「コルトレイン」のヴィレッジ・ヴァンガード 青野浩史
ジャズとの出会いは偶然でした。
1971年10月のある火曜日の夜。たまたま聴いていたNHK第一放送のラジオ番組「若いこだま」で、かかったコルトレーンにやられました。ただただひたすら長い演奏でしたが、聴いているうちにその演奏のカオスや演者が高揚して行く様に圧倒されている自分に気づきました。それはロック音楽では受けた事のない別種の深い感動でした。
その夜の番組のDJは芹沢のえさん。後に彼女はロンドンのヴァージン・レーベル本社に在籍されましたが、1980年代前半には日本でのヴァージン・レーベルのスタッフとして、配給元のビクターで勤務され、なんと私の向かいのお席でお仕事を。この時、私はビクターのジャズの担当者として仕事をしておりましたので、あの夜の選曲に改めて心よりの感謝を申し述べた次第です。
しかし自分のジャズの原点となったコルトレーンの楽曲は何か？ ラジオ放送後には、アーティスト名を「コルトレイン」と書き残すのが精一杯で、楽曲名まで控える事は出来ておりませんでした。
「若いこだま」で検索すると、当時の月曜日から土曜日までのDJの皆さんが揃って写ってる写真が出てきます。水曜日担当は、今は亡き相倉久人さん。同じ水曜日担当の馬場こずえさんがその写真の中で抱えてるジャケが、なんとコルトレーンの「ライヴ・アット・ザ・ヴィレッジ・ヴァンガード」(Impulse) なんです。もしかしたら、あの夜かかった長尺のナンバーはこのアルバムからの1曲？かも。となると「スピリチュアル」か「チェイシン・ザ・トレーン」か？「スピリチュアル」だったとすると、もしかしたらドルフィーを聴いて痺れていたのかもしれない、、はて？
自分で担当したCDを聴いてみます。こういう時はオリジナル・フォーマットのCDが役に立ちます。編集物やコンプリート版だと、こうはいかないですね。
ん〜 15歳だった時のあの熱狂には程遠い気はしますが、この「チェイシン・ザ・トレーン」には、時代を超えた狂気が間違いなくある様に思いました。
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「若いこだま」NHKラジオ第一放送
(1970/4/6-1978/11/17)
毎週月曜日〜土曜日 22:20~23:00
1971年当時のDJ (敬称略)
月曜日 高橋万里子
火曜日 芹沢のえ
水曜日 相倉久人・馬場こずえ
木曜日 江守徹
金曜日 立野恵子
土曜日 かぜ耕士
青野浩史
早稲田大学法学部1978年卒。在学中はニューオルリンズジャズクラブでクラリネットを担当。水道橋「SWING」に通い詰めたクラシック・ジャズ好きはこの時代から。このサークルの先輩に外山恵子、喜雄ご夫妻や故伊藤八十八氏らがおられる。
日本ビクター(株)に入社後直ぐに同社のレコード部門であったビクター音楽産業(株)に出向。洋楽部に配属され、1979年からはジャズ業界屈指の名ディレクター=下田哲也氏の後任としてジャズ担当に。Prestige, Riverside, Contemporary, Milestone, Pablo, Galaxy, Fantasy, Palo Alto azz, GRPといったレーベルを担当。後には業界常識となった「オリジナルマスターからのCD化」を企画提案/推進をして、CDマーケットの拡大に貢献。オノセイゲン、橋本一子、佐久間正英各氏のそれぞれのデビュー作品や鈴木良雄の名作「モーニング・ピクチャー」などを手がけ、『ミュージックインテリア・シリーズ』として発売。
1991年日本ビクターと米MCA社が作った合弁会社MCAビクター社に移動。洋楽部門の取りまとめと同時にImpulse、Decca、Argo、Dot、ABC、MCA/GRP等のジャズ作品に関わる。GRPと契約したチック・コリアとの交流は、彼が2021年に亡くなるまで続いた。2000年合併したユニバーサルミュージック社へ。ここでも執行役員として一貫して洋楽とジャズ（Verve, ECM, EmArcy, Concordといったレーベルなども）を担当。2010年に独立。
その後はコンコード・ミュージック・グループのコンサルタントを経て、フリーのプロデューサーとしてチック・コリア、セルジオ・メンデス、ハクエイ・キムそして韓国のMoonのアルバム制作などに関わり、現在に至る。
制作に関わった5つのジャズ作品がグラミー賞を受賞。
2019年より社団法人日本ジャズ音楽協会副理事長。
現在、下北沢「3313アナログ天国」にて毎月「Nothing but Jazz」イヴェントを開催。これは最高のオーディオシステムで最上のジャズアナログレコードを聴く集まりで、「アナログレコード収集」というマイブームも再燃中。