Gallery #42 Bill Evans/Laurie
text by Kenny Inaoka 稲岡邦彌
photo by Laurie Verchomin ローリー・ヴァホーミン
JazzTokyoのインタヴュー #244としてローリー・ヴァホーミンに登場願ったところ、お礼としてビル・エヴァンス直筆のミュージック・シート<Laurie>をカードに仕立てたものを郵送していただいた。ローリー・ヴァホーミンは、よく知られているように、ビル・エヴァンスの最晩年18ヶ月を共に過ごし、最後を看取った愛人である。ローリーについては、DU Booksから訳本が出た『ビル・エヴァンスと過ごした最期の18か月』を通して知った(訳本では、ヴァホーマンと記されているが、本人の弁によるとヴァホーミンがより近いようだ)。ローリーの著書は、原題に「The Big Love:Life and Death with Bill Evans」とある通り、ビルから受けたこの上もない愛と、ビルに対する彼女のこの上もない愛に貫かれている。もちろん、彼女は愛人という立場であったから世俗的な生臭いエピソードも出てくるが不思議と彼女に対する不信感を催すことはなかった。その後、マーク・マイヤースのJazzWaxで彼女のインタヴューを見つけ、マークの了解を得てオリジナル通り5回に分けてJazz Tokyoに訳出掲載した。その際、loverを「愛人」とすべきか訳本のように「恋人」と訳すべきか迷ったので編集部にはかったところ、僕の思い通り「愛人」が妥当という結論を得た。何回目かの掲載後、FacebookのMessengerを通じてローリー本人から掲載のお礼とインタヴューに応じる用意があることを告げられた。僕としては、著書があり、インタヴューで語り、ドキュメンタリー「Time Remembered」にも登場しているので、これ以上ビルについて話すことも、聞くこともないだろうと思ったが、折角の機会なので、彼女自身のプライヴェートなことも含めてかなり突っ込んだ質問を投げかけてみた。彼女の真意は、ビルの音楽が何度も聴かれ演奏され続けているように、自分もビルの人間性と真実について語り続ける必要を感じている、というものだった。
そのお返しにと郵送されてきたのがビルが彼女に捧げた楽曲<Laurie>の直筆シートのコピーをカード仕立てにしたものだった。「For Laurie who inspired this song with love~~Billと記され、5/31/79 2:30 AMと日付が入っている。彼女によれば、ビルは深夜に作曲し、創作活動はいつも明け方5時頃まで続けられたそうだ。<Laurie>はビルのオリジナルの中でも愛奏される機会の多いバラードだが、彼女自身はビルの演奏の中ではパリのライヴが演奏、録音とも、もっとも好きなヴァージョンとのこと。
Resonance Records(King International) から最近リリースされた1979年ブエノスアイレスでの最後のトリオによるライヴ・アルバムにも冒頭2曲目に<Laurie>が演奏されている。
ちなみに、ローリーはFacebookを通じてビル・エヴァンスのレガシーを伝える活動も続けている;
www.billevanslegacy.com