#07 『RGG / Mysterious Monuments on the Moon』

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text by Ring Okazaki 岡崎凛

レーベル:Music Corner, 2021年9月リリース

RGG:
Łukasz Ojdana – piano ウカシュ・オイダナ
Maciej Garbowski – double bass マチェイ・ガルボフスキ
Krzysztof Gradziuk – drums クシシュトフ・グラジュク

Tracklist:
1. Monument I (1:57)
2. Monument II (5:01)
3. Planet LEM (4:40)
4. Moonray (6:09)
5. Sixfold (0:52)
6. Monument III (3:26)
7. Monument IV (4:17)
8. Vexations (2:01)
9. Son Of A Prince (2:42)
10. Monument V (3:58)
11. Monument VI (3:45)
12. Monument VII (4:51)
13. Urantia (2:54)
14. Reversed (1:52)
15. Monument VIII (3:09)

Planet LEM, Son of a Prince, Urantia are compositions by Lukasz Ojdana
Vexations is composition by Erik Satie
Moonray is composition by Artie Shaw
Monuments and Sixfold are improvisation inspired by Universe, Moon and Space.

Recorded September 14-15, 2020 at Studio Tokarnia in Nieporęt
Mixing & Mastering: Jan Smoczyński/Takarnia Music Production
Album cover_Photography_DTP:Gosia Frączek
Produced by RGG

 


本作は、結成20周年を迎えたポーランドのピアノトリオRGGが、母国のSF作家スタニスワフ・レムに敬意を込めて、宇宙や月をテーマにしたミステリアスな世界にアプローチしようとしたアルバムである。
2021年はスタニスワフ・レムの生誕100年に当たり、これを記念した関連イベントにRGGトリオも出演した。詳しいプログラムを確認していないが、本作の収録曲がこうしたイベントで演奏されたようだ。

3曲目、〈Planet LEM〉では、ピアノのミステリアスな旋律とともに、鋭い金属音が飛び交うようなパーカッションが鳴り、アルコベースの唸りが重なる。SF作家スタニスワフ・レムの名の入ったこの曲には、アルバムのプロモーション用動画と、ポーランド語のナレーションの入った生演奏の動画があるので、最後に見て頂ければと思う。

即興曲 ‘Monument I~VIII’は、月面に存在するとされる謎のモニュメントに想を得ているのかもしれない。
ネットで調べると、月にあるとされる8個のモニュメントについての情報は、日本語では全く見つからない。だが、月面探査機ルナ・オービター2号をウィキペディアで調べると、最初に出てくる写真に、黒い杭のような物体が写っている。これに海外SFファンらしい人たちが着目し、この黒い物体は人工的に作られたのでは?という説が生まれたようだ。
あくまでも推測だが、RGGの誰かが、この黒く細長い物体の写真か、または他の想像図を見て、「月の上の謎のモニュメント」という本作のタイトルを考え、’Monument‘と題した即興曲のアイデアを得たのだと思う。
もちろんこれは確かめようがないのだが、本作のCDを買って中の小冊子を開き、そのデザインを見ると、そんな気になってしまうのである。

本作は前作の『Memento』に比べると、かなり先鋭的な作品であると思うので、聴きやすさという点で前作を好むRGGファンもいるかもしれない。だが、何事も徹底追求するRGGの姿勢を強く感じるのは今回のアルバムである。CDをすでに購入した人は、そのトータルデザインの素晴らしさ、完璧さに感銘を受けたと思う。全てにおいて、やり過ぎるぐらいにしっかり取り組むのがRGGの流儀だ。

6曲目の〈Moonray〉を調べると、まずは「ジャズ・クラリネット奏者として知られるアーティ・ショー(Artie Shaw)作の有名曲」という説明に出会う。これが元の曲なのだが、この曲はポーランドの映画「Night Train(1959)」でも使われている。そして、RGGがカバーしたのは、ピアニストAndrzej Trzaskowski (アンジェイ・トシャコフスキ)がアレンジした、この映画音楽バージョンだと指摘する意見が、本アルバムのポーランド語のレビューに載せられていた。つまり、カバー曲をさらにカバーしたのだという。
実際に聴いてみると、この意見に納得する。ポーランドの映画音楽の素晴らしさに触れる一曲だった:
https://www.youtube.com/watch?v=B2c0TMbwfDQ

