Jazz and Far Beyond
また、グラウコが、ソロ・ピアノの輝かしい伝統を持つECMで自分に何ができるかと考えたというのも納得する。穏やかな時間の流れと緊張感の中にグラウコの美意識が確実に表現され、ECMの中にあっても極めて密度の高い作品となっている。
海外の<この1枚>も2枚がブラッド・メルドーがらみで、今日のジャズでは最も魅力に富み、2枚とも味わいと奥の深いアルバムだった。
多文化主義がさまざまな軋轢を生み出す現在、多様な文化が出会い、行き交い、交感する空間こそが求められているのではないか。本作が生まれたことに時代の必然性を感じている。これもジャズという開かれた精神の音楽がベースにあればこそ。
ポスト・マリア・シュナイダーの最右翼ダーシー・ジェイムス・アーギューの圧倒的な新作は、グラミー賞ベスト・ラージ・ジャズ・アンサンブル・アルバムにノミネートされた。並みいるライヴァルたちを押さえての受賞が期待される。
フリージャズの闘士アラン・シルヴァ、多彩極まりないアルトを吹くメテ・ラスムセン、ふたりのポテンシャルを高めるストーレ・リアヴィーク・ソルベルグの3人による刮目すべきセッションの記録。
私自身、今まで経験しなかった録音とミックス技術を尽くした録音表現作品だと思う。
アルバム『Mauch Chunk』(hot cup Records)はモッパ・エリオット(b)のグループMOPDK「Mostly Other People Do the Killing」の新作であるがアルト一本に絞ったイラバゴンがメイン・ストリームとフリーの間を行き来しながら存分に暴れまわっているところが痛快極まりない。
オバマ大統領等の努力でアメリカとキューバの関係が劇的に良くなった今、“マッド・ドッグ”トランプの登場で再び暗雲が漂いつつあるが、アロルドやフォンセカ、トスカ等の才能ある若手達がその魅力ある音楽で、黒雲を強烈に吹き飛ばしてくれること、切に願いたいものです。
身を以てジャズの伝統、スピリットを次世代に伝えるべく献身するディジョネットの心意気に打たれる。
「即興演奏家による作曲作品のリアライゼーション」ならぬ「作曲作品による即興演奏のコンポジション」とでもいうべき音楽。いずれにしろ驚異的な新しい才能が現れたことには間違いがない。
今年も海外編はクリス・ピッツイオコスにとどめを刺す。新境地を切り開く自己のカルテットのデビュー作は何度聴いても刺激が薄れることはない。
ビリー・ハートとクリストフ・シュヴァイツァーのふたりに共通する美点は、そのツボを押さえた大局的な音楽展開はもちろんのこと、音楽の血であり肉であるソウルフルなフィーリングが極めて自然に湧出する点にある。切り口は知的で多彩だが、いかなる時も音楽としてブレがない。