力には心底感服する。彼の働きがムーヴメントになり各地に波及すれば日本の音楽状況も大きく変わるのではないか。東京、名古屋、神戸(海外では、ニューヨークとベルリン)にオーケストラを持つ藤井郷子の活動はミュージシャンを鼓舞するものだが、不破大輔の活動は中高生や一般市民を鼓舞するものだ。
「チョビ渋」に収録された8曲は全てメンバーのオリジナル、中に<三角大福中>なんて、70年代の自民党総裁選のキーサードがあったりして驚くが、ジャジーなビッグバンドから和製ファンクに行きそうなナンバーまで。楽想に共通してどこか「和」のテイストが感じられるのはやはりどっぷりジャズにはつかっていない中高生ならではだろう。大人顔負けのアブストラクトなソロに混じって時折り聞こえる可憐な女性コーラスにはっと我に帰る瞬間もあり、どこまでも楽しい。メンバー表を見ると女子が圧倒的、男子は各セクションにひとりずつ、という感じである。今や中学校のブラバンは全員女子などというのも珍しくはないご時世だが、それにしても頼もしい限りだ。
3年前の記録だが内々に留めておくのはもったいないと公開したのだろうが充分その価値はある。「北海道限定」とあるが全国で入手可能。

https://www.facebook.com/chobishibu/

取扱い:地底レコード オンラインショップ
http://chitei-records.jp/blog/
音楽処
札幌市中央区南1条西4丁目 4丁目プラザ7F 自由市場内
http://www.ondoko.jp/top.shtml
渋さ知らズ ライブ会場

稲岡邦彌

稲岡邦彌 Kenny Inaoka 兵庫県伊丹市生まれ。1967年早大政経卒。2004年創刊以来Jazz Tokyo編集長。音楽プロデューサーとして「Nadja 21」レーベル主宰。著書に『新版 ECMの真実』(カンパニー社)、編著に『増補改訂版 ECM catalog』(東京キララ社)『及川公生のサウンド・レシピ』(ユニコム)、共著に『ジャズCDの名盤』(文春新書)。2021年度「日本ジャズ音楽協会」会長賞受賞。

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