先に書いたように、3曲目のPlanet LEMは、YouTube動画で紹介されている。この動画はSF映画全般へのオマージュが感じられるものであり、制作に関わった人物はたぶんタルコフスキーが好きなのだろう。RGGの3人(ウカシュ、マチェイ、クシシュトフ)が繰り返し登場する。


RGG – Mysterious Monuments on the Moon “Planet LEM”

もう一つの動画にはポーランドの俳優でロベルト・ヴィエツキェヴィッチ (Robert Więckiewicz)がナレーションをつけている。ポーランド語なので内容は分からないが、彼はレムの小説で映画化された「惑星ソラリス」のオーディオブックで朗読しているので、ここにはレムの小説の世界が描かれているのだと思う。RGGの緊張感に満ちた演奏シーンは見ごたえがある。


RGG feat. Robert Więckiewicz “PLANET LEM”

<参考資料・RGGのこれまでの歩み>
RGG Trioは2001年ポーランドで結成。
Members:
Przemysław Raminiak (piano, 2001-13), (旧ピアニスト)プシェムィスワフ・ラミニァク、2013年まで
Maciej Garbowski (bass), マチェイ・ガルボフスキ
Krzysztof Gradziuk (drums), クシシュトフ・グラジュク
Łukasz Ojdana (piano, 2013-present) (現ピアニスト)ウカシュ・オイダナ

RGGは、カトヴィツェのカロル・シマノフスキ音楽アカデミーに学んだ3人により、2001年に結成された。デビュー盤『Scandinavia』(2003)は北欧ジャズへの憧憬が色濃いアルバム。

その後も先鋭的作品のリリースが続いた:『Straight Story』、『Unfinished Story – Remembering Mieczysław Kosz』、『True Story – In Two Acts』(2枚組)の3作は、Story projectと呼ばれている。その後『One』を2011年にリリース。
2013年からピアニストが交替したが、前任のピアニスト、プシェムィスワフ・ラミニァクPrzemyslaw Raminiak(R)と他の2人の苗字の頭文字(GG)から取ったトリオ名はそのまま引き継いだ。
こうして若手のウカシュ・オイダナを迎え、マチェイ・ガルボフスキ、クシシュトフ・グラジュク(Lukasz Ojdana(p)、 Maciej Garbowski (b)、 Krzysztof Gradziuk (ds))とのトリオとなった。
2013年のアルバム『Szymanowski (シマノフスキ)』(通算6枚目)は、国内盤がチェシチ!レコーズからリリースされた。その後、2015年に『Aura』、2017年にエヴァン・パーカーとのライヴ盤などが出ている。
8枚目『Memento』をWARNER MUSIC POLANDレーベルの「Polish Jazz」シリーズからリリース。

これに続く本作『Mysterious Monuments on the Moon』はトリオの9作目になるはずだが、2017~18年頃にリリースされた共同リーダー作のライヴ盤3枚を含めると12作目になる。
(ポーランド名のカナ表記については、なるべく検索結果の多く出そうな表記にしています)

<本作を試聴できるサイトについて>
このアルバム全体を試聴できるメディアは現在見当たらないが、各曲を約60秒試聴できる通販サイトはこちら:
CDショップ、Serpent PL:https://wsm.serpent.pl/sklep/eng/albumik.php,alb_id,70207 

岡崎凛

岡崎凛 Ring Okazaki 2000年頃から自分のブログなどに音楽記事を書く。その後スロヴァキアの音楽ファンとの交流をきっかけに中欧ジャズやフォークへの関心を強め、2014年にDU BOOKS「中央ヨーロッパ 現在進行形ミュージックシーン・ディスクガイド」でスロヴァキア、ハンガリー、チェコのアルバムを紹介。現在は関西の無料月刊ジャズ情報誌WAY OUT WESTで新譜を紹介中(月に2枚程度)。ピアノトリオ、フリージャズ、ブルースその他、あらゆる良盤に出会うのが楽しみです。

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